野球少年は恋をする その2

朝のホームルームにて、僕は少々焦っていた。

北山と小川さんをくっつけるきっかけとやらが全く思い浮かばなかったからだ。

そんな僕はきっかけを探すため、非常にまじめに先生の話を聞いていた。


「お前ら、そろそろ体育祭があるのはわかってるよな?明後日に体育祭実行委員を決めるから、やりたい奴は考えておけよ。定員は男女二人までだ。よし、朝のHRは以上だ」

あれ?これじゃね?きっかけ、見つかっちゃいました。


今すぐ北山に言いに行くべきかと思ったが、あいつは友達に囲まれているので少々、いやかなり話しかけにくい。やはり放課後にしよう。


眠気に耐えながら午前、午後の授業を終えた僕は、慣れない道をたどりながらお悩み相談部の部室に行くと、すでに部長がいた。


「あら、時間がかかりましたね。北山さんはもう来ていますわよ」

どうやら僕が一番遅かったらしい。だってしょうがないじゃん。道に慣れてないし、遠いし


「すみません、ちょっとまだここに来るのに慣れていなくて...」


「そんなことより北山、お前らをくっつけることができるかもしれないきっかけ、あったぞ」


ほんとか?(ですの?)

部長と北山の声が被る


「ああ、お前ら二人で体育祭実行委員やればいいんじゃないかと思ってな、というか、これ以外に思いつかんかった」


「でもさ、俺は良いとして、どうやったら小川さんを実行委員にするんだよ」

おっと、そんなこと全く考えていなかった。まずいっすね。


「え?それは、その、だな...」

僕がキョドっていると部長が、何かを思いついたように話し出す


「それなら、彼女と仲のいいお友達にお願いすればいいんじゃないですの?」

それだ、すげぇな部長、友達いないのに友達の活用の仕方がうまい


「小川さんと仲のいい人、かぁ....誰かいたっけ...」

数秒考えた後、明るい顔をする。どうやら心当たりがあったそうだ。


「それならうちのマネージャーが小川さんと仲よかった気がします。本人にお願いしてみますね。」

北山が野球部のマネージャーにメールでお願いしている間に、僕は例のごとく部長が入れてくれた紅茶をすすっていた。


「あ、返信来ました。頑張ってみる、らしいです。」

おぉ、こんなにとんとん拍子に進むもんなんだな。


「もうここまで出来たら、正直もう今日はできることないんじゃないか?」

そうして部長に帰宅の許可を求めようと口を開こうとした瞬間、北山が口を開いた

僕の帰宅はさえぎられる運命なんだな。悲しい。


「実は、俺も一つ考えてきたんですが、ちょっと、バレたらただで済まなさそうな話なんですが...」

何考えてんねん。そんなこと話さないでくれ。穏便に、合法に行こうじゃないか


そんなことを考えていると、北山が話し出した。

「俺も昨日体育祭についていろいろ調べたんですけど、体育祭に借り物競争ってあるじゃないですか、そこに、好きな人、みたいなことが書かれた紙を入れてほしいんですけど...」


「そんなことが書かれた紙なら、普通に入ってそうだけどな」

あるあるじゃないか?そういう好きな人関連の紙が入ってるのって、わざわざ細工する必要ないと思うんだが。


「いや、万が一それ以外のお題を引いた時のことを考えるとな。とにかく確実性が欲しいんだよ」

そこまで頭が回るならきっかけも自分で作ってくれよとは言ってはいけないお約束


「それもやるとして、じゃあ誰が細工するんだ?」

まだ競技の選手も決まってないんだから、そんなことを今言うのは野暮かもしれないな。

などと考えていると、


「競技をする学年の順番は、2、1、3年の順になってるから、姫木先輩が一番下に紙を置いてくれるのが理想ですね」

というと、姫木先輩は目を輝かせだした


「任せてくださいまし!私、バレたらただじゃすまないといったスリリングなことが大好きなんですの!」

あかんわこの人、盛り上がっちゃった....


「いいんですか?ありがとうございます!」

北山が嬉しそうに部長に言った。


ちょっとよくわからんくなってきたぞ、話をまとめると、

1,北山と小川さんは一緒に実行委員をやる

2,借り物競争に細工を、部長がする。

ということでいいんだろうか。

いいだろう、これ以上やることないと思う。

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