第9話 火魔法の特訓?
目標を決めた俺は近くの骸骨目掛けて剣を抜いて駆け出す。
陸上選手もびっくりの速度が出ていると思う。
すると足音で俺の存在に気付いたのか、骸骨は振り返り覚束ない足取りで駆けてくる。
距離は約5メートル。後一歩二歩進めば両者とも間合いだ。
剣を上段に持ち、骸骨に打ち込もうとするフリをして迫る。対して骸骨は中段から薙ぎ払おうとしてくる。
凄い、骸骨の取る動きが手に取るようにわかる。これは【見切り】の効果だろう。
骸骨が剣で薙ぎ払おうとする瞬間を見計らって飛び退く。
盛大にスカッた骸骨の両手首を断つと、呆けた顔を見せた骸骨の横っ面を殴る。
決して鈍くないコン、という骨の中に空洞があるような音が鳴る。
その頭蓋骨が胴体と泣き別れ、吹っ飛ぶ。
残された胴体は、そのまま力を失ったかのように崩れていった。
【レベルが上がりました】
お、レベルが上がった。これでまた悪役への道が近づいたぜ。
あ、てか、【火魔法】使い忘れたんだが。
……次からはちゃんと使おう。
さて、この骨も拾いますか。
今回は一応ボロ剣も攻撃してないし、売れるはずだ。後、魔石も忘れずにね。
そう考えながら骨を拾っていると、インベントリウィンドウの右下の文字が目に入った。
「自動回収……?」
もしかして、もしかするのか?
俺はOFFになっているスイッチを切り替え、ONにする。
すると――
【次回から倒した魔物の素材は自動的に回収されます】
【只今倒した魔物の素材を回収しますか?YES/NO】
と出てきた。
もちろんYESを押す。
【回収しました】
そのログと共に目の前にあった骨の山とボロ剣が消えた。
…………嘘だろ……自動回収あるじぇねえか!
せっせと拾っていたのが馬鹿らしくなってくるわ。
心の中で地団駄を踏みながら叫ぶ俺。
だが、NPCにはインベントリすらない事を考え、溜飲を下げる。
そう考えるとNPC可哀想だな……いやマジで。
俺は立ちあがり、骸骨が寄ってきていないか確認する。
そしてインベントリを再度見た。
そこには自動回収された骨と魔石があった。
取り出してみると、それは小指の爪ほどしかない深い紫色の石だった。
鑑定してみる。
==========
【魔石 等級:G 品質:F 分類:素材】
詳細:
武具などの素材、魔道具の燃料になる。また、魔法の媒体にもなる。
保有魔力は17。
==========
魔法の媒体にもなるって事は……?この魔石の保有魔力を使用して魔法を放てるという事か!?
それならば骸骨を斃すたびに魔力が回復するのと同義じゃないか。素晴らしい。
さて、この意気で次の骸骨を火魔法で斃そう。
近くの骸骨に狙いを定めて駆ける。
今レベル0で使える火魔法は《
《
対して《
これなら小手調べに火魔法でどれだけ食らうか調べる為にも《小火球》を打つべきか。コスパもいいし。
ってことで俺、行きます。
「火の精霊よ我が魔力を糧とし敵を討ち焦がせ――《
こちらには気付いていない骸骨に掌を向けて頭に浮かんだ文を読み、詠唱を終えて言い放つ。
すると骸骨は首を180度回転させてこちらを見てきた。
それと同時に胸の中心が熱くなり、その熱がまるで血管を辿るようにして、掌に集っていく。そしてその熱が全て掌に集まると、掌から熱が放出された。
瞬間、視認できたのは半径10センチほどの赤い玉。よく見ると太陽のように表面がメラメラと燃え盛っている。
骸骨はこちらに向かって駆けだしていた。
そしてその体に向けて《小火球》は放たれる。
時速70キロメートルはあるであろう速度で骸骨に迫る。
これを視認できているのは恐らく【見切り】のおかげだろう。
近距離で放たれたため、そのまま骸骨は回避することもなく頭蓋に着弾し炎上。
剣を放り投げ、骨の手で火を消そうと頑張るが手にも燃え移り――結果全身に燃え移って倒れた。
【熟練度が一定値に達しました。【火魔法】のレベルが上がりました】
【レベルアップに伴い魔法、《
【経験蓄積によりスキル【魔力感知】を獲得しました】
【経験蓄積によりスキル【魔力操作】を獲得しました】
「っし!」
思わず俺はその場でガッツポーズをしてしまう。
この結果で喜ばん奴はおらんだろ。
俺は一発目で当たるとは思っていなかった。なぜなら最初骸骨と戦った時の失敗があったからだ。
武器適正が下がっているとはいえ、あのスカりは正直めっちゃ恥ずかしかったからな。悪役にあるまじき失態だ。
しかしどうだ?今回は一発だ。
しかも【火魔法】がレベルアップしたし、魔法関係のスキルも手に入った。
素晴らしい成果だよ。
インベントリにも無事骸骨の死体が入っているし万々歳。
《
試し打ちしてみた結果、確かにレベル1で覚えた《火の矢》は強かった。
必要最低魔力が《小火球》と同じく2であるのにも関わらず、弾丸のような速さで骸骨に向かって飛んでいき、着弾した箇所を炎上させるという結構な凶悪である。
だが、問題点が一つあったのだ。
それは詠唱が少し長い事。
これじゃあ戦闘に多用出来ない。
なのでどうにか詠唱を短くできないかと、俺は小説でよく見る『無詠唱』なるものを練習した。
骸骨から手に入れた魔石を使い、詠唱を端折ってみたり、心の中で唱えて見たり。
結果、三時間の練習の末に無詠唱を会得。
俺はノリノリで骸骨兵士に挑むのだった。
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