邪悪なる神の国と飾られた聖戦の鎮魂歌
第26話 夏休み突入!
「夏休みだ〜!!!!」」
夏合宿の強襲イベントから数週間が経つと、8月に突入し夏休みがやってきた。今はアイリスとアレン、ルージュと一緒に帝都でお買い物中だ。
「元気だなお前ら…」
「あらアル、あなたは元気なさそうね?」
「暑すぎて溶けそうなんだよ…」
「氷魔法で周囲の温度を下げればいいじゃない。」
「ルージュお前、天才か…」
ルージュの呆れた視線を受けつつ、俺は暑すぎて溶けそうな自分の体を冷やし始める。待ってこれめっちゃ涼しい俺はなんでこんな便利なことを知らなかったんだ?
「ねぇアル!!夏っぽいことしようよ!」
「夏っぽいこと、というと?」
「学園が巨大プールを一般開放してるの!みんなで水着買ってそのまま行こうよ!」
「良いじゃんアイリス!僕も行きたい!」
「アレンも乗り気だし行こうよアル!」
「まぁ、いいよ?」
アイリスは大抵はなんでも売っている帝都で水着を買い、学園のプールに行こうと言ってきた。うんそれは全然良い、泳げないわけじゃないし暑いから楽しみだ。
(だが!アイリスとルージュはその…10歳にしては発育が良いと言うかなんというか…!)
一言で言ってしまえば、前世も今世も童貞を貫いてきた俺には刺激が強すぎるというお話である。おいそこルージュ、お前はアレンを誘惑する気満々だろ。
「はっはっはー!!この水着も、この水着可愛いですなぁ!!」
「あんまりはしゃぎすぎんなよアイリス。」
ということで、貴族用の高級服屋さんに来てしまった。アイリスは着いた瞬間走り出し、いきなり水着を物色し始める。アイリスさん?そのマイクロビキニは駄目ですよ?何がとは言いませんが俺の俺を制御するのが大変です。
「アルは顔もスタイルも良いし、水着も様になりそうだよね。」
「そうか?まだ10歳のガキの体だぞ?」
「なんかアルがおじさんみたい!」
アレンの一言で地味に心にダメージが入った。そりゃさ?前世と今の年齢を合わせれば立派なおじさんではあるけどさ?面と向かって言われるとなんか傷つくんだけど?
「それじゃ、試着するか。すいません店員さん、試着ってできます?」
「こちらで出来ますよ、アルフレッド様。」
「プライベートなので、様はいりませんよ。」
俺は店員さんの案内を受けて試着室へと向かう。どうやら、アイリスやアレン、ルージュも水着を選び、試着室へと向かっている様子。
(にしても、俺の体ボッロボロだな…)
治癒魔法は体の傷を治すだけで、あまりにも酷い傷だと跡が残ってしまう。今の俺の体には、ケルリアスに心臓を貫かれた時の傷が、夥しい跡になっていて、触手で背中を切り裂かれた時の傷もグロい傷跡になっている。水着を着たら目立ってしまうな。
(まぁ、それはアレンも同じか。)
俺は外出用のラフな格好から、上半身裸の下半身は紫の魔眼と黒髪に似合う紺色の海パンを履いてみた。
「みんな〜、どう思う?」
俺がそう言って試着室から出ると、先に着替えていたアレンが俺を見て固まる。
「ど、どうした?アレン?」
「アルって…男の子、だよね?」
「そ、そうだけど…」
「君が女の子だったら、この国は崩壊してたかもしれない。主に、男貴族たちの取り合いで。」
そんな馬鹿げた事を言うアレンを放っておいて、鏡を見る。アルフレッドの顔面は、魔眼の悍ましさを除けば顔面偏差値80以上のクソバカイケメンだ。それも中性的で、女装してメイクすれば美少女になれるほどの。正直、この顔面が自分のことに未だ驚きを隠せない。
まぁ、そんなアルフレッドの上半身裸姿はハッキリ言って、目に毒なのだろう。自分の体だからまっっったく興奮しないが。
「お、アイリスにルージュ…って。」
試着室から出てきた2人を見ると、俺はアレンと同じ反応をしてしまった。ガッツリ、5秒くらい無言で見つめてしまった。
「そ、そんな、固まられると、こっちも少し恥ずかしいんだけど…」
「ご、ごめん…」
アイリスはその艷やかな銀髪に似合う白と水色のフリルがある水着。その細さやスタイルの良さ、そして顔面はそれこそ傾国の美女ならぬ傾国の美少女である。
「ふっふっふ、アレン?どうかしら?」
「あっ、う、うん。すっっごい似合ってる。」
そして赤く、少しえっちな水着を着て出てきたルージュはドヤ顔でアレンに見せつける。そして狙い通りなのかは知らんが、アレンが照れまくりルージュはご満悦なようだ。
「でもアル、あなた。本当に男?女子用の水着を着れば普通に女子に見えると思うんだけど。」
「ルージュもそう思うよね?僕も、アルはカッコいいより可愛いのほうが合うと思うんだ。」
「あ、あはは?そうかな?」
アレンとルージュの言葉に、俺は少し嫌な予感がした。さぁ!プールに行こう!と切り出そうとしたその瞬間、後ろには白い悪魔がいた。
「じゃあ!アルも女の子用の水着着よ!!」
「はっ!?!?」
「拒否権はない!!いくよ〜!!」
いろーーーんな種類の女子用の水着を持ったアイリスはそのバカみたいな身体能力で俺を引っ張り上げ試着室へと放り込む。こんの筋肉バカ、素の身体能力で10万ある奴は違うな。でも大胸筋が当たってたので気をつけたほうがいいですよ。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
アレンも呼び出され、俺を強制的に脱がしファッションショーが始まるのだった。
∇∇∇
「ほんとに、まじで、なんで……???」
「むふふふ!!!可愛いよ!!アルちゃん!」
1時間1000ゴールドで一般開放されている学園の巨大プール。その広さは学園の一つの校舎よりも大きい。俺はそんなプールの端っこで、モジモジしながら蹲っていた。
なんせ、俺が今着ているのはフリフリがついた紺色の可愛らしい女子用の水着。背中や胸の傷は上手くフリフリで隠されていた。なお犯人はアイリス&アレン。あいつら…面白がりやがって…
(今だけはこの無駄にカッコ可愛いすぎる顔面を恨みたい…!!!!)
「ほらアルちゃん行くわよ、せっかく来たのだから目一杯楽しまなきゃ損でしょ?」
「くっそ…それは正論だ…」
俺はプールの端っこから立ち上がり、すでに流れるプールの中に飛び込んでいるアレン&アイリスたちのところへと向かう。ルージュは、未だに俺の女子姿を見て「私より可愛いんですけど…」と言ってくる。やめてくれ、俺のせいじゃない。あとルージュ、お前に勝てるなら俺は水商売に転向するぞ。
「なぁおい、アレ見ろよ…」
「待ってあの子めっちゃ可愛くね?」
「ちょっとボーイッシュな感じだけど、アレもありだな…」
俺がプールへと歩きだすと、周囲からそんな声が聞こえる。ルージュに向けられた言葉だろうと無視していると、ルージュは俺の耳に囁いてきた。
「あなたのことよ?」
「はえっ!?!?」
いやいやそんなわけ、と思った時、俺の魔眼は捉えてしまった。今にも襲い掛かってきそうな性欲を前面に出した男たちの視線を。
(マジかよ…!!!???)
「くそったれがぁぁぁぁぁ!!!!!」
声変わりしてないせいで女っぽい声で叫びながら、流れるプールへと飛び込むのだった。
∇∇∇
「つ…疲れた…」
「はしゃぎすぎなんだよアイリス。ほら、ソフトクリーム買ってきたぞ。」
「ありがとアル…」
数時間も経つと、日は沈んできて人々は帰っていった。今残っているのは家族連れ数人と俺たちだけだ。アイリスとアレンは遊びすぎて今にも寝そうな体勢だが。
「にしてもアル、アルは合宿の時とんでもない化け物と戦ったって聞いたんだけど。」
「ケルリアスのことか。たしかにアレは、凄い強かった。全然死なないし、殺しても蘇るし、油断したらすぐ殺される。」
「アルが負けるって相当だよね。」
そんな会話に入り込んでくるアレン。その両手にはバニラソーダとバニラメロンソーダが握られていた。飲み過ぎじゃない?
「俺は少し、自惚れてたんだと思う。学園で序列一位で、兄様にも一回だけ勝って。だけど今の俺には、決定打が足りない。もっともっと、強くなりたい。」
ケルリアス戦では、ベガが乱入してこなければ確実に負けていた。そしてカグラやルター、後ろに逃げていった学生たちも死んだだろう。俺はそんな中で負けた。それだけは、忘れてはいけない。
「アルもそんなこと考えるんだね。アルはもっと傲岸不遜で余裕がある、そんな人だと思ってた。」
「それって嫌な奴じゃない?」
「いーや、それだけ自信があるってことだよ。いざという時、アルはすっっごく頼りになるからね。」
「じゃあ、堂々としてようかな?」
アレンの無邪気な言葉に、少し救われた気がする。だけど力が足りないのは事実だ。
ケルリアスを葬ったはずだった重力超電磁砲、アレはケルリアス以外なら兄様だって殺せるほどの魔法だ。アレは、煌級魔法の領域に踏み込んでる。もっと研究すれば、煌級魔法の習得も夢じゃない。
それに、まだ早いけど、【神器】の試練も頭には入れておこう。
「まぁ、とりあえずもう帰ろっか。」
男女分かれて更衣室へと向かい、着替える。ようやくこの女装紛いの変態水着姿から脱出できる。
全員着替え終えると、学園から出て確実の家へと歩き始める。すると、アイリスが満足そうな顔を浮かべて話し始めた。
「みんな!今日は楽しかった!」
「僕も。久し振りにみんなで遊んだ気がするよ。」
「ここ最近は鍛錬ばっかだったもんね、アレンは。」
アレンもアイリスもルージュも、みんな強くなろうと努力している。アレンは前回の戦いでユニークスキルを2つ習得したと聞いてるし、アイリスは森中に放たれた劣化版ケルリアスを狩り尽くし60人以上の学生を守った。ルージュも、アレンの覚醒に貢献している。
(俺も、頑張らなきゃな。)
『アルフレッド御一行様。』
「「「「ッッッ!!!」」」」
その時。俺たちの背後からいきなり声をかけられる。振り返るとそこにいたのは、白い仮面と白いフードを着ている怪しげな細い女だった。
(一切気配を感じられなかった…こいつ、相当やるな…)
「お前、誰だ…?」
『私は帝王直属隠密部隊【陽炎】の構成員、レイアトスと申します。此度は、帝王様、そして大将軍様からの伝言をお伝えに参りました。』
「伝言?」
レイアトスと名乗った女は、さりげなく国家機密情報のはずである陽炎の存在をあっさりと告げ話を続ける。夏休み初期に起こる原作のイベント…それは、一つしかない。
『魔神の支配する国、イリス神聖国との戦争に学生部隊として、参加してほしい。詳しい事は明日の15時、帝城にて説明する。それが、帝王様、大将軍様からの伝言です。』
「「「「ッッッ!!!」」」」
魔神の支配する国であり、人間の住む大陸である中央大陸最強の国。【イリス神聖国】との大戦争。その、兵隊命令である。
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