第3話 初日からハプニング!?

 地獄暦1月

 目を開いたそこは、マグマの中だった。…………マグマの中だった!?

 体が焼けるような熱さに思わずブクブクと口から空気を零す。

 だめだ!このままじゃ沈む!

 なんとか正気を保つと、その気合いを力に変えて、なんとか上へと昇っていく。なんだよこの状況!!座標がランダムったって、これはないだろ!?

 気絶する!本気で覚悟しながらも、どうにかして水面(マグマ面?)から顔を出す。大きく息を吸い込むと、体の緊張が解放されるのを直感した。生を実感した。

 しかし、直後恐るべき事態に気づいてしまった。

「いやまてよ、ちょっと待て。地上……見えなく無いか?」

 どうやら、ランダム転移の弊害はここまで大きいようだった


「おぉ!遅かったなぁミトモ!」私の名前を呼ぶ声が聞こえる。

「お前らもう着いてたのか……?」

 約3日間、飲まず食わずでマグマを泳ぎ続けてようやく地上へ上陸したあとも、地獄の住人を頼りながらも約5日間程かけて、地獄小隊員と合流した……が……

「久しぶりー!これ美味いよー食う?」めっちゃ馴染んでた……俺がいない間に、めっっっちゃ馴染んでた……

「なぁミカエル。お前が陽キャなのは知ってたけどさ、3日くらいでそんなに馴染めるものなのか?」

 私がそう聞くと、ミカエルは首を横に振ってこう言った。

「3日?えーとね、大体8日くらいはいたからそりゃあ馴染めるよ」うん、なるほど、こいつ動いてないな。

 顔に出ていたのか、ミカエルは不満を顕にした表情をする。

「なんだよその『俺頑張って動いたんだからお前も動けよ』的な目!いいだろ!?ここ、地獄の首都的な立ち位置らしいし」

「そうだけど……なんか私が8日間必死になって移動してた時間、トレーニングに当てられたなぁなんて思うと……」

 私なりの本音を伝えると「うーわ脳筋」とかほざいたので1発殴ってからその場を離れた。


 昼をすぎると、休憩のために他のメンバーも集まってきた。

「久しぶり!」なんて言葉を交わし合いながら面子を見ていると、1人見たこともない奴がいた。

「お、こいつも地獄小隊?とかいう奴なの?」

 なるほど、地獄の住人のようだ。いや、まぁ私もなのだけど……

「はい!地獄小隊所属、ミトモ・ヨリシロです!」

「ミトモ、ねぇ。よろしくな、ミトモ!俺はゴズ・フレイムだ」

 なんとも厨二的な名前、それとも文化の違いなのか?とか顔に出そうなのを抑えて、よろしくとだけ返した。

「あれ?ゴズちゃん他メンの自己紹介されたっけ?」

 ミカエルこいつ……ゴズちゃん……しかもこいつ怒らせたら怖そうだぞ。

「聞いてねぇけど聞く必要あるか?」

「いや。まぁゴズちゃんの気が向いたときでいいよ」


「だから、ハヤト・ロイド隊長はロイド家の中でも戦術に長けていて!!!」

「始まったよ、ミトモの隊長自慢」

 私にとって、地獄小隊1の友人、キリエ・シヴァが笑いながら私の話の邪魔をする。

「あんたら、仲良いのな」

 ゴズは意外だ、とでも言いたげな様子で語りかける。

「失礼ですね。私にも友達はいますよ?」

「え?ほんとに?」キリエてめぇ。

「キリエ?喧嘩したいの?」

「お?やるか?俺が100-0で負けるだけだぞ?」

「ダメじゃねえかよ」

 ゴズもガハハと笑いながらツッコミをいれる。

 意外とこの地獄もいい環境なのか?

「あ、ところで私マグマから泳いできたんですけど……」

「は?あそこから泳ぐとか正気じゃねえだろ」

 え?

「いやちょっと待って下さい、あれぐらい熱くてしんどいだけでは?」

「は!?それがしんどいんだろ?辛くてたまんねぇから諦めて沈む方がいいだろ?」

 え?

「……と、とりあえず私そろそろトレーニングがしたいんですけど」

「は?今は休憩中だぞ」

 え?

「きゅ、休憩!?そんなの地獄小隊にはなかったですよ!?」


 どうやら、ここは思ったよりも怠けた空間なのかもしれない。

 それをゴズに伝えると「それはお前がおかしいだろ」と伝えられた。そんなわけないだろ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る