第16話 王の落とし物を、再び世に放て!
「王の落とし物」と呼ばれる、王が性欲の向くままに産み出された才能の原石たち。
彼らは、あるものは暗殺され、あるものは監視され、またあるものたちはこの牢の中に閉じ込められている。
「あの守りは堅いよ。元A級冒険者、スープのパセリの一員だった人だ。話のわかる人だったけど、なんでこんな仕事してるんだろう」
鎧の女、リリキアは岩陰から双眼鏡で観察している。
「金、なんですかね。あるいは国に脅されているとか」
俺がぼそっと呟くと、そうかもね、と気のない返事が返ってきた。
「まあいいや、あたし一回話してみるよ。彼のこと嫌いじゃないし。じゃね」
リリキアは鎧をガシャガシャ鳴らしながら、風のように駆けていった。
バスキアは、いかにも魔法使いと言わんばかりの黒い山高帽子を取り、髪を撫で付けた。
「スープのパセリ、か。守りよりも攻めのイメージがあったけどね。用心棒なんて柄じゃないわ。あたしたちがまだ駆け出しの頃は、幾つもの高難易度ミッションをどんどん攻略していてカッコよかったのにね」
「スープのパセリは解散したんですか?」
「ええ、リーダーのドラゴニーの魔法が暴走して、仲間が総出でドラゴニーを殺してしまった。ドラゴニーの魔法は竜に変身する魔法だったから、あのまま暴走してたら幾つもの街が消えてなくなっていたでしょうから、仕方ないのだけれど、やるせないわよね」
バスキアは懐かしむように言った。
「強すぎる力は、ない方が幸せなのよ。私くらいのが丁度いい。スノゥちゃんは大変よ。あんた、本当に腹を括りなさい。それこそ、魔王にでもなる覚悟が必要なのよ」
スノゥを見る。
なにやらストゥーシアと話をして、地面に地図のようなものを書いている。
強すぎる力、か。
あの炎魔がどの程度の脅威なのかは、正直わからない。
だが、鉄も溶かすしデーモンも丸焦げにする高エネルギー体を生み出すのだ。
並の魔法ではない。
彼女を狙うものも、並のものではないだろう。国家が気合を入れて殺しにくるのだ。
そして、難儀なことに彼女には人を殺めたり、傷つけてほしくないとも思っている。
「変わりに、俺が、か」
両手を見る。
彼女を守りきるということは、この手が真っ赤に染まるということだ。
お腹が痛くなってきた。
はぁ、スノゥが嫌なやつだったら良かったのに。
「しょうがないなぁ」
「魔王になりなさい、の返事がそれなわけ?」
バスキアは、らしくなくケラケラと笑った。
笑顔はいつもの妖艶さがなく、年頃の少女のように可愛らしかった。
「バスキアもさ、いつでもコスタ・デル・ソル来ていいから。二人専用の部屋作っておくからね。その笑顔が出せる場所をつくるよ」
「なにそれ。お父さんみたい。知らないけど」
リリキアがガシャガシャと音を立てて帰ってきた。
「みんなお待たせ。とりあえず、門番の件は解決した」
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