第10話 Aランクパーティーの実力

結局、「豚の尻尾」は依頼を引き受けずに帰っていった。

「まあ確かに、デーモン1000体に囲まれるってこともなくはないのか。この戦場。とんでもないところに来てしまった」

ぽつりと漏らすと、スノゥも震え上がる。

「あれが1000体いたら、国滅びる、、、」


マスタード大尉に、これまでどのような敵が居たか聞きにいくと

「最高位はデュラハンだ。こちらは部隊を二つ壊滅させられた。なんとか倒せたがな。次いでデーモン、ワイドキング、オークキングが居たな。ワイドキングは、相性のいい兵がいて奇跡的に被害を抑えて倒せた」


「そんなに、、、デュラハンを倒しても敵が攻め続けてきているということは、、、」


大尉は深くため息をつく。

「居るだろうな。より上位の魔獣や魔物が。闇の眷属が多いから、ドラキュラやアンデッドドラゴンあたりが想定される」


頭が痛くなる。

敵想定数量は35万。そのうち1%が上位種で計算しても3500体だ。

冗談で言っていたデーモン千体だって、現実味を帯びてきてしまう。


「国が滅びるレベルの進行だ。中央はなぜ援軍を出さないのですか?」

理解に苦しむ。ここを突破されたら何百万の人民の命が危険に晒されるというのに、わずか7000人の兵で対処などできるはずがない。


「中央は王国の周囲だけ鉄壁の防護体制を構築中だ。我々への命令はこうだ。『体制が整うまで一秒でも長く時を稼げ』。つまり、死ねと言われてるわけだ」


腐りすぎだろう。

ダメだこの国は。


「大尉はなぜ、お逃げにならないのです」


大尉は東の方角を指差した。


「この先に、俺の故郷がある。妹がいる。友達がいる。死なせたくない。それだけだ」



叫ぶように、部屋に兵が走り込んできた。

「大尉!敵、進行を開始しました。オークの群れ、概算数量3万。ご指示を!」

表に出ると、遠くに土煙が立ち昇っている。

目を凝らす。

地面そのものが動いているようだった。

オークの大群が、一塊になってこちらへ向かってきている。


大尉は声を張り上げる。

「弓矢隊は、陣形を組んで射撃用意!矢をありったけ用意しろ。油を含ませ火矢にするのだ!水魔法を使える魔術師は、堀に水をはれ!急げ!」


突破されるまでは弓矢で牽制。踏み込まれたら剣で戦う。そういう戦略らしい。


「大尉、他に遠距離攻撃の手段はないのですか?」


「主力の魔術師部隊は中央に召集されたからな。ここにいるのは殆どが一般兵だ。今までは5人一組でゴブリン一匹を丁寧に対応して、持ち堪えてきた。だが、今回は、、、」


そう、オークだ。

一般兵五人がかり立ち向かっても、仲間の誰かしらは死ぬ。そういう相手だ。

3メートルを超える巨体に、人より大きな棍棒。一発でも当たると即死だ。

ゴブリンとは違う。

そんなオークが眼前に絨毯のように広がっている。


「できる限り数を減らします」


敵がよく見える広場へ向かった。

「タック、どうするの」

「ボーリング大会だ!」

地面に手をつく。

意識を集中する。

「カタストロフ!!!」


堀の向こうに、高さ20mの滑り台のような、巨大なレールをつくる。

全部で12台。放射状に伸ばす。

ボーリング場で子供が使う台座の超巨大版だ。

台座に球体の岩を山盛りに生成し、それを次々に転がした。


ゴロゴロゴロゴロ

ドドドドドドドド

「ギャー!!ギャー!!」

巨石群が雪崩のように転がり、オーク達を押し潰していく。

赤い絨毯の出来上がりだ。


「オエッ、オエーっ」

膝をつき、嘔吐する。スノゥが背中をさすってくれる。

「タック、少し休んで」

「ハァハァ、オェー。ま、まだまだ。球の補充だ。カタストロフ!!!」



「「そこまでだ」」

寒気。首筋にナイフを当てられるような寒気。冷や汗がブワッと吹き出す。

デーモン等が俺とスノゥを取り囲んでいる。

ひぃ、ふぅ、みぃ、、、12体。

絶体絶命か、、、

スノゥは目から涙がとめどなく流れている。


なんで毎回気配がないんだよ。

「くそったれ!」

ドームを展開する。

最高硬度の合金を何層にも重ね、内側にラーメン構造を作り、打撃に強くする。


バリーン


速攻で割られた。

デーモン達の手元には、斧。斧。斧。

みんな仲良く斧持ってやがる。

くそ、諦めてたまるか


再度ドームを作る。


パリーン


速攻で壊された。


正面のデーモンが、やれやれといった口で近づいてきた。

「いいかげん眠れ」



「おまえたちがな」


デーモン達が一瞬で倒れ込み昏睡する。


「間に合った?」


とんがり黒帽子を被ったダイナマイトセクシーボディの美女と、全身鎧に包まれた男?の二人が立っている。


「ハァハァ、た、助かりました。オエっ、オエエエェ」

力を使いすぎた。

苦しい。呼吸が出来ない。


あらやだ、と一歩後ろに下がる美女と、大丈夫かな?と一歩近づく鎧の人。


美女がスノゥに声をかける。

「お嬢ちゃんがチームのリーダーね?」

スノゥはフルフルと首を振る。

「あら、実力順じゃないわけね」

とあっけらかんに言う。


息を整え、吐きそうになりながら聞く。

「あの、貴方がたは?」


鎧の人がポケットから木の板を出し、渡してきた。名刺のようなもののようだ。


Aランクパーティー 「玉ねぎの根」と書いてある。

詳しくない俺でもわかる。南方で活躍する冒険者だ。皆口を揃えて言う。


玉ねぎの根に、「負け」はない と


「デーモンの斧は入手が難しい。でも、一度に13個も手に入るとはね。驚いたよ。ちょっと待ってて、トドメを刺してくるよ」


鎧の人の声が高い。女性のようだ。


一体ずつ、斧を手から離し、短刀で首やら腕やらをバラバラと切り取っていく。

12体の身体をバラバラにし、布袋に詰めた。


「デーモンの皮膚は本の表紙として好まれる。貰っていくよ」


二人はスタスタと歩き、離れていった。


どういうカラクリだ。

あのデーモンたち、腕を切られても足を切られても目を覚まさなかった。

最後の最後、首を切られても、声ひとつあげずに寝たままだった。


これがAランク。

俺はまた世界の広さを知った。


⬛︎⬛︎⬛︎

おばんです!作者の相楽 快です。

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