第10話 意外とあっさり
「ふう、疲れた」
結果としては骸骨三体、骸骨兵士一体を討伐できた。
本当に【火魔法】を練習した甲斐があった。
俺が練習している間に、骸骨兵士の近くにはさっきの骸骨二体にプラス一体増えていて、討伐しに赴くのを少し躊躇したのだがノリノリだった俺はその思考を直ぐに振り払い、駆けたのだ。
【駆け足】で骸骨兵士に近付く間に、無詠唱で三連続の《火の矢》を放った。
すると骸骨二体に当たって炎上。それらは確実に倒せたが、一体残ったのでダメ押しに《火の矢》を間隔を開けて二発放つ。
そして骸骨兵士に視線を向けると、目の前に剣が迫っていた。
それをすんでのところで後ろに跳んで避けると、咄嗟に魔法を放とうとして止める。
なぜなら、マーヤさんから受けた依頼はその魔物の骨を一体分納品だ。
もし燃え尽きたりして足りない箇所があったら狩り直しになる。それは避けたかったからだ。
剣を抜き、血を蹴って肉薄する。
袈裟斬りに剣を振るう。しかし、当然かのように受け止められた。
より力を入れるが、やはり骸骨のボロの剣のようにはいかない。
骸骨兵士のどこにそんな力があるのかわからないが、俺の剣は弾き返された。
しかし、骸骨兵士は骨の体。力一杯跳ね返した反動で、剣を大きく振ったままの体制で体ががら空きになっていた。
そこで体制を瞬時に変え、蹴りを入れた。
吹き飛んだ骸骨兵士。肋骨も折れてそのまま動かなくなったのだった。
俺はその下手したら一分にも満たない戦闘を噛みしめるように思い出していた。
我ながらよくできた方だ。と思う。
しかし……残り一体の骸骨に《火の矢》を放った時、骸骨兵士に目を向けていなければ俺は死に戻っていただろう。非常に危なかった。今度からはしっかり満遍なく気を配る事にしよう。
因みにこの戦闘で俺はレベルが15に上がった。恐らくこの草原ではもう敵なしだと思う。いや、慢心はいけないな。特に骸骨・アルミラージとか出てきたらやばそうだ。
俺はギルドの資料館で気になって調べてみたんだ。
骸骨・アルミラージとはどんな魔物なのかを。
ランクはレベルによって分かれるが、F~E級だと書かれていた。
簡単に言うと突進飛び蹴り兎だ。
弾丸のような速さで突っ込んでくる魔物だという。
そして見た目がホーンラビットと酷似していると。
まあ希少種らしいし、出くわすことはないだろう。
さて、次は骸骨・ホーンラビットか。
辺りをぐるりと見回すと、ある背の高い草の陰からちらりと白い角が見えた。
これまたすぐ見つかるとは運のいい。そう思いながら俺は【忍び足】を使って近づく。
このちらりと見えた白い角がただのホーンラビットである可能性は限りなく低い。なぜなら、ホーンラビットは夜になると巣穴に戻って睡眠すると資料に書いてあったからだ。
因みに俺が【忍び足】で近付いている理由は、先手を打つためである。
俺の攻撃力を以てすれば、打撃の一撃で斃すことが可能だからだ。
もしそれが成功すれば、無駄に攻撃を避けなくてもいいし何より早く終わる。
俺も流石に徹夜はキツイからな。斃してさっさと宿を取って寝たいのだ。
没入型VRMMOのこの世界でも眠くはなる。
体感としてはしっかり一日経過している訳だし、当たり前である。
没入型の世界では基本的に現実との時間の流れが八倍になる。それは現実の世界にある脳を活性化させてフル稼働させるから実現できているらしい。
それをしているとそりゃ直ぐに脳にも疲れが来るわけで、現実世界の二時間(IPOの一六時間)で眠気が来る。
しかし……待てよ?この時間って宿は空いてるのか?もしチェックインできなければ、俺野宿することになるんだが??
…………しくじったな。
ギルドの資料館に行く前に、宿を取っておくべきだったかもしれない。
そう無駄な事を考えつつも俺は骸骨・ホーンラビットに接近する。後三歩程の間合いだ。
意外にも魔物はまだ俺に気付いていないようだった。
なので俺は一撃で斃そうと、拳に力を込める。
そして振るった。
するといとも容易く斃れ、死体がインベントリの中に入ったのだった。
【レベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【熟練度が一定に達しました。【暗殺術】のレベルが上がりました】
【熟練度が一定に達しました。【駆け足】のレベルが上がりました】
経験値うま!でも手ごたえが無いな……少し残念な気分だ。
さて、目的は終えたし骸骨倒しがてら帰りますかね。
俺は魔力の残量を気にしながら《火の矢》を乱発して街に戻って宿をとった。
そう、宿が一応取れたのだ。
夜番をしていた従業員にお金を払って素泊まりした。それだけで750Rだった。
ふぅ……金策頑張ろう。
明日はマーヤさんの店で依頼を達成してから、ギルドで骸骨の素材を売ろう。
いや、あわよくばマーヤさんの店で骸骨の素材も買い取ってくれるかもしれない。
その後宿か薬師ギルドで錬金作業だな。
そう考えながら俺の意識はとろけるように落ちていった。
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