そんな依頼されても困っちゃうよね
4月19日木曜日、時刻は放課後、今日は北山もさぼらずに野球部に行っているみたいだ。
そして、とうとう明日が体育祭実行委員を決める日だ。
しかしその日は実行委員を決めるだけでなく誰がどの競技に出るのかも決めるらしい。
一応北山からは可能ならば借り物競争を候補に入れてくれと言われているが、個人参加の競技は最低二つに参加しないといけないので借り物競争以外の種目
1,綱引き
2,五人六脚
3,玉入れ
の中から選ばないといけない。一応選抜リレーなるものもあるが、それは足が速い人にオファーが行く形なので僕には関係のない話だ。
かなり悩むが、こういう時は消去法だと決めている。
まず1の綱引き、これは僕が非力なので却下
次に2の五人六脚、これは僕が人と足並みそろえて歩ける気がしないので却下
となると残りは玉入れか、いいじゃないか。チームワークはあまり必要なく、特段目立つわけじゃない。最高や...
そういえば部長はどの競技に出るのだろうか、知ってどうするといった感じだが、まぁ気になる
「突然ですけど、部長って体育祭でどの競技に出るか決めました?」
と聞くと、部長は自慢げに
「私、借り物競争と選抜リレーに出ることになりました。実は足早いんですのよ?私。」
え、部長って運動できるんだ。なんでか知らないけど全くできないイメージあったな
「足が速くてうらやましい限りですよ...まぁ、自分から聞いておいてこんな返答しかできないのもあれですが、頑張ってください。もしかしたら友達出来るかもしれませんよ?」
「あなたって結構人が気にしていること言ってくるんですのね」
などと他愛もない会話をしていると、部室のドアが開いた。北山はいないから、それ以外の誰か、ということになる。きっと相談だろう。
「あの、初めまして。野球部でマネージャーを務めています。
野球部それでいいのか、選手とマネがさぼり経験ありだぞ。
前気になっていろんな部活の張り紙を見たが、野球部それなりに強いはずなんだけどなぁ...
そんなことを考えていると、いいですわよと部長がいい、着席を促すと同時に紅茶を入れ始めた。いつものやつだ。北山の件で学んだが、この間は僕が対応しなくちゃいけないらしい。異性である住野さんと話すのは少々、いやかなり緊張するが
「それで住野さん、相談っていうのはどんなの?」
「はい、それが私、好きな人がいるんです。その人に振り向いてほしくて頑張っているんですけど、その人はちっとも気づいてくれなくて、それで相談に来ました。」
すげぇな野球部、恋愛が盛んだこって。
しかし北山の時も思ったが恋愛相談なんて持ち込まないでほしい。
部員全員が恋愛経験ゼロの弱者なんだよ。悩める少年少女にかけれる言葉は誰でも思いつくような安易なものしか持ち合わせていないんだ。
「それで、住野さんは誰が好きなの?話したくないならいいんだけど...」
僕が聞くと、机の上に全員分の紅茶が置かれた。部長が紅茶を入れ終わったらしく、僕の隣に座る。
「私が好きな人はですね、同じ部の北山浩平くんなんですけど、知っていますか?」
......えぇマジすか、そいつのことよ~~~く知ってますよ。なんせ今そいつからの恋愛相談受けて僕ら頑張ってますから。
ということは、北山に心情の変化が起こらない限り、住野さんの敗北は確定しているのか、悲しいな。
「それにここへ来たのはもう一つ理由があって、昨日浩平くんからメールで、小川さんを体育祭実行委員にしてほしいって来たんですよ。だからもしかしたら浩平くんは小川さんが好きなんじゃないかなって思って、考えても考えても私ひとりじゃどうしようもなくて、相談しに来ました。」
そうかよくわかってるじゃないか、しかし僕らはこんな彼女になんて声をかけるべきだろうか...
はっきり事実を言うってのが一番正解なんだろうが、そんなこと部外者の僕らが迂闊にできたもんじゃない。さて、どうしたもんか.....
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