第25話 お伽噺のような英雄譚
「絶対に勝つよ。【正義の
『死ねェェェェッッ!!!!』
ルシファーは狂乱の如き叫びをあげ、黒玉を大量に出現させ飛ばしてくる。だがその全てを、神剣の一振りにて切り落とす。
正義の心、イレブンハート。僕の心が僕なりの正義である限り、悪の攻撃は全て無効化し悪に対しての攻撃力は無限に膨れ上がる。
「皆の笑顔のため、お前を倒す。」
『くそがぁぁぁぁ!!!!!』
ルシファーは絶叫して地面に両手をつける。するとルシファー前方の地面のあらゆる場所から暗黒の炎柱が吹き出す。
僕の全身を覆う正義の纏衣は、暗黒の炎を受けても全て霧散させ無傷で済ます。僕は地を蹴ると地面が爆発し、馬鹿げた速度で炎柱の中を突っ切る。
「【英雄剣】ッッッ!!!!!」
周囲に衝撃波が立ち爆発するほどの速度で駆けた僕は、すれ違いざまにルシファーを大量の肉片になるほど細切れに切り刻む。その断面は青白い光に包まれており、再生を妨害する。
『✳✳✳✳✳✳!!!!!!』
言葉を失いながらも、肉片だけで叫びを上げるルシファー。すると、上空に超巨大な魔法陣が展開され、暗黒の殺傷豪雨が降り注ぐ。
「やばいぞやばいぞ!?」
「おまえらぁ!!死ぬ覚悟をしとけぇ!!」
その魔法陣を見た学生たちは、各々恐怖や絶望を浮かべていたが、今の僕を見ていると不思議と大丈夫な気分となっているようだ。こんな軽口を言えるくらいには。
なら、僕はそれに応えるだけだ。
「【
僕含めた学生全員を覆うように展開される青白い結界。それは降り続ける暗黒の雨を防ぎ切る正義の傘となり、ルシファー自身の暗黒の拳も防いでみせた。
『クソっクソっクソ!!!なにが起きてるんだクソがァッッ!!!!』
「正義のヒーローの、第一歩さ。」
半狂乱になりながら、結界を暗黒雨を収束させた暗黒の拳で叩き割るルシファー。だがその背後にもう、僕はいる。
振り抜く神剣の一閃。それは、一際強く青白い光を放っていて、奴の右腕を切り落とすと、やつはついに右腕を再生できなくなった。
『なんなんだよ!!??こんなの!?理不尽だろぉぉ!!!!』
「理不尽を与えてきたお前に、理不尽を嘆く資格はないッッ!!!!」
逃げようとするルシファーの背中を十文字に切り裂く。左腕をかざして黒槍を放ってくるが容易に躱し、カウンターとして左腕を切断し飛ばれると面倒なので両翼を根元から切り落として地面に叩き落とす。
『グガァァァァ!!!!』
「もう沈め!!」
再生を妨害されバラバラにされたルシファーの取った行動は、自ら自分の体を木っ端微塵にすること。そうすれば僕の再生妨害は及ばず、全て再生することができる。そうして全再生したルシファーは、1000にも及ぶ大量の魔法陣を展開し大量の暗黒槍や暗黒雷、暗黒炎などの魔法をぶつけてくる。
僕は、その全てを神剣の一振りで捻じ伏せた。僕が、一回、剣を振るうだけで数多の魔法も破壊の嵐も止められた。ルシファーは半狂乱というよりもう完全に狂人になりながら、僕の背後に転移し掴みかかってきた。
『絶対にぃぃぃ!!!!殺すぅぅぅぅ!!!』
「そうはさせないッッッ!!!!」
僕の首を締めるルシファーだが、僕に触れた瞬間奴の体は焼け焦げていく。悪の権化たるルシファーにとって、僕を覆う正義の
だが、ルシファーはそんなの気にせず僕の体を締め上げ、僕の体に直に触れて暗黒を叩き込んでくる。その感覚は実に不快で、僕の体が悪意に染められるような気分になった。
(その悪意!!僕はもう受け入れたんだ!悪意も殺意も全部受け入れて、僕は僕の理想のために剣を振るう!!)
「【憤怒の心】ッッッ!!!」
その瞬間、正義の心と憤怒の心が混じり合い純然たるアレンという人物の心だけが残る。心はそのままに、だが、力は足されていく。
『なっ!?神聖の力と悪意の力を、同時に扱うだと!?』
「僕にもう!悪意なんてものは効かない!!」
数字の話をするなら、僕の最大身体能力は20万。正義の心発動中、それも100人以上に想われている今で80万。そして憤怒によって身体能力は150万に昇る。魔力に至っては、もう億の桁にまで到達している。
悪意の侵食を無効化した僕は、首を絞めて上空に昇っていく体から憤怒の力を解放。するとあまりの怒りの力にルシファーは手を離した。一回離せば、もう僕は捕まらない。
「【魔混正勇のツルギ】ッッッ!!!!」
憤怒と正義の組み合わせ。純然たる力の権化が神剣に集約され、それによる数百回の斬撃はたった0.0001秒に行われルシファーの体を細切れに変える。
ルシファーはそのまま地面に落下していくが、僕の左手には憤怒の炎の集約が、神剣には正義の青白い光が集約されていく。
(みんなの想いが、伝わってくる。)
僕に感謝を教えてくれたルージュ。僕に護心を思わせてくれた学生たち。
そして、僕に【憧れ】を与えてくれたアル。アルがどこにいるかはわからないけど、アルが僕のことを信じてくれているという感情が、僕を強くしてくれている。
みんなが僕を信じている。みんなが僕を希望と思ってくれている。そして僕には、それに応える力がある。
愛する人も、尊敬してくれる人たちも、僕に憧れてくれている人も全部守る。そして、いつか必ず僕の憧れを超える。
そんな、お伽噺のような英雄譚を僕は作る。作り上げてみせる。それが、僕の進むべき道だ。
傲慢の悪魔、堕天使ルシファー。お前を倒すことで僕の英雄譚の一ページ目は完成する。
「【英雄の
『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????』
地面にて体を再生したルシファーに、上空から降り注ぐ英雄の一撃。奴の体は、肩から腰にかけて、真っ二つに切り裂かれる。
みんなの想いが一つになった神剣一閃は、堕天使の魂を切り裂いた。ルシファーはもう再生しない。なんの音も鳴らない空間が10秒ほど続いて沈黙が流れる。
(これが、僕の進むべき道。みんなを笑顔にして、ありがとうの言葉を貰う。僕の、お伽噺みたいな英雄譚。)
「僕の、僕達の、勝ちだ!!!!!!!!」
僕は神剣を持った右腕を、高く、高く掲げそう叫ぶ。ルージュはいつ意識を覚ましたかわからないが、僕に思い切り抱き着いてくる。
アルもいつから居たのかわからないが、満足げな顔を浮かべて僕の瞳を見た。そして、次の瞬間…
「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおえおおおおおおおおおえおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」
大歓声。空気が揺れるほどの、学生たちの歓喜の叫びが森中に響き渡り、正真正銘、僕らの勝ちを確信したのだった。
∇∇∇
一週間を予定していた夏合宿は、襲撃者の存在によって4日間で終わった。
襲撃してきた二人は、世界トップで有名な犯罪者組織【
「本当凄かったぞ…アレン…!!!!俺は感動した…!!!」
「いやぁ、僕も、無我夢中で戦ってただけだし…」
「それでもだよ。あの悪魔、レベル100の完全個体だった。それをあんな簡単そうに倒すなんて、俺はもうお前に完全に追い抜かれちゃったよ。」
「いやいや!あれぐらいの力を出すには、ルシファーくらいの本当の悪性を持った奴が相手でみんなからの心からの応援が必要だから、そうそう出せないよ!」
夏合宿の翌日、学校は臨時休校となったため今はアレンとルージュ、アイリスを招待して我が屋敷でおしゃべり会を開催していた。
それにしても、死者はなんとゼロ。ほとんどの生徒がアレンの元にいたのが大きかったのもあるけど、アレンの元にいなかった生徒は、アイリスが助けて回っていたようだ。本人曰く、アレンとアルが頑張ってるから、私も頑張らなきゃ!と思ったらしい。
「僕はアルがあのベガと出会ってたことがびっくりだよ?」
「そうよアルフレッド、ユニークモンスターなんて名だたる冒険者が一生をかけても会えないような超激レアなモンスターなのよ?それに出くわして生き残って、しかも気に入られて祝福されてモンスターから助けてもらうなんて、もう凄いなんて言葉じゃ済ませられないわよ?」
「そ、そうか…?」
とにもかくにも、俺たちは生き残った。原作でもトップクラスに難易度の高い夏合宿イベントを乗り越えてみせたのだ。
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