第56話 エルフの国の危機


「エルフィ女王陛下、改めて説明願います。我が国の戦力を貸すとは、どういったご要件で?」


卒業式をなんとか終わらせ、学園長室ではなく帝王の間にエルフィの力で転移した卒業生+帝王&レイリア。そんな疑問を切り出したのは、帝王だった。


「単刀直入に申しますと、【精霊の泉】が何者かによって奪われました。」


「なっ!?そんなことが!?」


「凄まじい負の魔力反応、そして一瞬の出来事でした。アレは恐らく、魔族。それもとても強力な魔族の仕業ですね。」


精霊の泉。精霊大国アルブヘイムが最強たる大きな所以の一つ。アルブヘイムのエルフたちはこの泉の加護を受けていて、泉が消えない限り大幅な強化と精霊との契約を可能にする。


そもそも精霊自体が、人間や魔族と言った種族より一つ上位の存在。下位の精霊でもかなりの戦闘力を誇り、そんなものを数万と保有することからアルブヘイムは最強だった。


そんな精霊の泉が、何者かに奪われた。これは確かに緊急事態だ。なぜなら、精霊の泉による加護は一ヶ月に一度泉に入らなければ切れてしまう。つまり、取り返さなければ精霊との契約は切れ、アルブヘイムは最弱国となる。


「エルフィ、お前がいてなんでそんな事になった?どんだけ強え魔族も、お前がいれば三秒、で片がつくだろ。」


「それが、駄目だったんですよ。発見した魔族はおおよそ2体、そのうちの一体は恐らくでふが『王帝魔族』です。あの覇気に溢れた魔力、昔の戦争で見たことがありますからね。」


二千年を生きる大エルフ。その力は、原作の完全体のアルフレッド君でも一対一で勝つのは中々骨が折れるほど。今の俺たちが勝てる可能性はほぼ無い。そんな彼女が取り逃がした相手が、アルブヘイムにいる。


しかも、頼りの綱であるエルフィは既に泉の加護がかなり薄れているらしい。エルフィ本人の力は出せるが、精霊との連携を生かしたアルブヘイムならではの戦いができないのだとか。


それに王帝魔族とは、個体によって強さがバラバラだ。ルルも王帝魔族だが、まだ生まれてから数十年しか経っていない。数百年を生きた王帝魔族はルルを軽く超える強さを持っている。


それを聞いた帝王は、俺たちの貸出を良しとしなかった。無論、兄様やライゼルも。ここで貸し出せば、死ぬのは明白だったからだ。


「帝王ジル、此度の一件を解決出来たのなら『霊帝同盟』の再結成を報酬にします。」 


「なっ!?そんなこと、貴方様が許すわけが!?」


「えぇ、過去の裏切りは忘れません。ですが、もう帝王も国も変わった。此度の脅威を取り払い、我が国に平穏を齎してくれるのなら、帝国と同盟を結びます。」


ここでエルフィが持ち掛けたのは、バスター帝国より遥かに高い国力を持つアルブヘイムとの同盟。これが成されれば、帝国には大量の資源と精霊という新たな要素が手に入る。それは、いずれ来る魔王復活に備える最高の武器だ。


そんなものを持ち出されれば、帝王は素直に首を縦に振るしかないのだ。そして、エルフィもこのような苦い選択を取るしかないのだ。


「アルフレッド、そしてお主たちよ。我が国のため、征ってくれるか?」


「任せてくださいよ、帝王様。」


むしろ、好都合と言った所だ。これは原作でも俺がかなり好きな章でもあり、かなり危険な章でもあるイベントだ。もちろん、原作と違う部分は多々あるだろうがそれでも原作知識を活かせばこの事件を解決できるかもしれない。


そして、この一件を解決した時エルフィは俺たちにとてつもない恩義が出来る。


「その代わりにエルフィ様、一つお願いがあります。」


「なんですか?アルフレッド君?」


「まず、【ワールドレコードレベル】。この言葉は御存知ですか?」


「ッ…!?それを、一体どこで?」


「つまり、知っているんですね。」


俺がそう疑問を持ちかけると、エルフィはかなり驚いた顔を浮かべていた。そして、星神はこの子を…と意味深なことを呟いていた。やはり、長生きしてる人は知識が豊富なようだな。


「今回の事件を解決できたら、それについて詳しく教えてください。それが約束できるのなら、全力で力になります。」


「……わかりました。約束します。」


俺がニコッと微笑み、手を差し出すとエルフィは困った様子で笑いながらその手を取った。これで、契約成立だ。


「アルがまた女の子誑かしてる…」


アイリスの、めっっちゃくちゃ失礼な発言を最後にこの緊急会議は幕を閉じた。

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【祝】強すぎて作者に弱体化されたボスキャラに転生したので弱体化イベント回避して無双します 〜最強の魔眼と進化する神器で世界最強に〜【70000PV突破!】 いふる〜と@毎日七時投稿! @atWABD

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