第15話 ゲーム実況 その一

 僕たちは英美里えみりの家に向かって歩き出した。

「英美里がゲーム実況しているとはね……」

「僕も驚きです」

「それにしても私まで来るなんて」

 ほとほと疲れたように呟くシュリ。

「さ。上がってください!」

 英美里がキラキッラの笑顔で出迎えてくれる。

 これはいよいよ断れなくなったな。

 一時間ごとに表情が明るくなっていったものな。

 それが美男美女に囲まれてゲーム実況をするというものでも嬉しいのだろう。

 いやだからこそ、嬉しいのかもしれないが。

 彼女の趣味をとやかく言うつもりはない。

 ないが……巻き込まれた身としては何も思わないわけじゃない。

 とはいえ、まったく興味がないかと言えば嘘になる。

 僕もいじめられていた頃にちょっとは見たことがある。ゲームの解説をしつつ、談義で回す――けっこう難しいスキルが必要だけど、僕たちは四人いる。

 四人もいれば誰かが声をあげるだろう。

 ホッとした気持ちで僕たちは英美里の部屋を訪れる。

「おー!」

 感心半分興味半分。

 部屋の中はゲーミングチェアやゲーミングパソコンを始めとし、近未来的な黒とメタリックブルーで彩られたSF空間だった。

 彼女が指でパチンっとならすと、電気がつき、エアコンが作動する。

 それに呼応するようにパソコンがうなりを上げ、四つあるモニターに光が灯る。

 どんなマジックだ。

 驚いていると、場違いな古びた丸机がどんと置いてある。

 その端に腰をかける英美里。

「それじゃ、最初にニックネームをつけようか? あっ。ゲーム内での愛称ね」

 おお。これは蚊上さんと仲良くできるチャンスでは?

 下の名前で呼び合うとか……きゃー、僕ってばだ・い・た・ん!

「あー。ちなみに身バレするのがいやだろうから、自分の名前とかなしね」

 ……僕帰っていいかな?

「ちな、必要な設定とかある?」

「設定?」

 僕は分からないといった様子で返す。

沢田さわだ。簡単に言えば、実況中に自分の仮面をかぶるということだ。そっちの方が話しやすいやつも多い」

「え。蚊上先輩もですか!?」

「いや、俺は素でいく」

「はいはーい。私は女騎士ねっ!」

「ほう。シュリ先輩は女騎士ですね。くっころとか大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫! もちのろん!」

 なんか、やりとりが古くさいんだが。

 若干引いていると、僕を見つめる三人の顔。

「じゃあ、沢田くんは?」

「ええと。じゃあ、しがない旅人で」

「面白いポジションだね。採用!」

 採用された!

 しがないって意味も分からないのにっ!

 まあどうせすぐ飽きるし、いいか。

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