第24話 学校にて

 次の日、朝から学校に行きました。


「あっ、エリーゼが来たぞ!」


「昨日は家の用事で休んでたらしいな。無能スキルなんだからずっと来なくていいのに!」


「俺は『斧使い』スキルだったから木こりか冒険者になるしかないんだけど、アイツよりましだな」


「私は『給仕』よ。まああまり良いスキルじゃないけど……あの子よりは良いんじゃないかな?」


「だって『重機』だったっけ?へっ!なんだそれ?訳わかんないぜ!」


「ぼくは『農民』だった。やっぱりやる事が分かってる方がいいスキルだよな!」


 聞こえてる。


 実は私、学校でちょっとしたいじめに遭ってるのよね。


 でもまあ毎日そんな感じだから慣れちゃったけど。鑑定会の前まではそんなことなかったんだけどなぁ。


 私の『重機』は誰も理解出来なかったスキルだから、みんなが気味悪がって距離を取り始めたの。それに私精神力の特訓をしてた間はかなりストイックな生活をしてたからあまりみんなと交流してないのよね。


 10歳のクラスメイトは13人いたんだけど、その内数名は鑑定会のあと仕事先の都合で学校を辞めちゃった。


 マリアちゃんは王都に行ったしジーク君は自分の雇用主のライなんとかさんが通ってる軍隊に入るための学校へ編入されたわ。他にもそのスキルを買われてお仕事始めちゃった人やさっさと冒険者になった人もいたわね。


 という訳でクラスメイトの数は今は私を入れて8名。


 みんなは自分達が置いていかれてしまったとでも思ってしまったのか、私を蔑むことでなんとか平静を保ってるみたい。


 とはいえ直接暴力とかの被害はないわよ。陰口よ陰口。


 ずっと言われてる。言われ過ぎてもう慣れちゃった。


 まあ実際は『重機』ってすごいスキルだからみんながいくら陰口を叩いてもそれがくだらな過ぎてたいしてダメージがないのよ。


 気にしなければ逆に静かでいいくらい!




 廊下からコツコツと足音が聞こえてきたわ。


「あっ先生が来たぞ!」


「「「おはようございまーーす!」」」


「はいおはようございます、皆さん揃ってますね……おや?エリーゼさんは今日はお休みしなくていいんですか?」


 先生がやって来て朝礼が始まるんだけど、この先生もわりと曲者なのよね。


 クラスのみんなが私を蔑んで一致団結してるのをいいことにそれを助長して私以外の人が仲良くなれば問題が起こらないって考えてるみたい。


「まあ貴女は無意味なスキルを持ってますから勉強しても意味があるかどうか……ああ家業をお継ぎになるからいいんでしたね、これは失礼」


 ほらこの調子。


 とはいえきちんと授業はやってくれてるから全く問題ないわ。


 私が大人しくしてれば済むことだから。


「さあ皆さん、今日は昨日伝えた様にテストですよ。進級にも関わる大事なテストですから頑張って下さいね!」


 えっ?進級に関わるテスト?それ初めて聞いたわ。


 私はパッと頭を上げて先生の方を見た。先生は私を見てニヨニヨしてた。


 いったいなんのつもりで……あ、分かったわ!私を落第させてもう1回最初から授業を受けさせて、落第した私を利用してクラスメイトの団結をはかるつもりね。


 そっか……ま、私友達いないしどっちでもいいけどね。それよりも今はフォークリフトの運用の方が大事なんだもの。


 商業ギルドと衛兵さんの倉庫、出来れば冒険者ギルドの倉庫でも使って欲しい。ということはフォークリフトが3台は必要になるからもっと荷物を運んでワーキングポイントをゲットする必要があるわ。



「はいテスト用紙はまだ表にしないで下さいよ。沢山ありますから時間が掛かります、終わった人から帰っていいですからね」


「いえーい!」


「でもテストの問題いっぱいあり過ぎの気がするぞ!」


「げーー!!」



 でもあんな買い付け仕事が毎日あるわけないし、どうしよう。


 とりあえず街中で荷物を運ぶ仕事を受けるしかないわ。または別の街に運ぶ仕事でもいいな。


 そうだ!商業ギルドにそんな依頼がないなら冒険者ギルドの登録をしてもいいかも知れないわ!



「はい、始めて下さい!」


「うわっ!なにこの問題!」


「難しいわ……」



 冒険者ギルド証を貰うには何をしたらいいのかな?やっぱ戦うのかな?


 そういえば私ステータスバカみたいに上がったから今なら戦っても勝てるかも知れないわ!


 あのおっきな冒険者のおじさんに聞いたらやり方分かるかな?おじさんどこにいるんだろう。


 うーこんな所で座ってる場合じゃないわ!なにこの簡単な問題、もう全部終わっちゃったわよ!



「もし終わった人がいたら手を挙げて下さい。ちゃんと最後まで出来てるか確認しますよ。まあ難しいとは思いますけど時間はたっぷりありますからね」



 今日は商業ギルドと衛兵詰所と冒険者ギルド行ってからミノルおじさんに相談事をするから!


 もう!時間が勿体ないから!!


 私は手を挙げて先生を呼んだわ。


 今私がやる事はここで座ってるだけの無意味な時間じゃない。もっと実際働いてみて本当に分からないことを見つけたらしっかり勉強しなきゃ。


 ここの授業は大事かも知れないけど、この程度は簡単過ぎるわ。


 だって、『5メートル20センチ真っ直ぐ進んでから右に4メートル50センチ進みました。合計で何メートル何センチ歩いたでしょう?』ですって?そんなもん9メートル70センチでしょうよ。


 5メートル20センチを7秒で、そこから右4メートル50センチを6秒で進みました。今の平均時速は何キロでしょう?ならまだ分かるけど……あれ?


 なんで私こんな問題解けちゃうの?



「エリーゼさん?貴女何の冗談かしら?貴女の様な無能スキル持ちがこんな数秒で私の作ったテストを解けるはずがありません!」


「えっ?でも解けましたよ?スキルは関係ないし。答えを導き出すよりも答えを書く方が時間が掛かっちゃう」


 先生は私を見てプルプルしてる。なんだか怒ってるわね。


「かっカンニングしたんじゃないですか!?」


「えええ……一番最初に終わらせることの出来るカンニングって何?」


「そっそれに全部間違えてるって事も……全部合ってる、何故?」


 なぜっていわれてもなぜか分かっちゃうんだもん……あ、もしかしたら……


「先生、知力ステータスは幾つですか?」


「私の知力は42です!どうです!?これでも故郷では才女と呼ばれて……」


「ああそれですね。実は私の知力ステータスって181なんです。それなら先生の考えた知力ステータス依存の問題は間違えようがないです」


 そう!私の方が先生よりも知力がはるかに高くなっちゃったんだ。その上どうやら最近は計算ばっかりやってるから算術に強くなってるようね。


 歴史や言語はお父さんお母さんからひと通り学んでるんで元々得意だったし、最近ミノルおじさんと話すようになったからか歴史や言語も強くなってきたみたい。



 これでも私商売人の娘ですから!



「えっと先生?お先に失礼しますね」


「あ、ああ、はいぃ。お気を付けて……」


 よーし、さっそく商業ギルドに行っていろいろ聞いてみよう!

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