第17話 門番のため息
スープのパセリ。
元A級冒険者パーティーだ。
漆黒の亀のダンジョン踏破、天空馬の襲来撃破など、その功績は枚挙にいとまがない。
そのパーティーの前衛を担っていたドワーフ族の男が地下牢に続く門の前に座っている。
座っているといったが、丸椅子にティーセットを並べて紅茶を飲んでいる。
ドワーフと言ったら酒、のイメージがあったが任務中だからだろうか。
紅茶のいい香りが漂っている。
「リリキアさん、話つけたんじゃなかったんですか?なんでコソコソ隠れてるんですか?」
リリキアは建物の陰から目を離さずに小声で囁くように言った。
「彼にも面子があるからよ。彼は、ずっと私達みたいな王の落とし物を救う人を待ってたみたいなの。でも、救うにしても半端な面子じゃ追手に殺されてしまう。だから、相応の人が来るまで待ってるんだって言ってた。因みに私とバスキアのレベルで最低限って言ってた。スノゥちゃんと、あんたを加味してもらって判断してもらおうと思って。スノゥちゃん、炎魔出せる?」
スノゥはこくりと頷き、炎魔を百体だした。
「え?」
バスキアとリリキア、ステューシアは隠れていることを忘れたように驚きの声をあげた。
俺も驚いている。
大変驚いている。
「え?スノゥ、こんなことできるの?」
スノゥは、ん?とこちらを見る。
「前も見せたじゃん。出会ってすぐのころ、沢山の炎魔のダンス見せたでしょ」
いや、あれは小人程度の炎が沢山踊っていたけれど、それとこれとは、、、
よく思い出す。
あの小人、そういえば全部炎の色が違ったような。。。
「スノゥ、この方々も色変えられるの?」
「欲しがりさんだね、まったく」
スノゥは、やれやれと俺の口癖を真似て、様々な色の炎を炎魔の横に出すと、皆わらわらと炎を食べ色を変えた。
ドワーフはこちらをみて、たくさんのカップに紅茶を注いだ。
「降参する!ティータイムにしよう。下の子達も連れてきてくれ、甘い茶菓子の用意があるんじゃ!」
○
ドワーフは名前を、ブリと名乗った。
前衛でハンマー使い。ハンマーは金槌くらいの小さなサイズだが、オリハルコン製だそうだ。
ブリは、ガハハと笑って王の落とし物達に茶菓子を振る舞っている。
「良かったなお前ら、良かった。こいつらが守ってくれるってよ!いやぁ、良かった」
ステューシアは、茶菓子を口いっぱいに頬張り、涙を浮かべている。
他の王の落とし物達も、困惑しながら紅茶を口にし、涙を流していた。
「そういえば、最近は餓死者も出ないし、牢屋も少し暖かかったです」
「ああ、すぐに助けてやれずにすまなんだ。世話係をドヤして飯を倍にしたり、焚き火の熱を送ったり、バレない程度に支えてたつもりなんだが、やはり苦しみからは解放させられなんだ。本当にすまなかった」
ブリはガバッと頭を下げた。
「にしても、ブリさんが敵わない相手がここに居たんですか?」
「いる。特に王だな。ありゃ、敵わん。ドラゴニーが生きてても駄目だろうな。王以外にも、親衛隊は皆化け物じゃ。A級の上澄みみたいなやつがチラホラいる。ほら、わしは戦闘向きじゃあないしな。こういう機会をまっとった。死に場所探し、じゃな」
ブリは金槌をクルクルと回す。
「斧がありゃあな。少しは闘えるんじゃが、壊れてな。今は金槌しかない」
俺は担いでいるリュックからデーモンの斧を取り出した。
「あげます」
「こりゃあ、あれか。デーモンの斧か」
「ええ」
ブリは驚きを隠さずに、斧を隅から隅まで眺める。
「自動修復、防御力超向上、反動抑制、すごい機能じゃな。美しい。いやでも、研ぎは甘いし、魔法付加も空欄だらけじゃ、勿体ない。しかしこれは、、、」
小声でぶつぶつと呟く。美しい、と短時間で何度も口にしている。
「くれるのか」
はい、と言うと、わけわからん、と言いながらもブリは受け取った。
「これ研ぐまでは死ねんわい」
いいえ、死にます
リリキアの鎧が大きく凹んだ。
「グゥッ」
リリキアが苦しそうに倒れる。
バスキアが口を開こうとするも、声が出ない。パクパクと口を動かすが、魔法は発動しない。
炎魔の集団が俺達を護るように円上に現れた。
ドーム
半透明の超硬質のドームを展開する。
息を吸う。
なんだ、何が起こった。
リリキアを見る。ゼェゼェと息をしているが、目は戦闘態勢だ。
スノゥはピッタリと俺にくっつき、炎魔の小人を次々に生み出し、周りに並べ続けている。
リリキアの鎧の凹みが治ってくる。
拳の跡が現れた。
鎧の腹部に、拳の跡がくっきりついている。
「警戒!敵は近接戦闘だ。リリキア、鎧を脱ぐんだ」
俺は必死に叫ぶ。
リリキアが急いで鎧を脱ぐと、次の瞬間鎧はペシャンコに潰れた。
「中にいる」
敵は、このドームの中にいる。
が、見えない。
姿を隠している。
音もなく、強力な打撃を放ってくる。
音もなく?
ああ、敵は音を消す魔法を持っているのか。
だからバスキアの睡眠魔法も発動しないし、鎧が凹む音も、誰かが攻撃を受ける音もしないのだ。
それならば
地面に手をつき、錬金術を発動した。
炭素を大量に撒き散らした即席の煙幕だ。
音を消すなら、視界か嗅覚でこちらを確認するはず。炭の匂いと粉で一度それを低減させる。
さて、どこから
風圧を感じた。
顔の右頬に迫り来る風。
死ぬ
圧倒的死の意識に目の前が真っ暗になった。
「あっつ、ぐっ、ぃっ、いでぇ」
目の前に黒い服を着た男が転げ回っている。
右腕を左手で押さえている。
がぁぁ、声にならない悲鳴をあげながら、腕を振り回している。
あ。
彼の拳から肘にかけて、人型の穴が開いていた。
彼は俺を殴ろうとして、スノゥの小人炎魔が守ってくれたのだろう。
両手両足を広げたような人型の穴が、彼の拳から膝を焼き切ったのだ。
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