魔法少女だよ☆全員集合〜
第8話 魔法少女inベッドタイム。秘密のお話
まどろみの中で重いまぶたを開けると、見知らぬ天井が視界に入った。
いつもの部屋とは違う、豪華な装飾が施された天井だった。ベッドの柔らかさに身を沈めながら、周囲の様子を確認する。
どこだここ?
頭がまだぼんやりしていて、ここがどこなのか思い出せない。知らない部屋で目覚めたことに、軽いパニックを感じ始めたその時だった。
「一条目が覚めたって…きゃあ!!なんで裸なのっ?」
突然扉からひまりが現れて俺の姿を見るなり悲鳴を上げ、そのまま扉は勢いよく閉められた。
この数秒間の間に何が起きたのか理解できないまま、俺は無意識に両手で胸と下半身を隠した。
「なんじゃこりゃあああ!?」
生まれたままの姿、服は剝ぎ取られたようにすっぽんぽんになった自分の姿に思わず叫ぶ。
大慌てでベッドのシーツを手繰り寄せ、とりあえず体を隠したがどうしてこんなことになってしまったのかは全く見当がつかなかった。
一通り記憶を振り返ってみても自分が裸になっている理由が分からない。
そっと体に触れてみるが痛みも違和感もないことに少し安心したものの、どこか落ち着かない自分にため息を吐きながら記憶の断片を必死で手繰り寄せる。
魔法少女かくれんぼとか意味わからないのに巻き込まれて……ジェットコースターでチェンソー魔法少女を仕留めて……そして?それからどうなったんだ?
考えを巡らしていると扉が勢いよく開き、片手で自分の目を覆い隠したひまりが顔を真っ赤にしながら服を投げてきた。
それを慌ててキャッチする。
「その…服がその場にないのなら、これ着て。ひまりの部屋にあったから、じゃあそういうことで」
早口で言い終わると、彼女は勢いよく扉を閉めた。
状況整理ができず何が何だか、俺がどこにいるのかすらよくわからないが、とりあえずひまりは無事らしいという現状だけはわかり安堵のため息を吐く。
「まあ着替えるか…」
俺は投げつけられた服を広げるも、かなり想定外の服で流石に動揺を隠せず目を点にする。
その服とは……メイド服だった。しかもただのメイドじゃない。
胸元がざっくりと開いたデザインの黒を基調としたロング丈のクラシカルなメイド服で、スカート部分はレースがふんだんにあしらわれたふんわりとしたボリュームのあるフリル仕様になっているという代物だった。
「いやっ着れるかぁ!!」
思わず全力でメイド服を床に叩きつけた。その衝撃でスカートのフリルがふわりと宙を舞う。
この服、着れるわけねぇだろ!
なんでよりによってこんなフリッフリで可愛い服なんだよ!?
いくらなんでも人間としての尊厳をゴリゴリに削ったニートである俺でも、さすがに男の尊厳まで捨てる覚悟は流石にないぞ。
それとも何か?
ひまりはニートの俺にはもう男としての尊厳すら残ってないと思ってるのか?
俺は床に落ちたメイド服を再び拾い上げ、まじまじと見つめる。そしてため息を吐きつつそのメイド服を畳んでいく。
「せっかく用意してくれた物をぞんざいに扱っては行けないよな」
「やはりニートハ社会のゴミのくせにプライドだけは一丁前というデータは本当のようネ」
「なっ!お前いつからここに?」
視線を上げるといつの間にかチャイナ水着魔法少女が部屋の入り口に立ち、ニヤニヤ笑いながら俺のことを見つめていた。
相変わらず胸元が大胆に開いた谷間の見える水色の水着に透けたチャイナ服風ドレスという露出度の高い格好をしたままで、正直目のやり場に困る。
特にそれが14歳くらいの年頃の女がしているというのを考えると、特に目に毒だ。
俺も流石にこの歳で犯罪者になるわけにはいかない。
「お前がメイド服に悩んでるところからヨ。中々笑えたネ」
「そんなことのためにテレポートするなんてなかなか趣味悪いな」
「あぁ?」
彼女は平たい胸を懸命にパッドを詰め込んだ水着を揺らしながら俺の前まで来ると、俺が手にしているメイド服を奪い取り、それを俺に突きつけた。
そして一言だけ呟いた。
「お前のためじゃない、よこの女のためネ」
「横の女って……うぉおお!!」
チャイナ服魔法少女の視線を追って、横を見ると布団の塊が微かに上下しているのに気がつく。恐る恐る布団をめくり上げると、そこには一糸まとわぬ姿のまま眠るチェンソー魔法少女の姿があった。
ミルクのような柔らかくてなめらかな白い肌でありながら、そのボディラインは年齢の平均値を軽く凌駕し、緩やかなカーブを描いた肩に布団の隙間からチラつく太ももの付け根や背中が目に毒だ。
その肌に触れればきっと吸い付くようにしっとりとして柔らかいに違いない。
俺は思わず生唾をごくりと飲み込みながらも布団をゆっくりと被せた。
そしてチャイナ服魔法少女の両肩を掴み、激しく揺さぶる。
「なんでこいつがここにいるんだよ!!」
「仕方ないネ、こいつの治療をした後連れていく場所もないしお前の部屋が一番もってこいだったアルよ」
「だからって服着せろよぉ……何かあったらどうすんだよっ」
「何もあるはずがないネ。なんかあったらまゆりりんは今も魔法少女でいられないネ」
チャイナ服魔法少女は、やれやれとため息を吐くと俺の手を振り払い、チェンソー魔法少女の体を揺すった。
乱れた髪で体を隠した彼女は胎児のように丸くなりながら寝息を立てている。
そのあまりにも無防備な姿に思わずため息が出る。
「それどういう意味だよ?」
「そのままの意味ネ。処女をなくしたら魔法少女は魔法少女でいれなくなる。そんなことより、こいつ起こすの無理ネ。起こすのは任せたアル。服はそのメイド服でも着せとけ」
「いや俺の服は?」
「ベッドの下に服はあるネ。手を煩わせるな。それじゃ!」
「っておい待て!」
そう言い残すと彼女はテレポートで部屋を後にし、彼女を引き留めようと伸ばした俺の手が情けなく空を切った。
さて、面倒なことになった。心の中でチャイナ水着魔法少女を恨みつつベッドの下を覗くと確かに俺の服が畳んで置かれていた。
そしてちらりと目を横にやるとチャイナ水着魔法少女が置いていったメイド服も見えた。
「マジでこれ俺が着せるのかよ……おい、起きろよ。ほんとは寝たふりなんだろ?起きろって」
よだれを垂らしながらスヤスヤと寝息を立てるチェンソー魔法少女の肩を強く揺さぶるも、彼女は反応しない。それどころかよだれが下に垂れそうになり俺は慌てて袖で拭った。
「本当に俺が着せないといけないのか?」
チェンソー魔法少女は俺に背を向けた状態で寝ているので、形のいい赤子のようなの尻が俺に向かって突き出される形になり思わず目を逸らし眉間を押さえた。
しかしこの様子だと起きる様子もない訳だが、このまま残すのは流石に気が引ける。
仕方ない……。
俺は深くため息を吐くと覚悟を決めた。
「見ずに着せるからな。絶対に見ないからな」
恐る恐るひまりのくれたメイド服を掴み広げ、そして彼女の肩を掴んで仰向けにする。
チェンソー魔法少女の裸体が視界に入り、思わず俺は目を瞑った。
しかし、見ないようにするにもその体と密着しなければならず、どうしても柔らかな肌や女性特有の甘いような優しい匂いを感じてしまう。
メイド服の背中のジッパーを見つけ、ゆっくりと腕を通させていく。
俺は今とんでもないことをしているような気がするが、これは仕方ないことだと自分に言い聞かせた。
心を無心に、瞳を閉じて。無心に……。
「なに……してん…の変態かな」
不意にチェンソー魔法少女の声が聞こえた。一瞬思考回路が止まり、全身の筋肉が硬直する。
俺はゆっくりと目を開くと、彼女は眠たそうな目で俺の姿を眺めていた。
「起きてたのか?」
「いまおきた……もん」
すると彼女は寝返りを打ちながら舌足らずな声で反論した。
何やってんだ俺?マジでなにやってんの?
例え、チャイナ水着魔法少女に唆させれたとしても、俺は一体何を血迷ってんだ?
しかもそれがまた可愛らしい年相応の声だったから余計にムカついた。
とりあえず言い訳をしようと口を開いた。
しかし俺が言葉を発する前に彼女のほうが先に沈黙を破った。
「どうせ……うぃっちゅくらふちゅに唆されたか何かでしょ?ふぁぁ」とあくび混じりに言う。
「まあそんな感じ」
「どうでもいいけど、服……頂戴」
俺が手に掴んでいたメイド服を渡すと、彼女はのそのそとした動きで起き上がりそれを羽織った。
馬鹿らしくなった俺は、ベッドの下から畳まれた俺の服を取り出し着ることにした。
「まゆりりんとやら着替えたか?」
「……ん」
「じゃあ振り返っていいな……って着替えてないじゃないんかい!このお決まりの流れをやるか普通?」
メイド服のチャックを閉めず背中が開いたまま、項垂れるチェンソー魔法少女が目に入り俺は思わず突っ込む。
俺はため息を吐きつつ頭をかき、チェンソー魔法少女の背後に回りチャックに手をかける。
「いいかチャック閉めるからな」
すると彼女が咄嗟に俺の手を掴んだので思わずビクッとする。
驚いて顔を上げるとチェンソー魔法少女は恥ずかしそうに頬を赤らめながら俺を見つめていた。
「ゆっくりやって」
その潤んだ瞳と恥じらいの表情に、俺は思わず生唾をゴクリと飲み込む。
そして自分に言い聞かせた。
こいつはチェンソー魔法少女だ。
俺の腹にチェンソーを突きつけて、俺の腹の中をかき回した凶暴な女だ。
俺は彼女の指示に従いゆっくりとチャックを閉じていくと、途中指先が肌を掠めチェンソー魔法少女はびくんと肩を震わす。その度俺の鼓動も激しくなるのを感じた。
「閉めたぞ」
「ああご苦労。もう下がって良いぞ」
「あっ、はいわかりました……じゃなくて態度激変すぎだろ」
チェンソー魔法少女は清々しい笑顔で伸びをしてから肩を軽く回し、呟いた。
「そうか?服をきちんと着ると性格が変わっちゃうのかもなあ。さて服を着替えたのなら、ロビーに行こうか」
「ロビー?なんの話だ。チャイナ水着魔法少女は何も言ってなかったぞ」
「あいつは余計なことだけ言って核心は言わないやつだからな」
そう言ってチェンソー魔法少女は立ち上がると、俺の腕を摑む。
「さぁ行こうか?」
首を傾けながら悪戯っぽく微笑むチェンソー魔法少女の笑顔に、何故か俺はドキリとした。
先ほど俺はその柔らかくはにかむ彼女の唇に口づけをしたというのに彼女はまるでそのことを覚えていないかのように無垢な表情で微笑んでいた。
彼女の笑顔に隠された真意がわからない。果たして彼女は本当にキスを忘れたのか、それともあえて触れずにいるのか。
自分の中に生じるざわめきを押し殺しながら、俺は微笑み返した。
「ああそうだな。行こう」
俺は短く返事をし、立ち上がる。お前がその気なら俺もその笑顔に潜まれた凶暴な本性に気づかないフリをしてやらんでもない。
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次回は第9話「魔法少女もプレイヤーも集合☆本当のですげぇむの始まりだよ」
です。
お楽しみに。
魔法少女10人とFPSプレイヤー999人戦わせたらどっちが生き残る?〜コメントで投票が多かった方が勝つかもね〜 酒都レン @cakeren
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