第4話 私のまゆげちゃん
お友達のマリアちゃんは王都にお引越ししちゃったわ。
聖女待遇とは言え流石に娘だけ王都に行かすのは良くないってことで家族揃ってのお引越し。
マリアちゃんにはすっごいデカいおうちが国から与えられたそう。マリアちゃん曰く、『私には馬小屋で動物に囲まれて暮らす方が向いてるわ』だそうな。
ジーク君にはいろんな身請け先が来たそうだけど、結局お隣のお家の貧乏貴族の所に行ったわ。
家族と離れたくないからと、その貴族の息子が友達だから助けてあげたいのが理由なんだってさ。その子は金髪が綺麗な同級生の男の子よ。名前は…なんだっけ?ライなんとかさん。
そのライなんとかさんのスキルは『覇道』ですって!凄いわね!2人で仲良く宇宙でも手に入れてくれたら良いと思います。
さて私と言えば、お家のお手伝いに明け暮れてます。朝早くからお店のお掃除して、朝ご飯作る。学校行って帰ったらお店の品出しをしてから晩ご飯作り、夜寝るの。
お父さんとお母さんはすっごい喜んでくれたわ。スキルなんかなくても頑張るのは私自身だからって言ってくれたお母さんの期待に応えるため……が半分と、例の精神力枯渇を心配掛けないため。
しっかりお勉強とお手伝いしてる娘がまさか禁断の訓練をしてるなんて思わないでしょ?
就寝前にマックスまで精神力をスキルステータスへ貯蓄してる。
初めての精神力枯渇の時は余りの気絶っぷりにおねしょしちゃった。てへ。
だから今はしっかりトイレに行った後にやってます。
貯蔵を始めてから最大精神力量が上がってきたの。分かったのは精神力枯渇すると全精神力の5%程最高値が上がるってことよ。最初の頃は1上がるだけだったのが、だんだん上がる量が増えてきたの。その法則が分かってからは順調に増えてきてるわ。
40になったら2ポイントずつ増え始め、60になったら3ポイントずつ増えてきたからね。
精神力500だった次の日の追加精神力が25ポイント増えていたのを見た時は感動したわ。最初の25ポイントを思い出したもの。
続けていく事約半年!!その後も順調に貯蓄も最大精神力も増えました。
て言うか、増え過ぎた!
名前:エリーゼ
種族:人間
LV:1
生命力:12
精神力:22,819
体力:5
知力:18
敏捷:9
器用:13
気力:15
魔力:46
状態:正常
技能: 重機LV1、魔力操作LV3
受動技能:精神力回復力増加、精神力回復量増加、努力、根性
称号:努力人、投資家
精神力だけが異常!?
オマケにスキル増えてるし!なんか受動技能ってのも増えた!何これ?
ミノルおじさんの所に行って聞いてみたら、訓練でスキルは増えるって教えて貰ったよ。ホントこのおじさん色々知ってるわ。
あ、ミノルおじさんの奥さん見たわ。1回だけだけどね。
おじさんはすっごいおじさんっぽい人なのに、奥さんは美人で結構若い人に見えた。
『自分探しの旅人』って言うスキルがあるんだって!聞いたことないスキルだわ!すごー!
だからいつもどこかへ行ってるみたい。
ちなみにミノルおじさんのスキルはまだ秘密なの。約束の日に教えてくれるそうよ。
とは言えここまで来るのに半年も掛かってしまった。
現在貯蓄精神力、480,220mp。
がんばったー!むふーー!!
後2万弱だもの!もう足りちゃう!
約束通りミノルおじさんの所に行ってから貯蓄しよ。おじさんったら凄く楽しみにしてるからね。
おじさんのおうちは3番通りにある魔導具店『カーバンクル』の裏にある工房なの。ちょっとボロいけどシンプルでイカしてる。
「ミノルおじさん居ますかぁ?」
「おーう嬢ちゃんか、居るぞぉ!勝手に入って来いよ。」
言われた通り入口の引き戸を開けて中に入る。
ガラガラガラガラ
いつ開けてもいい音。軽いカラカラ音がなんだか工房にやって来た感を出してるわ。
「こんにちは!」
「おう嬢ちゃん!精神力貯まってきたかい?」
ミノルおじさんは手に持ってる何かを布でゴシゴシ擦りながら私の方を見たわ。
「はい!今日で50万mpになるので来ました。」
「マジか!いやー早く軽トラ見せてくれよ!」
ボサボサの頭を掻きながら期待に胸を膨らませるようにはしゃいでる。おじさんのはしゃぎ、誰得!?
「じゃあ最後の精神力あげちゃいます!」
私はステータス画面に手を伸ばしカウンターを動かす。いつもなら逆回しで一気にマックスにするけど、今日は感慨深いからひとつずつ…なんて待ち切れない!
一気に19,780ポイントをぶっ込んだわ!
「やったー!50万貯めたわ!私がんばった!!」
「そうだな、10歳で50万も精神力溜めた事あるやつそう居ねぇだろうよ。」
「ふーん、居るには居るんだね。」
「まぁ世間は広ぇからな。居るっちゃ居るよ。」
そうなのね、残念。
気を取り直してスキルステータス画面へ。中古の550ccトラックを選択する。
ポチッとな!
画面上に書いてあった『500,000mp』が『0』になったわ。
か、買ってやった!!どうよ!
「お、おじさん、中古のトラックを選んだよ。どうしたらいいですか?」
「多分『ここに出ろ』って念じたら出る。位置なんかは何度も出したり引っ込めたりして経験を積むしかないな。後、今のステータスがどう変わったか確認するのを忘れるなよ。」
「ステータスは後で確認するわ。今はトラックが何なのか見てみたい!」
「むう、確かに!」
「なら行きます!『出ろォーッ!トラーーーック!!』」
私は声高らかにトラックを呼び出したわ。すると地面が四角く輝き、ピンク色の四角いブロック塀みたいのが現れた。そのブロックが上からドンドン消えていき、中から何かが見えてくる。
「な、何これかわいい!!おっきな眉毛生えてる!」
私の目の前に空色の頭がでっかい車輪の付いた鉄の箱が現れたわ。上は透明な部分があって中が見える。後ろは荷台みたいになってるわ。黒い車輪が4つ付いてて黒い足みたいに見える。
それに、大きな丸い目玉が付いててその上にオレンジ色の太ーい眉毛が!
か、かわいいわ!
「おおっ!こりゃあ『まゆげ』じゃねえか!懐かしいな!こいつの名前はマイジェットS65って言ってよ、ハンハツって言う会社が作ったんだ。エンジン型式AB型直列2気筒OHC、排気量547cc、最高出力29ps/5300rpm、最大トルク4.5kgm/3500rpm、こいつは二駆だな。」
「言ってる意味がよく分かりません。」
「そ、そうか、まあいいや。特徴は嬢ちゃんが言った通り丸型ヘッドライトの上に付いているウィンカーランプが眉毛に見える事だな。フォルムが可愛くて人気があった。こいつの上位種はハイルーフ後部リクライニング部分が付いた『マイジェットジャンボ』って言うやつも居るぞ。」
まゆげちゃんか、可愛くて気に入っちゃった!これが馬で引かなくても走る荷車なんて信じられないわ!
「うーん、だが程度が悪いな。このままじゃ壊れちまいそうだぞ。」
「えっ?まゆげちゃん壊れちゃうの?」
「おっ、もう名前付けたのか。名前付けたら感情移入出来て楽しいよな。確かにこのまま使ったらじきにイカれちまうと思う。だが嬢ちゃん、安心しな。俺の秘密の力でこいつを蘇らせてやるよ。何ならグレードアップさせてやる!」
秘密の力!?そう言えばミノルおじさんの秘密を教えて貰う約束してたんだったわ!
「ミノルおじさんの秘密の力って、何ですか?」
「俺の秘密…嬢ちゃんだから話すぞ、他人には言うな。」
「は、はい!」
「俺は『異世界人』なんだ。女房も同じ故郷から来た。このトラックはその異世界の道具なんだよ。」
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