家に帰ったら休めるだなんてナイーブな考えは捨てろ

「ただいまぁ~~」

ようやく家に着いた。いや~~今日は疲れた...

部活に入れられるわ恋愛相談持ちかけられるわで、高校入学してからもっとも疲れた一日といっていい。


「あぁ、おにぃお帰り。どったのそんな木曜の仕事帰りのサラリーマンみたいな顔して。」

妹、西風柚子にしかぜゆずがわざわざ出迎えてくれる。


「今日ちょっといろいろあって、お兄ちゃんちょっと疲れてんだ。あんまりつらい言葉を吐かないでほしいな...」

正直かなり疲れた。今日起こった出来事は明らかに僕のキャパを超えていた。

そんなことを考えていると、妹が急に今まで見たことないくらいの怖い顔をして僕に話しかけてきた。


「おにぃちょっとまって、なんか服から知らない女のにおいがする。どこで何してたか、説明してもらっていい?」

何だこいつ、とうとう超能力でも手に入れたのか?いま柚子と僕って結構距離あると思うんだけど、少なくとも互いのにおいなんてわからないくらいには。


しかしまあ説明ですか...個人的長々と話すのはめんどくさいので何もなかったの一点張りで何とか逃げ切りたいところだが、なんか目が怖い。ハイライトがないってこういうことだったんですね。


「わかった説明するから、そんな今にも人を殺しますみたいな目しないでもらっていいか?正直怖い。」


「うん、よろしい。それじゃ話して。」

やっぱり圧が強くありませんか?


僕はおびえながら今日あったことを嘘偽りなく妹に話した。

すると妹は納得してくれたのか先ほどまでの圧力が嘘のように消え、いつもの雰囲気に戻った。


「そっか、そうだよね、あのおにぃに女っけがあるわけないもんね。」

許してもらえたのはいいが、それで納得されるのも少々効く。

というか許してもらうってなんだよ。なんでいつの間にか僕が悪いみたいになってんだよ。


「まあいいや、今日は早く寝たいからいつもより早いけど夜ご飯作っちゃうね。」

何とか玄関の問答に勝利した僕はリビングへ入る。両親は共働きなので、家事は僕が柚子が担当している。割り振りは掃除洗濯が柚子、料理が僕だ。僕のほうが仕事内容が少ないのは許してほしい。


そういって僕はカバンを椅子に置き、手を洗って料理を始めた。

しばらくして

「よし、できた」


さて、今夜私がいただくのは、米と鮭のホイル焼き、みそ汁です。

ちなみに家は赤みそ派です。よろしくお願いします。


「いただきます」

僕も柚子も手を合わせてご飯を食べ始める。


「んん、おにぃの料理はいつもおいしいね。嫁に欲しいくらいだよ」

僕が嫁にもらわれるのか、やだな、もらうなら婿としてもらってほしいところではある。嫁でも婿でもあげないが


他愛もないことを話しているうちに、気づけば完食していた。

「ごちそうさまでした」

いや~~よく食べた。

皿を洗ったら次は風呂に入ろう。いつもは浴槽にお湯を沸かしてから入るのだが、今日は特段疲れてるので柚子のためにお湯を沸かしながら僕はシャワーのみ。これでいいだろう。お湯を沸かしながら入ると、少々シャワーの水圧が弱くなって好みではないのだが、まあしょうがない。


着替えを持ってきて、風呂に入る前に僕にはやらなきゃいけないことがある。

「ねえ柚子、絶対に僕が風呂入ってるときに乱入してこないでね。いい?」


なんでこんなことをわざわざ言うか、それは遡ること三日前。

僕がのんきに湯船につかっていたら、勢いよく風呂の扉が開け放たれ、

「やっほーおにぃ、かわいい妹が一緒にお風呂に入りに来たよ」

このように突撃してきた。ちゃんとタオルを巻いて。


あれはビビったね、さすがに15年柚子の兄やっててもあの行動は理解できなかった。

何とか風呂場から逃げ切った僕は、服を着て頭を乾かし歯を磨き、すぐに寝た。今日の柚子はなんかやばいと身に危険を感じたため、部屋に鍵かけた。


そんなことがあったから、僕はわざわざ毎日こんなことを言っている。


「ねえおにぃ、それってフリ?」


「なわけないだろ、本気も本気」

勘弁してほしい。ため息をつきながら僕は風呂に入った。


どうやら今日は大丈夫だったらしい。僕はほっと一息つきながら髪の毛を乾かした。

あとは歯磨いて寝るだけ。

勝った、計画通り... 某新世界の神みたいな顔しながらうがいをし、自室に行く。


柚子は今から風呂に入るらしい。これなら柚子が一緒に寝ようといってくる必要もないだろう。安心だ

ベッドに入ると、自然と瞼が落ちてきた。もう寝よう。明日は、今日より平穏に終われるといいな....



翌朝、僕のベッドの中に柚子がいたのはまた別の話。

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