落ちこぼれスキルだと思ってた『重機』の力でのし上がる!!~走って運んで掘って積む、私だけの素敵なスキル〜

ぴ〜ろん

第1話 落ちこぼれスキル

 春になると大きな街から『鑑定人』と呼ばれる人が来るの。


 そして10歳になった子供のスキルを『鑑定』して、その子の能力を調べ世間に公表する。


 その能力を聞き付け色んな人がやって来て、自分の所で働かないかと交渉するの。


『剣士』『盾士』『魔法士』『回復士』なんかは上手く行けば国から交渉を受けて軍隊に入ったりする。それに、軍に入らなくてもそのスキルを持ってたら『冒険者』になる道が開けるわ。


 冒険者は人気だもんね。


『鍛冶師』『調理師』『解体士』『狩人』なんかだとこの街の商人や職人から交渉を受ける。


 手に職が付けば食べるには事欠かないわ。


『馬術士』『俳優』『手品師』なんかもあるわよ。


 そうやってみんな能力に見合った場所に行って経験を積み、14歳で大人として認められる頃には一人前の専門職として働く事が出来るってわけ。


 適材適所、マッチングってやつね。




 私はエリーゼ、去年の秋に10歳になった緑色の長い髪が自慢の女の子よ。


 マールっていう街に住んでてお父さんとお母さん、兄の4人家族で特に不自由なく暮らして来たわ。


 お父さんは『商人』お母さんは『会計士』、お兄ちゃんは『交渉人』のスキルを持ってる。


 マールの街2番通りにある雑貨屋『ウォール商店』が私のお家なの。そう、私はベッタベタの商家の娘です。




「エリーゼ、そろそろ出掛けるよ」


「はーいお父さん!」


 立派なお髭のお父さん。そろそろ40歳になるけどカッコイイ!


「うちは商売をしてますからエリーゼにも商売向きのスキルが付くといいですわねぇ」


「いやいや、エリーはどんなスキルが付いても構わないよ!エリーが家にいてくれるだけて僕達は幸せだからね」


 お母さんは怒ると怖いけど普段はとても優しいしお兄ちゃんは私に滅茶苦茶甘いわ。ちょっとキモイくらい甘々。


 でもまあお兄ちゃん割とイケメンだからそこまでキツくはないけどね。


「それじゃ行ってくるよ」


「いってきまーす!」


 髪を編んでもらってちょっとだけおめかしをした私はお父さんに連れられて家を出た。そう、今日は鑑定人による『スキル』確認の日なの。


 何のスキルがゲット出来るかな?




 街の中央広場には沢山の人が集まってた。真ん中に少し高い所があって1人のおじさんが椅子に座ってる。


 その周りに子供達が数名とその親らしき人達が居て、更にその周りを沢山の人が取り囲んでいたわ。


 多分子供のスキルをいち早く確認して自分の手元に取り込みたい人達ね。


 端から見ると何だか世知辛いわぁ。


 今丁度お友達のジークフリード君、私はジークって呼んでるけど、彼が鑑定を受けるみたいよ。


 ジーク君は赤髪でちょっと見カッコイイ男の子。


「ジークフリード君、君は『従者』のスキルを持っています。君は人に仕える事で相手の能力を引き上げ、その人の能力分自らの能力を上げる事が出来る様になります。素晴らしい力ですよ」


「はい!ありがとうございます!」


 ジーク君は従者か。自ら身を立てることは出来なくても誰かをフォローすることでお互いの才能を高めることが出来るスキル。それに今彼の能力が公開されたことで、今後彼が役立たずと評価されればそれは雇用主の能力が低いと言うことが世間に露呈してしまう。


 だからジーク君の扱いは自動的に良くなるって訳。


 パッとしないスキルに聞こえるけど、これはかなり有能なスキルだわ。仕えられる方もイケメン君にサポートして貰えて良いこと尽くめよ。


 あ、次はマリアちゃんだ。茶色のショートカットのマリアちゃんはうちの近所の御者を営むお宅の娘なの。私とはとっても仲良し。


 マリアちゃんのお父さんのスキルは『御者』、お兄さんは『荷役士』で、うちのお父さんは商品の買い付けをいつもマリアちゃんのお家に頼んでるのよ。


 マリアちゃんはおうちの馬の世話をする為『獣医』になりたいって言ってたからそれに近いスキルが付けばいいね。


「マリアさん、君のスキルは……せ、『聖女』です!!これは素晴らしい!聖女のスキルは世界中でも珍しいスキルです!」


「わ、私が『聖女』!?」


 な、なんですって!マリアちゃん聖女!?


「私…獣医さんになりたいんですけど……」


「マリアさんの親御さん、マリアさんは今から国の庇護下に置かれます。『聖女』とはその存在だけで価値があります。下手をすると攫われたり、害されたりする可能性があります」


「は、はぁ…分かりました」


 マリアちゃんは救い過ぎな結果になっちった。動物だけで良かったのに、もう大変。




 そんな騒ぎもありながらついに私の番になった。


「エリーゼです。鑑定士様、よろしくお願いします」


「エリーゼさんですか、しっかり挨拶も出来て良い子ですね。こちらこそしっかり鑑定させて頂きます」


 鑑定士のおじさん、優しそうでい良い感じ。大人の人って感じが素敵。


 うちのお兄ちゃんもこうなって欲しい。


「エリーゼさんのスキルは……えええ……


 何かな?『教師』とかやってみたいわ。『園芸師』になってお花を育てるのもやってみたいし、『歌姫』になって素敵な歌声を披露してもいいわ。


 最悪でも『衛士』だったらお家の防犯に役立つから!お兄ちゃんは嫌がるだろうけど。


 ………


 ………


 ……あれ?鑑定人さん?


「うむむ……エリーゼさんのスキルは……」


「な、何でしょうか?」


 鑑定人さんはとても困った顔で私を見た。



「エリーゼさん、あなたのスキルは……『重機』です」




 …………は?

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