第5話 水着×チェンソーはなーんだぁ?答えは魔法少女☆

「ねおんさんっ伏せろッ」


「え?」


 俺が叫ぶも時すでに遅く、シスター魔法少女はねおんさんの背後に立ち両手を高くあげる。


 無理だ、ねおんさんが避けられるわけがない。もう諦めるしかないのか?


 彼女の手が振り下ろされる瞬間が妙にスローモーションに見えた。


 くそっ……ダメだっ、と俺が顔を背けた瞬間だった。


 ガキンっと甲高い金属音が俺の真横で響き渡る。俺はそのありえない光景に思わず目を奪われる。シスター魔法少女はねおんさんの目の前で両手をクロスさせガードしていた。


 そして彼女の目の前には、血塗られたチェンソーを持った紫髪の女の子が立っていた。


 まるで殺人鬼のような風貌をしたその少女は、シスターを睨みつける。


「忘れたのか?まだ私たちは人間を殺してはいけないのだぞ」


「あらぁもちろん忘れてませんよぅ。ししゅたーくろは殺そうとしていたのではありません。こうしようとしていたのです」


 シスター魔法少女はそう言うとねおんさんの肩を抱きつき、彼の頬にキスをする。


「なっ!」


 戸惑うチェンソー魔法少女。


 対して、俺はそのありえない光景に開いた口が塞がらない。


 なんだこの急展開は……と俺が呆然としているとシスター魔法少女は俺にウィンクをする。


「ししゅたーくろはねおん様に捕獲されたいですぅ。だめですか?」


 さっきからあり得ない光景が多すぎて俺の頭が追い付かない。


 ピンク髪は金魚のように口をパクパクさせて震えた体でキョロキョロと見回し、俺に助けてとでも言いたいのか視線を送ってくる。


 俺は仏の如き顔で肯き口パクで「諦めろ」とだけ答えた。


「ししゅたーくろはねおん様に捕獲されたいですぅ。だめですか?」


「い、いやぁししゅたーくろちゃん?かわいいなぁ……も、もちろんダメじゃないよ。捕獲しちゃうぞ…あはは」


 顔を引きつらせながら、シスター魔法少女の頭を撫でるピンク髪は口ではそう言うも俺に向かって必死に視線を送るが、俺はもう知らんとそっぽを向く。


 置いてけぼりを喰らっているのは俺たちだけではなく、チェンソー魔法少女も同じのようでせっかくカッコつけて出てきたのにもかかわらず、結局どうしたらいいのかわからずおどおどしている。


「それより問題はあなたですよ。きらーまゆりりりん」


「なに?」


 抱きつかれたまま動かないシスター魔法少女は、相変わらずのおっとりとした口調で物をいい俺たちの方をじろりと見る。


「あなた、私の殺傷を防ぐためにプレイヤーたちの目の前に出たのですよ。でも、私が超人的能力を持っているのに対してあなたは体力事態は普通の少女。どうやってこの場から逃げるのです?」


 彼女のいう通りだ。今この場には大の大人が俺含めて3人に対し、か細い体の魔法少女が1人。 例え彼女がチェンソーを振り回したとしても、俺たちが彼女の周りを囲んで距離を詰めていけばすぐに捕獲はできる。


 少なくとも俺はそう思っていた。


「馬鹿だな、ししゅたーくろ。なにも策を持たずにこんなところに来るわけがないだろう」


 チェンソー魔法少女はニヤリと不敵に微笑むと、チェンソーのスターターロープを引っ張る。


 エンジンの音が唸りをあげ始め刃が回転を始め、刃が熱を帯び始めた。





「来い。うぃっちぃくらふちゅ」





 チェンソー魔法少女が呟いた瞬間、彼女の背後から突如として光の渦が現れ、その中からチャイナ服風水着を着た少女が姿を現す。


「呼びでて飛び出てちゃんちゃかチャーンネ」


「…瞬間移動もできんのかよ?」


 俺たちはあまりの急展開に驚愕し、その場に立ち尽くす。そんな俺たちをみてチェンソー魔法少女は笑う。


「ご名答。ういっちゅくらふちゅはワープ能力を持っている。彼女がいる限り捕まることはない」


「だからと言って酷使されるのも困るネ、馬鹿カ?」


 チャイナ水着魔法少女は、そう言ってチェンソー魔法少女の頬をつねりあげる。


「3人とも、二人が瞬間移動する前に彼女たちを捕まえるぞっ!」


 俺は咄嗟に叫ぶ。その声を合図にアウトロとまひるが一斉にういっちゅくらふちゅに向かって走り出す。


 チャイナ水着魔法少女は俺を一瞥してからチェンソー魔法少女の方を向き手をつなぎすぐにワープしようとするがもう遅い。


「いただいたっ」


 ひまりがそう叫ぶと、跳躍しういっちゅくらふちゅの顎に頭突きをかます。バランスを崩した彼女はその場で倒れ込みワープが中断される。


「ういっちゅくらふちゅは僕がやる」


 その隙にアウトロが背後からチャイナ水着魔法少女を捕まえようと飛び上がる。しかし、その行動が裏目にでた。


「キモいっ」


 振り返ったチェンソー魔法少女が、アウトロを一瞥し言葉を吐き、両手を空に向けると刃が再び回転を始めはじめる。


 そしてそれをブーメランのようにアウトロに向かって投げつけた。


「アウトロ危ないっ!!」


「一条」


 俺は咄嗟にアウトロを庇う。


 刃は回転したまま俺の腹部に突き刺さり、そのまま切り裂き腹からどくどくと血が噴き出していく。パァンと風船が破裂するような音と共にチェンソー魔法少女は不敵に笑う。


「うぐっああああ……俺の腹がァ!!」


「安心しろ、死ぬことはない。さて、十分時間は稼いだぞ。今のうちに!」


「わかってるネ」


 チェンソー魔法少女がそう叫ぶと、チャイナ水着魔法少女が彼女の手を握り詠唱を始める。


「そこのひまりとやら、銃を貸せ」


「え?なんで?」


「いいから貸せッ」


 よく理解していないながらもひまりは、銃をアウトロに投げ渡す。


「おい一条、その腹部に刺さったチェンソーから手を離すな!その隙にチェンソー女を僕が撃つ。助けてくれた恩だ、一撃で仕留めよう」


 チャイナ水着魔法少女に焦点を合わせ、引き金に指をかけたアウトロは不敵に笑いながら静かに息を吸う。


 俺は一瞬、彼の言っている意味がわからなかったがすぐにその意図を汲み取り頷く。確かに、俺の腹部からチェンソーが抜けず彼女たちが身動きが取れないのもまた事実だった。


 無茶言ってるが、このオリンピックに呼ばれている以上この少女を撃ち抜く程度の技術はあると見込むしかない。


「…はぁはぁ。無茶言うわな…ぐっ」


 俺は腹部に突き刺さったチェンソーの歯を掴み、力を込める。肉が焼けるような音と共に血がとめどなく流れ激痛が走る。

 だが、瞬間移動を防ぐ以上こちらから俺は手を離すわけにはいかない。


「外すなよっ……そしてひまりも今こいつに触れて捕まえるんだ」


「でもそしたら一条の体が」


「躊躇するな。されたら……はぁ逆に俺が死ぬ」


 ひまりの心配する声に、俺はそう答えチェンソー魔法少女を睨みつける。


「くらふちゅ!!」


「あと2秒待つネっ」


 チェンソー魔法少女は、やられたと言う顔をしながらその場から逃げようと背を向けるがもう遅い。


「教えてやるよ……2秒もあればこちとらゲーマーは勝負を決めるってことぉよ!!」


 引き金にかけられた指は引かれ、銃口から火花を散らしながら弾が射出される。

乾いた銃声音と共にその銃弾は一直線にチャイナ水着魔法少女の脳天を捉え、轟音と共に彼女の体には風穴が開く。


と思った。


「仕方ないネ。男、お前ちょっとついてこい」


 この一瞬の間にチャイナ水着魔法少女がそう言って、俺の腹に突き刺さったチェンソーの歯を掴みチェンソー魔法少女の手を握る。


《むーぶおんらいくらいと》


 チャイナ水着魔法少女がそう呟くと、突然俺たちの目の前に裂け目が現れそのまま裂けた空間は俺たちを飲み込む。


 飲み込まれる瞬間、チェンソー魔法少女がひまり達に向けて微笑み手を振っているのが見えた。


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次回から第2章突入


第6話「コースターに恋はつきもの♡魔法少女もつきもの」です。


お楽しみに。

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