第54話 世界初のS級ダンジョン攻略者
「お前たち…やってくれおったな…」
「流石だな!アル!兄様は誇らしいぞ!!」
「あ、あはは…」
S級ダンジョン天獄攻略、そしてグラトリアス史上一の
「それで?天獄はどうだったのだ?お主がそれだけやられるということは、相当なのだろう?」
「それはもう、何度死にかけたか分かりませんよ。でも、皆のおかげで勝てました。」
「それは何よりだ。だが、お前たちは一人一人が帝国の大事な戦力、死なれたら困る。我自身も、幼き帝国の宝が失われるのは心が痛む。」
「はい、気を付けます。」
アイリスがダンジョンボスを倒すと、俺とアイリスは同時に意識を失いルルとルージュが運んでくれたそうだ。再生ができない傷も、奴を殺すと再生できるようになった。
だが、被害は大きかった。100万人の冒険者たちも、半分以上が死んだ。俺たちがダンジョンボスを殺し、
そして後から聞いて何より驚いたのが、地上にはユニークモンスター【絶望のアスタロト】が降りていたということだ。奴は原作で、魔族側の特級戦力でありレベル150。そんな奴がキてしまえば、グラトリアスは壊滅すると思った。
ユニークモンスター以外にも、【白竜カナリア】という
「原初の英雄、絶望のアスタロトを撃破…」
教会でシスターに聞いた話だと、ルルの恩人であるレイリア=ベルディヴェンデが奴を倒したのだという。うーん、これは強い。だって俺たちが5人がかりでなんとか倒した天死竜王と同じか、それ以上に強い奴を一人で倒してるんだぜ?
今回のダンジョンアタックも、反省点だらけだ。もう少し連携の練習をするべきだった。敵が強すぎたっていうのもあるけど、今回はアイリスがいなかったら冗談抜きで全滅だった。
「おーい、邪魔するぜ。」
そんな軽い言葉と共に入ってきたのは、先ほど考えていた男だ。三十代前半に見えるその様子だが、実際は数百年を生きている英雄。レイリアが入ってきた。
「お前さんが、アルフレッドか?」
「レイリアさん、ですよね。はい、俺がアルフレッドですけど…何か用でも?」
「お前にとっちゃ、そこまで大した用じゃねえかもしれねえな。」
そんな軽口を言いながら、病室のベッドで座っている俺に近づいてくる。そして、ゆっくりとその背中に担いできる戦斧を地面に降ろし、軽くなった頭を下げた。
「此度の戦、感謝する。お前さん等がいなきゃ、俺の仲間は皆死んじまってた。」
「っ頭を上げてください、俺は、俺のために天獄に挑んだんです。街を救うためとか、正直あんま考えてませんでしたよ。」
「それでも、だ。お前が街のために行動したわけじゃなくとも、お前たちの功績は本物だ。だから、グラトリアスの責任者として最大の感謝を。」
情報によれば、レイリアはもっも飄々とした男だと聞いていたが、まるで違うじゃないか。責任感にあふれた、立派な統治者だ。ならば、俺も相応に答えるしかない。
「俺の信頼がどこにも置いていなかったら、貴方についていくくらいには、カッコいいです。」
「っは、お前みたいなガキは御免だな。」
「あははは!」
そんなくだらない軽口を持って、レイリアとの会話は幕を閉じた。
∇∇∇
「…………」
グラトリアスでの激戦が終わり、俺含め攻略したみんな+帝王&兄様で馬車に乗る。今は、帝国への帰路についている。
思えば、色々なことがあった。グラトリアスに着いた最初の時なんて、ルルと仲良くなることもこんな激戦を繰り広げることも想像すらしていなかった。
天獄は思ったより、ずっと鬼畜難易度だった。レイリアは思ったより義理人情に厚くて、この街の冒険者は思ったより気高かった。
たくさんの未知を、この街で学んだ。それを思うと、あと少しだけあの街にいれたら良いなと寂しくなったが、俺は帝国に帰らなきゃならない。
「アルフレッドよ、戻ったらお前たち5人には褒美を与える。なにせ、世界初のS級のダンジョン攻略者なんだからな。」
「世界、初…」
その言葉に、俺は少しだけ頬をほころばせる。なんだか特別感あっていいなぁ、世界初。俺たちは本当に天獄を攻略したんだと実感させられる。
「………」
「どうしたの?アル?」
「あぁいや、なんでもない。」
俺は、心の中で引っ掛かっていた。アイリスが竜を倒し、最後に脳内に聞こえたあの言葉。
『ワールドレコードレベルが昇華しました』
当然、レベル上限上昇もめちゃくちゃ驚いたしめちゃくちゃ嬉しかった。これ以上強くなることができると考えたら嬉しくてたまらない。
だけど、初めて聞く単語『ワールドレコードレベル』。これが、どうも気になってしまう。原作では一切聞いたことがなかった単語故に、何か嫌な予感がする。
しかも、それに伴ってS級ダンジョンが解放された。どうも、おかしいような気もする。
(よし決めた。このワールドレコードレベルについて調べてみよう。)
俺は新たな目標を見つけた。原作をすべて知っている俺にとって、一切知らない単語など怪しいにもほどがある。俺はこの人生、死なないことと楽しそうなことに全てを賭けると決めている。
爽やかな風が、馬車が歩く草原を揺らす。その平穏は、いつまでも続くものではなく…
―――――――――――――――――――――
第四章『虚飾と嘘、膨れる悪意の終結戦』
これにて終了です!今回の章はどうでしたかね〜?お楽しみになられたのなら幸いです!
第五章『精霊大国アルブヘイム』
お楽しみに!!
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