第11話 ワーキングポイント

 プルルルと軽快にまゆげちゃんは走ってる。私もごきげんよ。


 ミノルおじさんの工房まではお家から走って10分くらいしかないわ。まゆげちゃんなら3分くらいで着いちゃう。


「ただいま戻りました!おじさん、お酒を運んで下さい」


「おうお帰り。うんうん、ちゃんと荷台に載せてるな。それじゃこれを受け取って、と。よし嬢ちゃん、ステータス見てみな」


 私はステータスを拡げてwpを確認してみる。


「あっ!増えてる!3300ポイントになってます!」


「うん、まゆげのトリップメーターは3.2キロだな。嬢ちゃん計算してみろよ。3300ポイントから最初の1700ポイントを引いたら幾らだ?」


 私は指を折って数えてみる。


「えーっと、3300から300を避けて、3000から1700を引いたら1300、避けた300を足したら1600……1600で合ってる?」


「教科書通りの計算方法を久しぶりに聞いたな。ああ、合ってる。そしてここから嬢ちゃんの家まで行って帰ったら3200メートルだ。酒樽は片道しか積んで走ってないから運んだ距離は1600メートルだ。もう分かったろ?」


 えーっと、お酒を運んだ距離が1600メートル?だったかな、そして今手に入れたポイントが1600ポイントだから…


「あっ!1メートル荷物を運んだら1ポイントだ!」


「そうだ、と言う事はそのwpの名前も分かったな。それは働いた量を表すポイント、ワーキングポイントだ」


 そっか!まゆげちゃんは荷物が運べる車輌だから荷物を運ぶことは働いたことになるんだ!だからワーキングポイントが運んだ距離に合わせて増えたのね。


「嬢ちゃん、もう1回家に帰ってみてくれ。帰る時はまゆげで帰って良いが来る時はまゆげを送還して歩いて来るんだ。荷物を積んだままな」


「分かった!まゆげちゃんをしまったまま荷物を移動させれるかどうかを調べるのね。」


「それだけじゃねえ、もし荷物を積んだまままゆげを送還出来るなら送還したまま移動してもワーキングポイントが手に入れれるのかどうかが分かる。もしいけるんなら、まゆげ以外のトラックに荷物を積みながら幾らでも運搬が出来るしポイントも入ればなおラッキーだぞ!」


 そっか、おじさんはもう次の車輌を手に入れた時のことを考えてるんだ。流石ミノルおじさんね!


「分かった、行ってきます……あ、そうだ!」


 私は大事なことを思い出したわ。


「お父さんがね、ミノルおじさんと1度会いたいって言ってたわ。私がお父さんの知らない大人の人と仲良くするのはちょっと不安なんだって。さっき一緒に来る?って聞いたら、『急に会いに行くのもアレだし』って言ってたの。もしミノルおじさんが良ければお父さんも連れて来ていいですか?」


「いい!?今から嬢ちゃんの父ちゃんを連れて来るのか?」


 なんかミノルおじさんが凄く慌ててる。さっきのお父さんと同じ反応ね。


「駄目ですか……?」


「うう、俺だって急に会いに来られるのもアレだからなぁ……だが、嬢ちゃんの父ちゃんの気持ちも分かる。そうだな、父ちゃんが嫌じゃなかったら連れて来て貰って構わねぇよ。確かにちゃんと話をしといた方が良いわな……」


 ミノルおじさんが頭を掻きながら嫌そうに呟いたわ。


「おじさんも私のお父さんと会うのは嫌?」


「嫌じゃねえし!嬢ちゃんの父ちゃんだって別に俺と会うのを嫌がってる訳じゃねえと思うぞ!まぁなんだ、大人になるとな……臆病になるんだよ」


 えー!私より大人の方がちゃんとしてる筈なのに……変なの。


「とりあえず行ってきます!」


「おい、金持っていけ!そうだな、今度は果物がいいな。その金額分適当に見繕ってくれや」


「えへへ、ごめんなさい。じゃ、行ってくるね」


 私はまゆげちゃんに乗ってお家へ向かいました。




「い、今からか……そうだな、こういう事は早い方がいいな。分かった、お父さんも一緒に行くよ」


 お家に帰って果物を積み込んでくれたお父さんに今から一緒にミノルおじさんの所へ行こうと誘ったら、ちょっと戸惑ったみたいだけど一緒に行くって言ってくれたわ。


「そうだ!お母さんも誘ってみようよ。お母さんだってミノルおじさんが好きになるかも知れないわ!」


「そ、それはお父さん的にはキツいなぁ。」


 まあ!お父さんったら、ヤキモチ妬いちゃうんだ!やだもう!なんだか私お父さんのことをちょっと可愛いと思ってしまったわ。うふふふふ。


 お父さんはまゆげちゃんの助手席に乗ろうとしてドアを開けたわ。


「あっ、お父さん、今度はまゆげちゃんをしまってから行くの。しまったままで荷物を運べるのか、しまったまま運んだらお仕事をしたことになるのかを調べるんだよ」


「な、なるほど。そのミノルさんとやらは中々頭の切れる方のようだね」


「えへへ、だってミノルおじさんは異世か……あわわ!なんでもない!なんでもない!」


 あ、危なかった!思わずミノルおじさんの秘密を喋るところだったわ!


「???」


「もう!お父さん、行きますよ!」


「あ、ああ」


 私はお父さんの手を引いて歩き始めたわ!ふう、危ない危ない。

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