閑話 神界会議①
心地の良いそよ風が彼の頬を撫でる。
彼はゆっくりと瞼を開け、その場所を認識した。
——草原。
生物の中でも上澄みに達していないと感じ取れないモノに抱擁されているこの空間に、異質ともとれる大理石の様に神秘的で美しい巨大な丸テーブルが一つ佇んでいた。
その周りには13脚の椅子が。
その内の12脚の椅子に異様な存在感を放つ人影があった。
彼は分かっていたのだろう。
残りの一席に向かって表情を変えず歩いた。
席の前に来ると、椅子を引きそれに座る。
すると人影達の姿が鮮明になった。
テーブルを囲うように条件付きの隠形結界が張られていたようだ。
そしてその隠形を自身に付与、または既に付与されている者の姿を見る為には席に座る必要があった。
彼は思う。
姿まではお目にかかったことは無かったが、全員が全員『
これでは私だけ、我が星の若者ファッションじゃないか。
パンッ――
『星神』の誰かが手を叩き合わせた。
その場にいた神々の視線が集まる。
「それではまず形から……。
ようこそおいでくださいました、各星の神々よ。
今会議進行は、この私、フが務めさせていただきます。よろしくお願いしますね」
『フ』と名乗った神が優雅にお辞儀をする。
それに対して礼儀を通そうと会釈をしたのは彼だけだった。
他の者というと、欠伸をする者、目を擦る者、微笑みを張り付けたまま微動だにしない者、テーブルに乗せた足を組み替える者などなど……。礼儀の欠いた者が殆どだった。
それを見て目を顰める彼。
しかし直ぐにその表情を改めた。
「ではまず、改めてこの場にいる皆様の自己紹介をして頂きましょうか。
第一星の貴方からお願いします」
彼の左隣に座っている神に視線を向けてフは言った。
彼は自然と左隣の彼女へ視線を向ける。
彼女は彼を一瞥するとフに視線を戻し、神々を見渡して口を開いた。
「あたしの名はシハ。
フの奴が言った通り、リンファーレ第一星の星神だよ」
愛想もなくそう答えたシハは解いていた腕を再度組み、目を瞑ってしまった。
彼は蟀谷を摘むと、簡潔すぎるな。と息を吐いた。
その後も簡潔すぎる自己紹介が進み、次は彼の番となった。
神々の視線が彼に集中する。
「私の名前はアース。
太陽系第三惑星の星神です。この度は会議に招待頂き誠に有難うございます」
彼――アースは立ち上がり一礼と共にそう答えた。
そして着席する。
「さて、皆様の自己紹介も終わりましたし、固い感じはやめて……本題に入りましょう。
説明はアースさん、お任せしますよ」
「はい」
アースは返事を返し、再度立ち上がる。
「ではリンファーレ星神の皆々様。
地球のプレイヤー達のキャラクリエイトの補佐、ありがとうございます。
並びに星々に転移、受け入れてくださりありがとうございます」
ここで一度頭を下げるアース。
言葉を続ける。
「皆様の指示通り、『IPO』プレイヤー達のステータス同期完了しました。
今し方、地球上ではプレイヤー達がそれに気付く者が現れ始めました。
地球上の人類が大混乱に陥るのも直ぐだと思われます。
初期段階につき、経過を見てから転移いたします。
それで、よろしいでしょうか?」
「いいともー」
ここで話された内容は地球上の人類は知る由もない。
ましてや、フィエルさえも――
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