虚飾と嘘、膨れる悪意の終結戦
第39話 遠征にいこう!
「美味これ、あとでまた買お。」
「最近買い食い激しいよねアル、どしたの?」
「いや〜、相棒を使う時生命力を大量に使うからいっぱい食わないと体が保たないんだよ。」
「へぇ〜、あんな強い力だけどやっぱり弱点はあるんだ。」
帝都の商店街をアレンと歩き回る中、俺は買ったチョコレートテリーヌの美味さに感嘆する。アレンは焼き芋をひたすらに頬張っていた。
こんな平和な日常は、少し俺には似合わない。鍛錬は続けているし、学園にもサボらず通っているが暇だ。もっと、スリリングな戦いや格上との戦闘をしたい。
「にしても、アルは戦争から凄く強くなったよね。単純な剣技なら勝つけど、スキルとかユニークウェポンを含めると全然勝てないや。」
「まぁな、それに戦争からもう三ヶ月も経つのか。早いもんだな。」
「最近は暇だよね〜、授業受けてダンジョン潜って休みの日は遊んでの繰り返し。もっとスリリングな戦いもしたいよ。」
相変わらず戦闘狂な側面が見えるのはさておき、暇なのは事実だ。ここ最近で楽しかったのは帝都の周辺に現れたレベル90の絶氷龍と戦った時ぐらいだな。
(暇だよな…)
「アレン、学園長にお願いして長期休暇でも取らないか?俺達は進級単位も充分すぎるくらい足りてるし。」
「いきなりどうしたの?アル?」
「いやなに、俺も暇だからな。ちょっと暇潰し以上に面白そうな事を思い付いたんだ。」
原作アルフレッド(15歳)ですら、そのダンジョンの『攻略』には手間取った災厄の迷宮。バスター帝国の隣国であるカルテイン王国に存在するとある危険地帯。
「出現から3000年、未だ未踏破のS級ダンジョン[天獄]の攻略。やってみないか?」
ほんの思い付き、アレンが断ることも想定していた。そうなれば、俺は一人で長期休暇を取りその生命が紙くずのように潰される場所へと赴いていただろう。
だが、アレンの首は縦に振られた。後日アイリスとルージュにも聞いてみたが、肯定以外の言葉は返ってこなかった。
∇∇∇
「まったく君は…突拍子な事しかしないね?」
「わかっていますとも学園長。いえ、アラクスさん。」
学園長室にて、俺とアレン、アイリスとルージュは学園長に無期限の休みを要求した。もちろん期限はダンジョンを攻略するまでである。
そんな事を言うと、学園長は思わず頭を抱えてしまった。なぜなら、ルージュが直々に帝王の許可証を作らせ持ってきてしまったからだ。
「四人共、我が学園の大事な生徒です。それに帝国の大事な戦力であり大事な宝なのです。故に命をドブに捨てるような行為は、看過できません。」
長い耳を持ち2000年を生きてきたハイエルフはそうキッパリと答えた。彼はとても長生きだし、あのダンジョンの危険を知っているのだろう。
だが、そんなのは俺たちには関係ない。
「アラクス学園長、[天獄]に出現するモンスターはご存知ですか?」
「いきなりなんですかね?もちろん知っていますが、[
「その階級は最下級の下級天死ですらB、最上級の天死王はSS級の危険度認定がされています。」
「ですから、危険なのです。それにあのダンジョンは最深部に辿り着けたものがいない、それ故ボスの情報が一つもないのです。」
それに関しては大丈夫なんだよな。原作アルフレッド君はソロであのボスを倒してるし。
「学園長、天死が落とすドロップアイテムは[天魔石]です。」
「ッ!?」
「学園長はもちろん知っていますよね?天魔石は魔石の最上位アイテム。そして現在、帝国が大規模な魔導船開発で大量に魔石が必要なことも。」
「アルフレッド…君は、恐ろしいね。そう言われてしまえば、私は頷くしかできないじゃないか。」
学園長はお手上げだ、と言ったあとになにやら紙を取り出して書き始めた。異様なほど綺麗な字でその内容が書かれると、それを俺たちに渡してきた。
「アルフレッド君、君たちには私からの天魔石回収任務を受けたという設定でカルテイン王国へと向かってもらう。」
「さっすが学園長、頭の回転が速いね〜。」
「しっかりしてください。これは君たちにとっては初の国外への遠征任務となるんですよ。」
くたびれたような、そこでいてどこかワクワクしたかのような表情を浮かべた学園長が俺に紙を渡してきた。そこには、先程口で述べたのと同じ内容が記されていた。
「了解です!学園長、しっかり天魔石を回収します!」
「ふむ、それでよろしい。」
「そしてそのついでに、ダンジョン踏破してきます!」
「絶対にそっちが目的だろうが…うむ、分かった。くれぐれも死ぬんじゃないぞ!」
もうどうにでもなぁれと言った表情の学園長に背を向け、学園長室を後にする。この人はやはりしっかりしているように見えて、こういうワクワクすることには弱いタイプだな!ふはは!アレンもアイリスがめっちゃドヤ顔で学園長を見ていたのは見なかったことにしよう!
∇∇∇ ???Side ∇∇∇
「こりゃ…ヤベェことになってきたな…」
「そうっすね。流石に多すぎます。」
カルテイン王国、東端。大陸最難関ダンジョンであり3000年の歴史を持ちながら、未だ未踏破のダンジョン[天獄]。かの迷宮が近くにある街では混乱が巻き起こっていた。
「団長、今月何回目っすか?」
「5回目だな。しかも、今回は上級天死まで混じっていやがった。」
街の名はグラトリアス。その城壁の上で風を浴びながら会話を続ける二人の男の足元、門の下には100や200ではない数の、機械のような見た目をし天使の輪を頭につけた人型モンスターの死体が転がっていた。
団長と呼ばれた赤髪の男は、右手に握る血戦斧を振りかぶる。それが振り下ろされると、血の斬撃が足元の一際大きい天死の体を真っ二つにする。
「ガルス。グラトリアスにS級を集めろ、他国からも応援要請を呼べ。」
「それってもしかして…」
「[
原初のS級。世界最難関ダンジョンを攻略一歩手前まで追い詰めた歴戦の老兵、[レイリア=ベルディヴェンデ]はそうキッパリと言い放った。
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