第2話『重機』って、何よ!

 家に帰った私に家族は温かかった。


「いやー僕はエリーが聖女とかじゃなかった事が嬉しくてさ。聖女になっちゃったら数年は逢えなくなるからね。僕は寂しくて死んでしまうよ」


「お兄ちゃんの愛が重いわ」


 お兄ちゃんはさて置き表面上は温かく迎えてくれた家族に感謝するわ。


 聞く所によればダメスキルや不必要なスキルを手に入れてしまった子供を不当に扱う親もいるらしいからね。


『重機』なんて意味不明過ぎで私だって若干不気味だもん。


「まあスキルが何であれエリーゼは可愛いうちの娘だからな。正直スキルなんてどちらでもいい」


「まあ役に立つスキルだったら言う事ないですけど結局はその人のやる気次第ですからねぇ」


 お父さん、お母さん、ありがとう。私はめっちゃ元気に振舞ってます。


 そりゃあ凹んでるわよ、だって『重機』よ!?


 意味分からないから!


 考えてもいっこも分からん!


 鑑定士のおじさんに教えて貰ったステータス画面を見てみても……


 名前:エリーゼ

 種族:人間


 LV:1

 生命力:10

 精神力:25

 体力:4

 知力:12

 敏捷:7

 器用:9

 気力:9

 魔力:10

 状態:正常


 技能: 重機LV1


 わ、分からん!


 とりあえず部屋に戻り、重機スキルを使ってみることにするわ。


 自室のベッドに寝転んで天井を見ながら頭の中で『重機』と呟く。


 すると、目の前にウィンドゥが広がって何かが書いてあるのが見えたわ。


 なになに??


『重機購入画面 LV1ラインナップ


 4トンフォークリフト 750万wp

 2.5トンフォークリフト 280万wp

 3トンホイールローダー 450万wp

 2.1トンホイールローダー 380万wp

 660ccリフトダンプトラック 150万wp

 660ccテールリフト付きトラック 150万wp

 660ccダンプトラック 150万wp

 660ccトラック 100万wp


 550ccトラック(中古)…0/500,000mp


 現在のwp=0 貯蓄mp=0』



 なんじゃこりゃ?意味が分からん!!


 もうやだ、私泣きたいわ。


『くりふと』とか、『るろーだー』とか、『とらっく』とか……


 私には何を言ってるのか意味が分からない。


 ベッドに伏せてジタバタといいだけ騒ぎ立てる。でも絶対お父さん達にはバレては駄目なの。


 私には分かる。2人共さっきは温かい言葉を掛けてくれたけど、とっても残念な気持ちにさせてしまってるってことが。


 みんな私に期待してた。だから、顔に出ちゃってたのよね。


 お兄ちゃん以外は!


「ちょっと外に出て気晴らしをして来よう」


 私は家族に気付かれないように窓から外へ出ることにしたわ。


 その時、リビングからお父さんとお母さんが話してるのが聞こえた。


「エリーゼは私達の娘だ。私達が必ず幸せにしてやるのだ。スキルなんか関係ない!」


「ごめんなさいあなた、私は駄目な母親です。もっとしっかりしなくちゃ!1番辛いのはエリーゼなんですから……」


 窓から外へ出る私の目からは涙が溢れ出し、どうやっても止まらなかったの。




 もう夕方になる。


 外へ出たはいいけど特に行く所もなく、今は川土手の芝生に寝転んでます。


 はぁ……帰ろうかなぁ。


 でもさっき見た両親の作り笑い、さっき聞いた両親の話。


 胸がチクチクする。


 お父さんは残念だったろうな、お母さんごめんなさい。


 お兄ちゃんは……どうでもいい。


 私のせいで私の家族が辛い気持ちになってるなんて……


「何が『とらっく』よ!意味分かんないわ!『くりふと』なんて要らない!私のスキル返してよ!!」


 私はおっきな声で川に向かって叫んでた。


 大きな声を出したけど、同時に涙が溢れて来て喉がつまる。


「私、どうしたらいいの?」


 土手に座り込んで顔を伏せた。


 辛いわ……


「おい嬢ちゃん、ちょっと良いか?」


 急に声がしたからビックリして顔を上げたら目の前に知らない黒髪のおじさんが居たわ。


「だ、誰ですか!?」


「いやいや、嬢ちゃんがトラックとかリフトとか言ったからよ、気になったんだよ」


「そんな事言ってません!知りません!」


「知りませんて……ああそうかそりゃ知らないわな、『こっちの世界』にはトラックとかフォークリフトなんかの重機は無いもんな。」


 え?おじさん、今なんて?


 この人何でフォークリフト知ってんの?それに…確かにこの人今『重機』って言ったわ。


 おじさんはスマンスマンと言いながら私から離れて行く。


「お、おじさん……『重機』って言った?」


 私が震える声でそう尋ねたわ。


 おじさんは振り向いてニヤリと笑った。


「おや嬢ちゃん、アンタ『重機』って、知ってんのか?」


「分かりません、でもその『重機』が……私のスキルなんです!おじさん教えて!重機って何ですか!?」


「じ、『重機』がスキルだって!?」


「て言うかおじさんは一体誰ですか!?」


 おじさんはビックリした顔で私を見た。でもさっきのニヤリとした顔に戻ると話し始めたわ。


「俺の名はミノルだ。嬢ちゃん、アンタに『重機』が何なのかを語ってやるぜ」

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