第4話 女子嫌いな僕

 入学式の翌日。

 僕は学校に向かう途中で蚊上さんを見つける。

 話しかけようか迷っていると、あっという間に女子に取り囲まれている。

 迷惑そうに塩対応を見せる蚊上さん。

 やっぱり氷の王子様だ。

「格好いい。さすが氷の王子様!」

 そっけない態度をしているのに、なぜかさらに人気になっている。

「あれ。こっちの子、可愛くない?」

 女子の標的がこちらに向く。

 と、蚊上さんは小さく笑む。

 女子の軍勢がこちらに向かってドドドと押し寄せてくる。

 青ざめた僕は足早に走り出す。

「待って! 光のプリンス様!」

 光のプリンス? 誰のこと?

 僕がキョロキョロしていると、スレンダーな女子がこちらを見る。

「あなたのことです! 光のプリンス様!」

 ぎょっとして僕はカチカチに固まる。

「わたし、英美里えみりと言います。仲良くしてください!」

「ご、ごめんなさい。僕は心に決めた人がいるので」

 そう口走ってから気がつく。

 それって誰のことだろう? って。

「ふーん?」

 ジロジロと見てくる英美里さん。

 僕は慌てて走り出す。

「ごめんなさい」

 校門をくぐり抜け、自分のクラスを掲示板で確認する。

 そしてクラスへと向かうと、英美里さんが隣の席で手を振っている。

 うーん。なんという偶然。

 僕はため息を吐き、隣の席に座る。

「なんでキミがいるのさ」

「いやー。すごい偶然だよねっ! まるで奇跡みたい」

「そう」

 苦笑いを浮かべて僕は黒板に視線を向ける。

 教師が話している最中に、英美里さんが話しかけてきた。

 それ以外にも、女子からの熱い視線を感じたけど、どうにかやり過ごすことができた。

 お昼休みになり、先輩のいるクラスを探す。

「蚊上さん、いらっしゃいますか?」

 二年の教室に行き、僕は先輩に尋ねる。

「いないよ。彼、いつも単独行動だから。……それよりも、きみ可愛いね。わたしの相手してくれない?」

「えっ。いや、僕は暇ではないので」

「いつでも相手してあげるからねー!」

 色気ムンムンのお姉さんがそう言い、その後も笑い声が聞こえてくる。

 下品な人たちだ。

 僕は呆れて嘆息を吐く。

 お昼持ってきたけど、蚊上さんいないんだね。

 しかたなく近くのベンチに腰をかけて買ってきたサンドイッチを頬張る。

「きゃ、みてよ。あの子かわいい」

「佐藤、話しかけてよ」

「え。無理無理。敷居高いって」

「佐藤なら可愛いからいけるよ!」

 僕は食べ終えていないサンドイッチをビニール袋に押し込み、立ち上がる。

 わざわざ女子のいる方に足を向ける。

「佐藤さん。君たちに興味ないよ」

 それだけを告げると、僕は教室に戻ることにした。

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