「お悩み相談部」その1
「お前、部活入ってないだろ」
職員室の一角にて、担任であり現代文の先生である一ノ
「はあ、そうですね、確かに部活は入ってませんけどこの学校って別に部活強制じゃないですよね?」
背丈も顔面も、何から何まで普通な、でもちょっと、ほんとちょっとだけ友達が少ない男子高校生、
「とはいっても、教室のお前の様子を見てると、何か部活に入って仲間を作ったほうがいいんじゃないかと思ってな」
ずいぶんまともなことをいうものだ
「ほんとにおもってますか?それ」
この教師がまともなことを言い出すと、大体セットで面倒ごとがついてくる。
もはやこの学校の周知の事実だ。
「そんな友達がいないお前に、この
.....ほら来た、どう考えても面倒だろこれ、
あと友達いないわけじゃないし、つくってないのとつくれないのあいだにはとても大きな差があるということをこの人はそろそろ学んだほうがいい。
「いやですよ、僕だって家に帰ってからやることありますし。」
もちろん嘘である。正直家に帰ってもラノベを読むかゲームをするか寝るだけだ。
それをやることと捉えるかは、さすがに個人の解釈によって変わるだろう
「いつからお前は自分に選択権があると思っていた?」
......は?何を言っているんだこの教師は、部活なんだから、最終決定権はさすがに自分にあるに決まっているだろう
「ほら、これ見ろ、この紙もう提出したからな。ようやくお前も部活動生活が始まるってわけだ」
先生が必要な事項がすべて記入された紙をぴらぴらとこちらに見せびらかしてくる。
どうやら僕はお悩み相談部なるものに強制的に入れられてしまったらしい。
....この人おかしいね、間違いない
「なんですか?お悩み相談部って」
なかなか聞かない名前だ、こんな部活が本当に現実にあると思ってなかった。
「わからんのか?生徒の相談に乗ったり、悩みを解決したりする部活だよ」
それって教師の役目じゃないの?
いや、そんなことより今はもっと大事なことを言わなくては
「何勝手に本人確認の欄に他人がサインしてるんですか、おかしいでしょ!」
どう考えてもおかしい、これには声を大きくしての抗議も辞さない
「いやほら、お前らだって提出物の両親のサインをもらうべきところ自分でサインしたことあるだろ?それみたいなもんだよ。部長はもうお前が来るものだと思って準備してるからとっとと顔出してこい」
この説明で納得出来るわけないだろう、でもこのままここで言い争ってても無駄だ。
ここは穏便に解決しよう
「先生、退部届ってどこにありますか?」
これしかない、正式に入部させられたからには正式に退部すればいいのだ。
僕は勝ち誇ったような表情で言った。
我ながらよく頭が回ったものだ。俺の勝ち、なんで負けたか明日までに考えといてください。
僕が少し前のcmのセリフを心の中で引用していると、先生が僕よりも勝ち誇ったような表情で
「お前のような木っ端は知らんだろうが、部活の入部と退部には顧問の許可がいるんだ。そこでお前に考えてほしい。私がお前に退部の許可を出すと思うか?」
......完全に見落としてた。それもそうだ、勝手に生徒に部活から抜けてもらったら困るもんな、分かった認めるよ、僕の負けだ
「はぁぁ...思いません、分かりましたから部室まで案内してください。」
非常に大きなため息をついて僕は言った。
「よし、それでこそお前だ!案内してやるからついてこい」
この人は僕の何を知っているのだろうか、僕のことを多少なりとも知っている人ならば少なくとも僕を勝手に部活に入れることはないだろう。
意気揚々と職員室から出てった先生に僕はついていく。
4月もそろそろ終わりかなという頃、天気は僕の心を映し出してくれるわけでもなく、とてもきれいに晴れていた。
この学校は教室棟、部室棟といった風に分かれている。いたって普通の学校だ。
そんなことを考えながら歩いていると、「お悩み相談部」と書かれた教室の前まで来た。
職員室が教室棟一階で、ここが部室棟三階だから、ほんとに結構な距離だった。
「ついたぞ、詳しいことは中にいる奴に聞いてくれ。それじゃ、私は仕事があるから」
先生、どっか行っちゃった...初対面の人と話すのは得意ではないのだが。
そんなことを考えながら入り口の前で立ち止まっていると、目の前のドアが急に勢いよく開いた。なんで?僕が戸惑っていることも知らずに、その人は自信たっぷりな顔をして話し始めた。
「お待ちしておりましたわ!あなたが西風颯太さんですわね!
.....なんかくせの強い人だなぁ
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