「お悩み相談部」その2
何だこの人、上から下まで物語から出てきたお嬢様の見た目してるぞ。
姫木さんの肩越しから部室の中を見ると、普通の教室の真ん中に大きめの机が置いてあって、向かい合わせにいすが置いてある感じだ。どうやらこの人以外の部員はいないらしい。僕はこの人とうまくやっていけるのだろうか...
「初めまして、姫木...先輩でいいんですよね?今日からこの部活に入ることになりました。ご存じだと思いますが西風です。よろしくお願いします。」
うん。我ながら完璧な挨拶だ。陰キャに片足突っ込んでる僕にしては上出来なんてものじゃないだろう。
僕が自己紹介をできたことに内心ほっとしていると、姫木先輩は話し始めた。
...声でかいな、この人
「お悩み相談部の概要は先生から聞いておりますわよね?この部の活動内容についてもっと詳しくお話したいのでどこか適当なとこにかけていただけますこと?
ああそれと、今お茶を入れますので少々お待ちを」
入室が許可されたらしいで言われたとおりにいすに座る。そうすると、僕と向かい合うように部長が座ってきた。高そうな紅茶の入った二つのカップのうち片方を僕に渡しながら。
「まずこの部は、なにかしらのお悩みを持った生徒さんがこの教室に相談しに来てくれない限り、特にやることはありませんの。ですから、こういったティーセットがありますのよ。」
思ってたよりちょろそうな部活なのかもな、助かる。
そんなことを考えていると、続けて部長がしゃべりだす。
「いざお悩みを持った生徒さんが相談に来てくださったら、私たちは相談に乗り、必要ならば解決する、これがこの部の仕事内容ですわ。お分かりいただけまして?」
僕はうなずく。理解できたが、やっぱ無理かも。ほんとに先生は何を思ってこの部活をチョイスしたのだろうか。
そこで、僕はふと疑問に思ったことを聞く。
「そういえば、顧問の先生っていないんですか?たいてい部活には顧問の先生がつきっきりでいるイメージなんですけど...」
窓からグラウンドのほうを見れば、運動部にはこの学校の教師や、外部からのコーチも見える。先ほどから聞こえてくる吹奏楽部も、きっと顧問がいるのだろう。
「あら、聞いていませんでしたか?この部活の顧問は一ノ瀬先生でしてよ。」
oh...まじ?さっきあの人ここまで案内してくれたはいいものの、もう仕事しに職員室行っちゃったけど。
というか、先生が僕をこの部活に入れたのってそういうことか。
「説明は以上ですわ、何か質問はありまして?」
この部活のことはよ~~~~く分かった。僕には無理。でもこうなった以上、無理でもやるしかないのだ。
「わかりました。ありがとうございます。ところで僕は今から何かやることとかってありますか?」
さすがに相談が来るまで座ってるだけというのもいたたまれない。
「そうですわね、それでは私と親睦を深めましょう!」
え、急にハイテンションになられても困る。でも確かに親睦を深めることは大切だ。それはたぶん、どの部活にも言えることだろう。
「はぁ、といっても何するんですか?ここでできることなんて限りがあると思うんですけど。」
すると、部長が固まった。
ないんだね、やること。
「私、友達がいたことがあまりないのでどうやったら親睦を深められるのかわかりませんわ...」
.....まずい、この部活陰キャとぼっちしかいないのか、そんなんで相談なんて来てくれるのか?
そもそも部活に入っている人は相談するために部活をサボる必要があるじゃないか。
「.....どうしましょうね、僕もわかんないです。」
場の空気が重いので、とりあえず会話をつなぐ。
何か起こってくれ、じゃないと気まずい...そう考えていると、部室のドアが開いた。
「失礼します。野球部の北山です。ここがお悩み相談部の部室ですよね?少し相談があるのですが...」
少し肌の焼けた、活発そうな男子生徒が、少し緊張しながらこちらに向けて話している。
部活サボった人、来ちゃったよ...
「あら、お客さんですわね。今お茶をお出しするので座って待っていてくださいまし」
部長が僕の時と同じように北山さんに紅茶を差し出す。
「ありがとうございます。それで相談というのは、実は俺、好きな人がいまして...」
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