第22話 帰り道
コーヒーを堪能し、しっかり購入してからグレース市を出ました。
門でまゆげちゃんをチェックしてもらってる最中に衛兵さんからいいだけ撫でられちゃった。
どうやらさっき私とお話した衛兵さんが飼料を売ってくれたおじさんとおばさんの息子さんのようね。
ごめんなさい衛兵さん、あなた箒で叩かれちゃうかも。
少し申し訳ないと思いながらまゆげちゃんのエンジンを掛けて出発したわ。
さっき貰った時計を見ると、14時ちょっと過ぎてた。まゆげちゃんの車内にも時計はあるけど、自分の腕に付けた時計で確認したらちょっとうれしくなっちゃった。
「お父さん、少しスピードを出します。カバルの街に早く行かないと農場のおじさんに迷惑を掛けちゃうわ」
「成程そうだな。だが余り無理はするなよ」
「はい」
まゆげちゃんのアクセルを軽く踏んで時速80キロくらいにした。少しだけ揺れが強まってシートに身体が押し付けられてるわ。
「こ、これは少しキツイな」
「お父さん、スピードを緩めた方がいい?」
「いや、無理ってわけじゃない。このままでいいよ」
良かった。それなら17時にはカバルの街に着けるわ。
私はハンドルをギュッと握りしめてアクセルを固定した。
プルルルルル、とまゆげちゃんがちょっと嬉しそうにエンジン音を響かせたわ。
カバルの街到着は16時42分、時速80キロなら順当な時間だわ。
休憩なしで2時間近く運転したからちょっと疲れちゃった。
街の門番さんはまゆげちゃんを見ると笑いながら近寄って来て『お帰り、早かったね』って言って通してくれたわ。
そのまま町外れの農場へ行き、飼料を降ろすためまゆげちゃんの荷台に飼料の入った袋を出してから倉庫へ入りました。
「なんだよ、本当に夕方までに帰ってきたのかい?それに凄い量だ!あんた達の荷車は優秀だな!」
「ありがとうおじさん!私のまゆげちゃんは凄く力持ちなんですよ!」
「凄いな。それに操縦してるのがまだ小さい女の子ってのがこれまた凄いぞ」
農場のおじさんは物珍しそうな顔でまゆげちゃんを触ってる。
「おじさん、また荷物を運んで欲しい時は是非声を掛けてくださいね。私、商業ギルドで移動店舗として登録してあるんです。毎日は無理だけど、空いてる時間だったらいつでも荷物を運ぶから!」
「お嬢ちゃんは良い子だな。分かった、困った時は商業ギルドに相談させて貰おうか」
おじさんはまゆげちゃんを触ってる反対の手で私の頭を撫でてくれました。
「さて、帰ろうか。今ならまだ明るいうちに家に着く。荷物を店に運び込まないといけないしね」
「はーい」
カバルの街からマールの街までは20キロメートル程度だからすぐ着くわ。
まゆげちゃんを走らせてカバルの門を越え、街道を走る。
「道がもうちょっと平らで広かったらまだ速く走れるのにな」
「充分速いよ。それにちょっと気になる事があるんだ。さっき自分のステータスを見てみたんだけど、何故か体力値が伸びてるんだ。ちょっとだけどね」
「えっ!?」
私はまゆげちゃんを道の端に停車して自分のステータスを確認してみた。
「あー、これはよく分からないわ。レベル上がっちゃってる!」
名前:エリーゼ
種族:人間
LV:16
生命力:214
精神力:332,152
体力:102
知力:181
敏捷:129
器用:104
気力:213
魔力:800
状態:正常
眷属:まゆげちゃん
技能: 重機LV2、魔力操作LV4、身体強化LV2、恐怖耐性LV2、探知LV2、交渉術LV1、地図LV2
受動技能:精神力回復力増加、精神力回復量増加、反応速度上昇、幸運、努力、根性
称号:努力人、投資家、救命士、おじさんキラー
4も上がってる!精神力ヤバ過ぎだわ!全体的にステータス値が上がってるけど、確かに体力値の上がり幅が大きい気がするわ。
スキルも増えてるし……称号に変なのが増えた!
「確かに体力値の伸びが大きいわ。もしかしたらまゆげちゃんのスピードに耐えてたから訓練したみたいになったのかも」
「ミノルさんの言っていたステータスを伸ばす訓練か!成程な」
どうやらお父さんとミノルおじさんはかなり秘密について話を進めているようね。異世界のことをどれくらい話したかは分かんないけど。
それよりもこの称号……なんだか胸を抉られたような気持ちになるんですけど!
「称号『おじさんキラー』って酷いわ!?」
「なにっ?おじさんキラーだって!?そんな称号があるのか!これは帰って皆さんに相談しなくては……」
お父さんが何か不穏な言葉を呟いてる。
「相談?誰に?」
「あっいや!何でもないぞ!そ、そうだエリーゼ、レベル幾つになったんだ?」
「16です」
「もう私とひとつしか違わないじゃないか…体力値は幾つになった?」
「102」
「なにぃ!?私の倍以上!?何故そんな事になってるんだ!!」
え!?お父さんの倍!?
「ちょっとお父さん、外に出て比べてみましょう!」
私は外に出てまゆげちゃんの収納から酒樽を出して並べてみた。
酒樽を2個積み上げて持ち上げる。うん、これくらいなら全然持てちゃう。
それを見たお父さんの口がぽかーんと開いたわ。
「そ、それは私には無理だ。て言うかそんなに持てる奴なんてそうそう居ないぞ!さっきの市場の腕自慢か木こりの連中クラスじゃないか!」
マジですか!?脳筋は嫌!
「これは帰ってから商業ギルドと冒険者ギルドに相談してみよう。アイテムボックスの事も相談しよう。」
「は、はい。ぜひ相談させてください」
私、普通の女の子だったはずなのに!なんで!?
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