第22話 帰宅
朝日がまぶしいよ。
僕は一人で朝からパンツを洗っている。
まあ、亘さんのじゃないだけマシか。
乾燥機にパンツを放り込む。
おばあちゃんに許可とったからいいよね?
「なんだ。ここにいたのか」
「亘先輩」
「そろそろ朝食だって。ばあちゃん気合いいれちゃって……」
渋面を浮かべている亘さん。
「ええと。食べますので」
食卓に向かうと、そのすごさが分かった。
白米に焼き鮭、味噌汁、漬物、グリーンサラダ、それにマーボー豆腐、唐揚げ、トンカツ、みかん。
量も多いけど、種類も多い。
これ全部食べられるかな……。
「ごちそうさまでした」
うぷっとこみ上げてくる吐き気。
いや食べ過ぎた。
「少し休んでいくか?」
「はい。そうします」
食べ過ぎてぐったりしていると、亘さんが気を利かせてくれる。
ちなみに今日は創立記念日で休みだ。
でもあまりお世話になるわけにはいかない。
一時間もすれば、お腹も落ち着いてきた。
「そろそろ帰ります。お世話になりました」
「あら。今日も泊まっていいのよ?」
「ばあちゃん。邦彦のこと、困らせるな」
おばあちゃんはケラケラと笑う。
「あんた、友達だけじゃなくて、下の名前呼びかい?」
「あー。ええっと……」
亘さんが困っている。
何か言わないと。
「僕たち、親友ですから!」
親友ですから!
じゃないよ!
どうしてあんなこと言っちゃったのさ!
僕は後悔しつつ、帰り道をトボトボと歩いていた。
「親友なのかな……」
亘さんの気持ちが分からずに一人悶々とする。
まあ、驚いた顔はしていた。
この時点で怪しんだよな。
そしてそのあとのとってつけたような「親友だから」の言葉。
くーっ。僕はその程度かー。
悲しくて涙でてきた。
「お兄ちゃん。大丈夫?」
「しっ。見てはいけま……あら、可愛い。食べちゃおうかしら」
それはやめてくれ。
僕だってプライドもあれば、心に決めた人もいる。
いやでも……。
相手の気持ちも分からないし……。
「くお~」
「やっぱり見ちゃいけません。可愛すぎるもの……」
なんだ。
あの親子。
僕はショート寸前の頭を必死に働かせる。
でも答えは見つからなかった。
自宅に戻り、ふと
『お帰り、邦彦』
『ただいま。今日の夕食は?』
『カレーだよ』
『最高!』
「って、何が最高なんじゃい!」
僕は怒りをぶつけるように拳を壁にぶつける。
痛い。
そりゃそうだ。
木よりも人間の皮膚の方が柔らかいのは至極当然のこと。
自然の摂理には勝てない。
あーあー。けっきょく何も変わらないのかな……。
「僕、親友じゃなくて……」
恋人とという単語が浮かび、かあっと顔が熱くなる。
冷やすために冷蔵庫のミネラルウォーターを飲む。
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