第18話 ゲーム実況 その四

「なるほど。これは面白い!」

「旅人くん、火がつくの遅すぎ!」

 笑いながら英美里がサポートに回る。

 もともと英美里の角笛つのぶえはサポートタイプである。

 ボエーっと間の抜けた音がなると、仲間へバフがかかる。

「今!」

 僕の双剣が光る。

 獣のHPたいりょくバーが削れていく。

「おお。いけるんじゃね?」

 亘さんが素敵ボイスではしゃぐ。

 可愛い。

「待って。下がって」

「おう」

「はーい」

 シュリも先ほどの戦いを見ていたせいか素直に応じる。

 獣は回転して、衝撃波を生み出す。

 コンマ数秒ほど、止まる瞬間がある。

「攻撃開始!!」

 僕の声を合図に全員で攻撃を始める。

 亘さんの大なたによる攻撃。

 シュリさんの毒矢。

 英美里の角笛から発射される弾丸。

 そして僕の双剣が獣を切り裂く。

「よっしゃ!! 倒せたぜ!」

「はしゃぎすぎ」

 亘さんにシュリが冷静な声をかける。

「だってよ。あの旅人くんがこんなにも成長したんだぜ?」

 その言葉にかーっと顔が熱くなる。

 僕のこと、ちゃんと見てくれたんだ。

「そうね。今回は完全に旅人のお陰ね」

 クスッと笑みを漏らす英美里。

 なんだか気恥ずかしいじゃないか。

「そう。私は認めていないけどね。こんなゲームごとき」

「そうは言うが将来有望だぜ?」

 シュリさんと亘さんがなんだかこそこそ話をしているけど、なんの話だろう?

「いやー。良かった。視聴者数も十万超えたよ~」

 英美里がホクホク顔で喜ぶ。

「え。十万もいったの?」

 僕はそれを聞いてびっくりする。

 十万もいけばかなり有名な動画配信者と言えるだろう。

「いや~。広告費もウハウハですわ~」

「英・美・里ちゃん?」

 ごごごという言葉が浮かんできそうな様子で英美里に迫るシュリさん。

 かなり怖い。

 炎が見えた気がした。

「ええっと。はい。焼肉おごります」

 英美里はタジタジになり、妥協案を出していく。

「うん。それでいいわ。今すぐ行きましょう?」

「あー。でも収益化はもらえる時期が……」

「シュリ。急ぎすぎだ。落ち着け」

「分かったわよ。もう……」

 困ったように眉根を寄せるシュリさん。

「じゃあ、また今度集まろうか」

 亘さんはなんだか嬉しそうに微笑む。

 そんなにゲームするの、楽しかったのかな。

 まあ、初心者の僕も楽しめたし。

 また来てもいいか。

「そうですね。焼肉行きましょう」

 コクコクと頷く英美里。

「そ、それから、また集まってゲーム実況しませんか?」

 英美里が提案してくれる。

「そしたら、焼肉二回目ですよ!」

「あー。まあ……」

 亘さんは苦笑しながら、答える。

「いいよ。またしよう」

 シュリさんが鷹揚に頷く。

 僕の意見は?

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