第52話 命の再帰を許さぬ暴帝
「先手必勝だクソドラゴンッ!!!!」
『グオオオオオオ!!!!!』
アライブを足当てに変形し、深淵を脚部に付与。魔力と同時に爆発させ凄まじい速度を出し天死竜王の懐に一瞬でもぐり込む。
そして両手に握る二刀。そこから、今までの戦闘で溜めた魔力8億、そのうちの1億を紫刀に付与し上段に切り上げた。
「【
『グオオオオオオ!!!!』
頑丈な城の壁にすら深い切れ込みを入れる巨大斬撃。それは、天使竜王が出したクソッタレな腕による防御を容易く切り裂き、右腕と右翼の半分を切断した。
「私も行くよ」
その瞬間、天死竜王の背後上空に現れるアイリス。その剣には、視線を合わすことすら叶わない光を灯していた。
「【
刹那。
アイリスの化け物じみた速度で放たれる光の一閃は、奴の左翼を容易く切り飛ばす。だが、奴は俺が与えた傷と左翼を瞬き一瞬の間すら使わず再生し、滞空しているアイリスに巨大な爪撃パンチを食らわせた。
吹き飛ばされるがアイリス、左腕が切断されている。激しい吐血から、内臓に骨が刺さっているのもわかる。なにより、その右目から光は失われていた。しかも、それらは白い炎のようなもので遮られ再生を妨害されている。
「殺す」
俺は殺意をたぎらせ、出し惜しみなどもうしないと言わんばかりに、世界一の魔力を解放する。魔導体を装着し、両手に黒煉紫獄を持つ。
身体強化150%+魔導体バフ+黒煉紫獄バフ+ルージュのバフ+紫宝発動バフ。今持つ全てのバフを発動した俺の身体能力は、500万を超える。
「【雷閃】」
『グガッ!?!?』
その瞬間。誰も、俺の姿を認識できなかった。雷が迸った瞬間、天死竜王は自身の両翼が切られてから、攻撃されたと気づく。
その傷は容易く再生されてしまうが、両翼が再生しきると同時に奴の両足を切り飛ばす。少しバランスが崩れ、その首が狙いやすくなる。
「【深淵の一閃】」
アホみたいな速度で駆け、奴の首めがけて二刀を振るう。しかし、先程まで俺の速度に一切対応できていなかった天死竜王が、その攻撃を右手でガードした。
ガードした右腕は豆腐のように容易く切り飛ばされていったが、奴の大きな顎はもう開いていた。俺は空中でほんの僅かな隙を晒している。その顎の中には、燃え盛るような白い炎が究極に凝縮されている。
『グオオオオオオォォォォ!!!!!!!』
放たれる白炎竜砲。周辺を融解させ、大気の温度を上げ、破壊の限りを齎すブレスが俺に直撃する。
「アル!?」
悲痛な叫び声がアイリスから上がるが、アイリスは先ほど受けた傷が甚大すぎて動けない。唯一動けるアレンとルルも、今のやつに決定打を与えるほどの動きはできない。
(いってぇな…)
そして、俺はこうして壁にめり込んでいる。あの馬鹿げた熱は、魔導体が融解して壊れる程度で済んだが、衝撃と魔力波によって肋骨は全壊。顔の骨も折れてるだろう。なにより、頼みの綱である魔眼のうち左が抉られた。
「ルル…動けるか?」
「え、えぇ。まだ誰も、死んでないもの。」
「なら行くぞ、お前の攻撃しか致命打にならない。俺とアレンで死ぬ気で隙を作る。」
「まかせてよ、僕は英雄。ピンチの時こそ、輝くものだ。」
状況はかなり劣勢、にも関わらず誰一人として諦めてなどいない。まだ勝てると、そう思って刃を握る。
「【氷絶瀑鍾】ッッ!!!!」
『グオオオオオオ!!!!』
手始めに、アレンが左手をかざし解き放つ広間の半分以上を氷に閉ざす大規模氷結。それによって地面や壁は凍るが、奴は両爪に白炎を付与し氷結を切り裂いた。
そして追撃と言わんばかりにその翼に白炎を付与し、馬鹿げたスピードと力によって翼が羽ばたかれ白炎の翼撃が飛んでくる。
「【拒絶結界】……!!!!」
俺とアレンを守るように前へ出て灰黒の結界で白炎の翼撃から守る。だが、あまりの威力と熱量に結界を超えそのダメージを与えてきやがる。
「いって!二人共!」
「「応!!」」
ルルは全力で魔力を込め、なんとか攻撃を跳ね返す。その瞬間、アレンと俺は二手に分かれ駆け出す。俺の二刀には、重力を圧縮し尽くした小規模ブラックホールを付与している。
「沈めやァァァ!!!!!!」
奴が再びブレスを放とうとした瞬間、俺は二刀を振るいブラックホールを投擲。すると、奴の口内に溜め込まれた熱量や魔力、その全てを吸い込み爆発する。
とてつもない爆発音が響き渡り、奴の頭部と胴体は損壊する。そこに追い打ちをかけるかのように、アレンの神剣が襲いかかる。
「【憤炎怒攻】ッッッ!!!!!」
壁をキックし飛び上がるアレン、上段から振り落とした神剣。そして放たれる破壊の炎、その巨大な荒波はでか過ぎる天死竜王でさえ飲み込んでしまう。
俺とアレンによる猛攻、それを受けた奴は死んでもおかしくないほどの傷を負う。流石に、再生にも時間がかかっている。
『グオオオオオオ!!!!!』
しかし、それでも奴は倒れない。わずかに再生した口で咆哮を上げ、全身から巨大な白炎の柱をまき散らした。
「止まれェェェ!!!!!」
その時、アレンが神剣を凄まじい勢いで投げ奴の頭部に突き刺さり頭部が氷結される。俺はそれと同時に駆け出し、奴の体に右手をつけた。
「【魔封之鎖】!!!!」
法則魔法により、奴の動きを一切停止させる法則を結ぶと奴の全身が巨大な鎖で拘束される。代わりに、1秒ごとに俺の魔力は100万ほど吸われていくが、問題ない。1秒でも、隙を作れればいいのだ。
「やってやれェェェ!!!!!!!!!!」
俺の叫びと共に、俺が構えた黒刀を踏み台に使い跳躍するルル。馬鹿げたスピードで突進したルルに、白炎を付与した爪撃が襲いかかるが右足を奪われるだけで死にはしない。
そして、ルルの右手が奴の胴体に触れる。その瞬間、灰黒の光が輝く。
「【魂命拒絶】ッッッ!!!!!!」
刹那、爆発。
灰黒の光が全てを満たした時、奴の体は右足の先端を残して全てが爆散する。あれだけ大きかった奴の体が、今や小さな肉片しか残っていない。
(やっぱ、ルルは凄いな…速度とか身体能力とか、そこら辺はまだ低いがユニークスキルが破格の性能すぎる。王帝魔族ってのは全員こんな強さなのか?)
いずれ戦うことになるであろう他の王帝魔族の存在を留意しながらも、俺は後ろを振り向く。そしてみんなに勝ったぞ!の凱旋を上げようとする。だが、後ろを振り返った俺が見たのは、顔面蒼白で俺の後ろを指をさすアイリスの姿だった。
「まだ、死んでないッッッ!!!!!!」
『グオオオオオオ!!!!!!』
アイリスの悲痛な叫び声と共に、俺の体は後方から襲い来る白炎ブレスが直撃する。アホみたいな熱量と衝撃と魔力、魔導体の防御なしで受けるには、あまりにも強すぎた。
「がはぁっ!?……」
凄まじい勢いで吹き飛ばされ、城の壁を突き抜け隣の広間の壁へとめり込む。もはや、即死してもおかしくないダメージだろう。分かる限りでも、肋骨その他骨全壊、内臓破損、左目&左腕欠損、出血多量。
そしてなにより、奴に受けた傷は再生しない。こんなアホみたいなダメージを受けているのに、自然再生すらしない。俺の意識は、もうわずかしか残っていなかった。
『グオオオオオオ!!!!!!!!』
奴は、俺を吹き飛ばしたあとも破壊の限りを尽くす。その巨大な体をどうやって再生したのかは分からないが、完全に消し去らないと死なないようだ。
アレンが必死に食らいついているが、もはやダメージを与えられていない。すぐに再生されるし、奴が間髪入れずに大量に放つ白炎ブレスによって、徐々に追い詰められていっている。
このまま行けば、確実に全滅。いや、もうすぐに全滅する。人類最強レイリア=ベルディヴェンデがこの迷宮を攻略できなかったのも、今となってはよくわかる。
「くそっ…!??」
そんな状況に、アレンは苦言を呈する。だがその瞬間、アレンの横腹に痛々しい白炎のパンチがめり込み吹き飛ばされる。ブレスを直撃で受けた俺ほどじゃないだろうが、凄まじいダメージだ。ルルはなんとか結界を張ってルージュを守っているが、そのうち突破される。
まさに、絶体絶命。全滅まであと一歩といったところ。あのアレンですら、物語の主人公ですら動けなくなった。そんな絶望で…
――――――剣聖が、立ち上がった。
「まだ…死んでないよ…誰、一人も!!」
もはや、死んでいてもおかしくない傷を負いながらもアイリスは立ち上がる。だが、その立ち姿は悠然としていて、ダメージなど感じさせないものだ。
「私が絶対に…倒すッッッ!!!!」
たった一人の少女、その抵抗が始まる。
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