第8話 骸骨種の情報と深夜の草原
俺は求めていた魔物の情報、結論から言うと――ありました。
それはもう普通にスケルトン種のGとF級の二冊にありましたねぇ。
割と使い古された感じの辞書みたいな厚さのある本に書かれてました。
最初のページに目次があったので余裕で見つけれたよね。もっとわかりずらいかと思ってたわ。
そして俺は致命的な事に気が付いた。それは魔物の核『魔石』の事だ。
俺は昼頃から狩りをしていたが一回も魔石を拾ってない。
それは普通に見逃していたのだろうと最初は思った。
しかし、スケルトンはそうであってもリトル・グラスはそうではなかった。
忌々しき事にリトル・グラスの魔石は根っこにくっ付いているらしい。
そんなもんわかるわけあるかぁーー!!
と叫びたい気分である。
俺は鎌で根っこの少し上部分を刈り取っていた。それでは魔石は取れない。正攻法は根っこごと抜く。だったのだ。
しかし、どうやら魔石が根っこごと残ったリトル・グラスは一週間を掛けてその場で復活するらしい。
それならまだ残した意味はあったか……?とその時は溜飲を下げた。
また生えてくるのだったら取り放題だ。俺にとっては貴重な経験値源。有難い。
話を戻す。
それでまずは『
こいつは夕方から朝方にかけて出現する骸骨種の魔物、G級だ。ホーンラビットの死体がアンデット化して生まれることもあると書いてある。『こともある』と書いてある理由は恐らく、普通に湧く場合もあるからだろう。
その頭蓋骨から直接角が生えており、これを食らって怪我を負う冒険者が多いらしい。気を付けなければ。
そして結構夜目が効き、視力もいいそうだ。目がないのに……。
なので寄ってきやすいとの事。それも留意しなければなるまい。
この魔物の素早さは平均39らしい。結構素早いが……実体のあるホーンラビットの方が早いだろう。それなら昼間の冒険者達はどうやって倒していたのだろう。
そこまで考えた所でメモ書きが足された注釈を見つけた。
そこには、それは『
「グルリト草原に出現するこれは、主に1~12レベルの間」
それならば割と安心か……と息を吐いたのを覚えている。
弱点は打撃や火属性系統、光属性系統、日属性系統、聖属性系統だそう。
これらが俺が特に心に留めている情報だ。
そして『
こいつもグルリト草原に出現する魔物、F級。しかし、マーヤさんが言った通り深夜にしか出現しないと書かれていた。そしてスケルトンの上位種であるとも。
まあ上位種とは言っても、スケルトンがレベル5になった時に進化する一次進化先の一つらしい。
体は大きくなり、160センチ台の身長から170センチほどになる。夜目も効く。
そしてスケルトンとは持つ武器の質が変わってくる。
俺がスケルトンを見た時に持っていた、あのボロの剣ではなくしっかり頑丈な耐久性と鋭さを備えた剣を持つようになり、稀に防具も纏っているようだ。
そしてF級なだけあり、Lv.1でも人間のLv.6と同等の強さがあるという。人間は筋肉があるはず、それに対して筋肉がないスケルトンが何故そんなにも強いのかとても疑問である。いや、それ以前の問題か。ファンタジーってことで理解しておこう。
そして稀に【剣術】スキルを持っている個体もいるとの事である。
それだけでも今の俺には脅威と言える。
【剣術】スキルを持っていたとしても、回避しながら打撃を与えれば行けるか?
弱点は『
まあこんな所か。
ああ、それと一応俺が解放してしまった機能も確認した。
それは――店ごとの友好度・好感度機能の解放だった。
どうやらそれが上がり下がりすることによって、最悪出禁を食らったり、おまけしてもらう事があるようになるとか。あれ、でも俺パン屋でおまけしてもらったよな?
今更おかしいとは思ったが……恐らく元々友好度・好感度のような物は存在していて、それが解放という名目で公開されただけだろうと思う事にした。
俺は資料館の椅子から立ち上がり、本を戻しに棚に向かう。
するとどこからか冒険者の声が聞こえてきた。内容からしてプレイヤーだろう。
「受付のNPCから聞いたんだけどよ、明日から『冒険者講習』あるらしいぞ」
「えっ!?そんな話聞いたことないぞ?」
「お前掲示板見ないもんなー。でさ、
なんでも先輩冒険者が魔物討伐から冒険のノウハウまで教えてくれるらしい」
「それって無料なの」
「いや、10,000Rかかるらしい」
盗み聞きするつもりは無かったが、内容がすこぶる気になったので話を聞かせて貰った。
10,000Rで先輩冒険者から色々教えてもらえるとか、結構お得な話じゃないか?よし、これの為にお金を貯めよう。期限はいつまでだ?受付に聞いてみるか。
俺はそう思い、本は既に戻し終えていたのでその場を離れた。
「そうか。分かった。ありがとう」
「お気をつけていってらっしゃいませ」
受付嬢に話を聞いてみた結果、冒険者講習とやらは本当に10,000Rかかるとの事。
期限は今日から二週間後までらしい。
資料読んでる間に日にちを跨いだか。
そろそろ狩りに行ってもいいだろう。情報も頭に入れたし、食料も万全。水は……少し心許ないが草原の川で汲めばヨシ!
懸念点を考えながらNPCなどが主に少なくなった大通りを速足で駆ける。
心配なのは少し眠気が来ているという事。
残業に慣れているのでこのくらいならへっちゃらだが、少し瞼が重いというのは戦いにおいて致命的であると思う。かといって今の所対処法は全く浮かばないが。
街の東門に着いた。
やはり深夜だからか門は固く閉ざされている。
こういう場合はβ板に載っていたように、門を守っている衛兵に声を掛けて通してもらえばいいと。
俺は迷いなく衛兵に近付く。
「どうした?外に出たいのか?」
すると向こうの方から話しかけてきた。
おいおい、夜中に門に近付く不審者を殆ど警戒せず話しかけて良いのか衛兵よ。
でもまあ話が早くて助かるが。
「ああ、そうだ」
「わかった、ついて来い」
衛兵はそう言い、間隔を開けて隣にいた衛兵に声を掛けて歩き出す。
聞こえなかったが、一旦ここは頼む的なやり取りでもしたのだろうか。
俺は無言で衛兵の後を付いて歩く。
すると衛兵は門の横、つまり市壁の中にある詰め所の中に入っていった。
なるほど、詰め所を介して外に出るのか。
感心しながら俺も詰め所の中に入る。
中にいた衛兵が一斉に俺の事を見てくるが無視して、衛兵についていく。
市壁はそこまで厚さがなかったためか、直ぐ外に出れた。
「中に戻りたいときは、ここの扉を五回ノックするんだ。わかったな」
俺はインベントリから黄銅貨を一枚取り出して衛兵に渡す。チップである。
これ一枚で例の謎肉サンド一個買える。いや謎肉じゃなかった。兎肉だった。
「気持ちだ」
衛兵は受け取ると頷き仕事場に戻っていった。
さて、狩りである。
見渡す限り魔物が結構いるな。その殆どがアンデット、骸骨種だ。
冒険者らしき人も居るにはいるが、恐らく全員プレイヤー。
なぜなら、NPCは一度死んでしまえば終わり。それなのに魔物が活発になる夜に草原を出歩くわけがないと思う。
出歩いていたのならば、それは相当な強者か無謀者だな。
それにしても見渡す限りほぼほぼ骸骨だ。
それも骸骨兵士なんて見分けがつかない。
やっぱりこういう時こその鑑定だろう。対象を注視して鑑定を念じる。
骸骨、骸骨、骸骨、骸骨、骸骨兵士、骸骨……今、居ったな。
あれか。ここから見る限り少しの差しか分からない。
周りの骸骨より少し背が大きいか。加えてボロの剣とは違い、しっかり光を反射する程度には研がれた剣のようだ。
それになんというか……存在感?威圧感?オーラが少し違う。何となくだが。
骸骨兵士の周りに骸骨は二体。
流石に三体同時に相手はきつい。なのでどうにかして骸骨兵士だけの注意を惹かせればいいのだが……。
……石でも投げてみるか?いや、それで骸骨兵士だけが気付いたとしても、紐ずる式に他の骸骨が寄ってきたら終わりだ。それに俺がノーコンの可能性もある。
「むむ……」
確か骸骨は火属性が弱点。俺は【火魔法】を持っている……がレベルは0だ。瞬殺できる程の威力は無いと思う。
これは骸骨を斃しながら【火魔法】のレベルアップを図るべき……か。
よし、そう決めたら行動開始だ。
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