第25話 流通革命が起きるかも!
商業ギルドに行ったらお父さんとミノルおじさん、モジャおじさん、ギルドマスターさんが集まって何やら話をしてる。
「……ほう、荷物を持ち上げて積む事が出来る重機ですか……それは有能」
「……体力が100超え?どこの英雄なんだ?」
「……嬢ちゃんに槍を向けた?おい、経済制裁の準備をしろ」
「……私も昔は冒険者として鳴らしてたんだけどなぁ。体力値が娘の半分て……」
……なに話してるんだろう?
「こんにちはみなさん!」
いちおうご挨拶しとこう。
私の挨拶の声が大きかったからかおじさんズが飛び上がるようにビクッとしたわ。
はわわ!たくさんの大人がビクッとするの初めて見た!
「ご、ごめんなさい驚かせてしまったわ。声が大き過ぎたかな?」
「い、いやそんな事ないよエリーゼ、おかえり」
お父さんが胸を押さえながら笑顔を見せてるけど、なんだかぎこちない。
「よう嬢ちゃん、早かったな。学校は?」
「今日は進級テストだったんです。私ステータスが伸び過ぎてしまったんでテストが簡単に終わってしまったの。終わった人から帰っていいからすぐにここに来たわ」
私は先生とのやり取りや昨日確認したステータスのことをおじさん達に話したわ。あ、もちろんイジメについては話さないわよ。たいした話じゃないからね。
些細なこと、ってやつよ。
「と言う事はエリーゼ嬢のステータス値は全て100を超えたのか。うーん、これは只の商人にしてしまうのは惜しい」
ギルドマスターさんがうーんと唸ってお髭を撫でてる。
「でも私はお父さんとお母さんのお手伝いをしたいんです」
「そう言う所は嬢ちゃんの良い所だな。だけど、能力があるのにそれを使わずまとまってしまうのは勿体ないって思うぞ」
モジャおじさんは私の頭を撫でながら呟くように言ったわ。
「だから今日集まって貰ったんです。エリーゼの能力をうちの店に縛り付けるのは勿体ない。さっきミノルさんとも話しましたが、重機を使ってこの街の物流管理をやれば私の店の様に商品の供給が滞って街の人に迷惑を掛けなくて済むんです」
「ついでに言えば嬢ちゃんに戦闘方法を与えればひとりだって危なくなく都市を回れるぞ。まあひとりは寂しいし、女の子の一人旅ってのも気になるからまゆげにもう1人買い付け担当で誰かを乗せれば良いんじゃねえか?」
お父さんとミノルおじさんが私の働き方を提案した。
そうだなぁ、私としても街の外に出た方がワーキングポイントの溜まりがいいし、いろんな街を見てまわることで様々な知識が身に付くと思うわ。
多分学校で学ぶより多くのことが学べると思う。経済や文化や政治なんかがね。
「あのねお父さん、私もう学校に行く必要を感じてないんです。学校は基礎中の基礎しか教えてないわ。私にはフィールドワークが必要だと思います」
「ああ、その様だ。だがお前は女の子だし未成年だからね、お父さんとしてはひとりで街の外には出させるつもりはない。だからギルドマスターに良い人材を提供して欲しいんだよ」
目線を私からギルドマスターに移したお父さんはそう言って交渉を始めちゃった。
どうやらお父さんとミノルおじさんは商業ギルドから私に人材を派遣させたいらしいわ。
なるほど、ギルドから推薦された人を私が連れて行けば買い付けや売却で足元を見られる事はないし、ギルドから派遣された人なら私に危害を与える事もないってことか。
うふふ、お父さんは私の心配もしてるのね。ありがとうお父さん。
「うーん、私としても商業ギルド職員を付けたい所だが、職員は商人ではないからな、あくまで商売をする為のルールに詳しい事務屋でしかない。それに職員では身を守る術がない。後、ギルドに直接的な利益がないなら流石にエリーゼ嬢に専属を付ける訳にもいかない。職権濫用になってしまう」
「そうか…難しいな」
私がもっと商業ギルドに貢献したら専属が付くのか。
まだ商売のことは分からないから私では商品の売買が出来ない。もしかしたら損ばっかりさせられるかもしれない。
今の段階で私が出来るのはまゆげちゃんで荷物を運ぶことだけだもんね。
そうだ!私が商業ギルドに貢献できたらいいんだよね。それなら私がギルドに商品を卸してそれをこの街の商人や工房が買い付けすればいいんじゃない?
飼料も木材もそうだったけど、たくさん売ったり買ったりしてあげた方が取引相手は楽に取引できるから安くしてくれた。
そして、大量に買った商品は私の重機で管理すればいいのよ!
「ギルドマスターさん、新しい重機『フォークリフト』を見てみませんか?それを見たらなにかいいアイデアが浮かぶかもしれませんよ?」
私はステータスを見てワーキングポイントを確認した。朝まゆげちゃんの収納から荷物を降ろしたから追加のポイントが入ったんで、現在390万ポイント貯まってるわ。
品数が多かったからたっぷり追加されたもんね。
えっと……2.5トンフォークリフトが280万ポイントで買えちゃう!
「おっ遂に新たな重機が!嬢ちゃん、俺にフォークリフトを見せて下さい!」
ヒットぉ!ミノルおじさんが釣れた!
「もう!ミノルおじさん『下さい攻撃』は止めて。なんでそこだけ丁寧な言葉になるんですか?」
「そ、そうだったな、すまねぇ」
必死過ぎよね。
「エリーゼ良いのか?がんばって貯めたんだろう?他の重機が欲しかったんじゃないのか?」
「はい、がんばって貯めました!それでみんなが幸せになってくれるなら私はもっとがんばれます。それに私の重機達ががんばればもっと多くのワーキングポイントが入ってくると思うの。だから問題ないわ!」
損して得取れ、とか、急がば回れ、って言葉の通りだわ。
「ギルドが商品を他の街で大量に買い付けて私がまゆげちゃんで大量に運ぶんです。それを別の人がフォークリフトで管理するの。そしてギルドはこの街の商店や工房に小売りでちょっぴり利益を乗せて卸すんです。街の商店はわざわざ高い運賃を払って危険な買い付けに行かなくても済むわ」
マリアちゃんのお家が御者を廃業してしまったからマールの街の流通に問題が生じてるし、街を出て買い付けするため雇う冒険者だって少ないからね。
うちのお店はそれが理由で商品がなくなったんだもん。
「おもしれぇな、大量輸送の大量流通、正に商業革命だな。だがよ、それは価格低下を引き起こしていずれ大量消費大量廃棄って問題を抱え込むぞ。それはどうするつもりだ?」
ミノルおじさんが私の話に待ったをかける。
確かにたくさんの物が手に入れば自然と商品が安くなってしまうわ。価格競争が起こって強いお店だけが生き残り、小さなお店が潰れてしまう。それに安くなった商品はぞんざいに扱われて捨てちゃう人も出ちゃうかもしれない。
大事にするより買った方が早い、ってね。
でもね、それじゃ何のための商業ギルドなの?
「おじさん、儲けるためにやるんじゃなくてみんなが幸せになるためにやるんです。商業ギルドがきちんと適正な価格を設定しておけば問題ないわ。本来商業ギルドはそういう機能をする所のはずです。税金や権利を扱う機関ではないわ」
「なるほど、自由競争じゃなく共生利潤でシナジーを生むか。確かにここの社会性じゃその方が向いてるな。守銭奴の商業ギルドじゃ思いつかねぇ考えだ」
ミノルおじさんはニヤニヤしやがらギルドマスターを見てる。
「ううむ、耳が痛いな、私も目が覚める思いだよ。確かに商業ギルドとは経済や流通という物が円滑に行われ、商売を行う人の生活向上が目的だ。今や税金や利権を扱う行政機関の様になってしまっているがな」
ギルドマスターさんが眉間に指を当ててポリポリと掻いたわ。
「嬢ちゃん凄いぜ、いつそんな事を覚えたんだ?学校じゃ教えてくれないだろうしな。俺には嬢ちゃんが言ってる事が半分位しか理解出来てないぞ?いやー凄い凄い!」
「はっはっは!そりゃ嬢ちゃんのステータスの知力値が高いから状況から計算して判断出来るてるんだろうな。修学率や識字率が高い社会は発展するっていう良い見本だ。学校教育と社会規範に商業ギルドから梃子を入れたら10年後にマールは市に格上げされるぞ」
そう言ったモジャおじさんとミノルおじさんはガハハと笑いながら肩を組んで浮かれてる。
「うちのエリーゼが私の手の届かない所へ行こうとしてる……」
「お父さん、心配しなくても私はいつまでもお父さんの娘だよ」
お父さんはなぜがガックリしてるから宥めてあげた。
「おほん、面白そうな話ではあるが『フォークリフト』とやらの性能と利便性が分からなければ話が進まないな。エリーゼ嬢、『フォークリフト』を見せてくれないか?決めるのはその後だ」
ギルドマスターさんは毅然とした表情で私にそう言ったわ。
でも私ギルドマスターさんのお髭に隠れた口元が緩く上がってるのを見逃さなかったわ。
そっか、おじさん達はフォークリフトが見たいのね。了解しました!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます