第37話 変化

 お昼休みになり英美里と一緒に音声を確認していると、シュリさんと亘さんがやってくる。

「さ。お昼にしましょう?」

「ええ。そうね」

 シュリさんと英美里、いつの間にかかなり仲良くなっているな。

 いいことだけどね。

「邦彦は菓子パンか?」

「うん。来るときにコンビニ寄って」

「そう言えば邦彦くんって、一人暮らしなんだよね?」

「そうだよ。離島に両親がいて、離島には高校がないから」

「へー。離島か……」

 何かを思案する亘さん。

「亘、何考えているのよ?」

 シュリさんがそう訊ねると、亘さんはニヘラと笑みを浮かべる。

「いや、みんなで遊びにいかね? 今度の夏休みを利用して」

「そのまえにテストがあるわね。亘、大丈夫?」

「うぐっ」

「それなら、勉強会しません?」

 英美里が微笑みながら、両手を合わせる。

「それいいわね。みんなで勉強会しましょう?」

「俺は構わないぞ」

「まあ、うん……。僕も、かな」

 躊躇いつつ答える。

 だって、亘さんとワンツーマンでやりたかったから。

 まさか今から提案することもできないし。

「やった! じゃあ、動画も撮りましょう♪」

「英美里、それが狙いだったんじゃないよね?」

「えー。わたしだってそれでは言わないって!」

 英美里は笑みを浮かべながら手招きをする。

 僕は菓子パンに齧り付く。

 ああ。あのおばあちゃんの料理が食べたい。

「しかしまあ、邦彦も言うようになったな」

 亘さんが嬉しそうにして、弁当の筑前煮に箸を伸ばす。

「そうね。私が最初にあった頃はもっとナヨナヨしていた気がするわ」

 うんうんと頷くシュリさん。

「まあ、うん」

 その要因が亘さんだなんて言えないよね。

 この胸の高鳴りは誰にも否定させないけど。

「そういう英美里だって」

「うん。そう?」

「なんだか雰囲気が変わったなーって思って」

 僕は困ったように頬を掻きながら言う。

「ふふ。そういう意味では私は変わっていないわね」

「ああ。シュリはそう簡単に変わらないだろうな」

 亘さんは肩をすくめ、シュリさんを一瞥する。

「そういう亘さんもなかなか変わらないですよね」

「あー。そう見える?」

 亘さんは苦笑する。

「私から見たら、前よりも明るくなったけどね」

 シュリはそう言いながら水筒を飲む。

「なんか、いいなー」

「「え?」」

 亘さんとシュリさんが驚く。

 わかり合っているみたいで、羨ましい。

 僕は亘さんの変化も、気持ちも知らない。


 みんなで一緒にいるのに、この寂寥感せきりょうかんはなんだろう。

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