第10話 ポイントが増えた!
「ミノルおじさん!私商業ギルドの会員になっちゃった!見て!これギルド証よ!」
お家に帰ってからすぐミノルおじさんの所へ行ったわ。
「それにね、まゆげちゃんを従魔登録して貰ったの!テイムシンボルにしなさいって綺麗な羽飾りも貰っちゃった!どこに付けたらいいかな?」
「なんか情報が多いな!まあ色々目出度そうだ!良かったな!」
「うん!ありがとうミノルおじさん!」
私はミノルおじさんの工房にまゆげちゃんを出したわ。そしてダッシュボードに置いてある羽飾りを取っておじさんに渡した。
「おじさん、どこかに付けてください!」
「これは綺麗な羽飾りだな。んーグリフォンかな?外に付けると汚れちまいそうだ。そうだな、バックミラーに吊るしてみるか。ちょっと待ってろよ」
ミノルおじさんは羽飾りを持っていそいそと作業台に座ったわ。引き出しから道具や石を出してきて何やら加工してる。
……待ってるのもひまね。そうだ!今のうちに以前言われてたまゆげちゃんを出したりしまったりする時のステータス変化をチェックしとこう!
私はステータス画面を拡げてまゆげちゃんをしまってみた。
地面に沈むまゆげちゃん。ステータスに変化はないわ。
まゆげちゃんを出してみた。
あっ!精神力が10減ったわ!今の私からすれば気付かないレベルだけど、元々私の精神力の数値は25だった。という事は本来そうそう出し入れ出来るものじゃなかったのね。
これもミノルおじさんに感謝しなきゃね。ありがとうおじさん。
あれ?これは……?
「嬢ちゃん出来たぞ!羽飾りをぶら下げるホルダーを作った。魔法付与魔石があったからついでに付けといた!こっちが消臭、こっちはステータス異常耐性、まあ眠気覚ましだ。居眠り運転は厳禁だ!」
ミノルおじさんが大きな声で叫んでるけどそれどころじゃないわ!
「おじさん!ステータスのwpが増えてる!なんで!?」
そうなの、今までずーっと0だったwpが1700になってるわ。
えええ?私何かしたっけな?
「マジか!これで別の重機が手に入るぞ、やったじゃねえか。こりゃあ検証しなきゃならないな。嬢ちゃん、さっきここからまゆげを連れ出して今までの間何があったか言ってみな?」
「えーっと、ここでまゆげちゃんをしまって、お家で出して、ポーションの空瓶を積んで薬屋さんまで持ってって……」
「薬屋?何処の?」
「え?ここの近くの『妖精の雫』って薬屋さんの裏の広場です」
ミノルおじさんはうーん、といつもの腕組み顎髭ワシャワシャモードで考え込んでる。
私も真似して考えてみたわ。
「嬢ちゃん、ちょっと手間を取らせていいか?」
「はい、いいです。なんでも言ってね。まゆげちゃんで行ってきます!」
「今から家に帰って自分の店の何かを買ってきな、金は払うから。そうだな、酒にしようか」
「お酒なら多分まだあるわ。行ってくる!」
「ちょっと待て、いいか、必ず酒は荷台に積んで来いよ。後この金を持っていくのを忘れちゃ駄目だ。あくまで商品を積んで来るんだぞ!」
「はーい!行ってきます!」
私は急いで工房から飛び出そうとしたわ。きっとミノルおじさんは何かヒントを見つけたに違いないから。
急がなきゃ!
「おいおい、話は最後まで聞いて行け、あとひとつだから!お前さん羽飾りを付けないと駄目なんじゃねぇの?これを付けてやるから外でまゆげを召喚しろ」
あっ!忘れてた!
「そうだったわ!忘れてました。ごめんなさい」
「へっ、とんだあわてんぼうだな。安全運転するんだぞ!この街の馬車は左側通行だからな、後、街中では20キロ以上スピードを出さないこと!忘れるな!」
「左側通行はさっき商業ギルドで聞いたから知ってますぅ!スピードは気をつけますぅ!それよりおじさん早く羽飾りを付けてください!」
「へいへい。」
おじさんに羽飾りを付けてもらったわ。バックミラーからぶら下がった羽飾りはユラユラしてて可愛い!
よし、まゆげちゃん発進!
プルルンとエンジンが掛かり、私はまゆげちゃんを発進させた。
20キロ走行で安全運転よ!
「ただいま!お父さんはいる?」
お父さんはお店の椅子に腰掛けて書類を整理してたわ。きっとこれから買い付けに行く物のリストか何かを纏めてるんだと思う。
「エリーゼか、どうした?」
「あのね、さっきミノルおじさんの所に行ってテイムシンボルの羽飾りを付けてもらってたの。そしたら私のスキルに変なポイントが溜まり始めちゃったのよ。」
お父さんはなぜか慌てた様子で椅子から立ち上がった。
「エリーゼ、体調とか問題ないのか!?」
「ないない!大丈夫!あのね、その変なポイントは別の重機と交換する時に使うポイントなの。でもなぜ溜まったのかが分からないからミノルおじさんに相談したら、お家に帰ってお酒を買って来てくれって頼まれたのよ。はいこれお金」
私は預かったお金をお父さんに渡したわ。するとお父さんの顔が渋くなった。
「ああ、またミノルおじさんとやらの所へ行くのか?」
「うん、お酒持っていかなきゃ。それにそのお酒をまゆげちゃんに積んでから持って来いって言われたの。多分このお酒をまゆげちゃんで運ぶ事に意味があるんだと思うわ」
すっごい渋い顔のお父さん。何だか考え込んじゃってる。
やっぱりお父さんはミノルおじさんのことが嫌いなのかな?
私を心配してくれるのは嬉しいけど、おじさんのことを嫌いになるのはやだな。
「ふう」
溜息を吐いたお父さんは私を見て微笑んだ。
「まあエリーゼが信用してる人なんだから仕方ないな。お前も商業ギルド会員になった訳だし心配するのも間違いかもしれない」
「やっぱりお父さんはミノルおじさんが嫌いなの?」
「嫌いな訳じゃない。ただ、お父さんの知らない大人とお父さんの娘の間に付き合いがあるのが不安なのだよ」
「そうなんだ……」
そっか、お父さんはミノルおじさんが誰だか分かんないのが嫌なのね。
あっ!ならお父さんもおじさんと仲良くなったらいいんだわ!
「ならお父さんもミノルおじさんに会って話をしたらいいじゃない!そうよ、どうせ今から行くんだからお父さんも一緒に行きましょ!」
ナイスアイディア!今から行けばいい!誰かが言ってたいい言葉があったわね、なんだっけ?
「そうそう、『善は急げ悪も急げ』だったわ!」
「悪は要らないぞ!」
そう言うお父さんはなんだか困ってるみたい。何か用事でもあるのかな?
「行けない理由があるの?それともやっぱりミノルおじさんに会うのが嫌なの?」
「い、いやいや、別に嫌って訳じゃないんだ……その、急に会いに行くのもアレだしな……心の準備がな……」
「なら、今度お父さんと一緒に工房へ行ってもいいか聞いておくわ。いいって言われたら行く?」
「ああ!それなら是非伺おう!」
お父さんは頷きながらお酒の樽を持ち上げてまゆげちゃんの所まで運んでくれた。
「気を付けて行きなさい。左側を通るんだよ!それとスピードを出し過ぎないようにな!」
「もー!お父さんもミノルおじさんと同じ事言ってる!左側通行は商業ギルドで習ったし、スピードは出さないで安全運転します!行ってきます!」
お父さんもミノルおじさんも心配し過ぎだわ。私だってもう10歳過ぎたから大人の練習中なのよ!
でも、2人共私を大事にしてくれてるってことはよく分かる。
えへへ、うれしいな。
私はまゆげちゃんを発進させたわ。プルルンと軽快なエンジン音が街に響いた。
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