第18話 完成!ログハウス!


「いやぁぁぁぁ!!!!???」


「姐さん…虫、駄目なんすね…」


森に入って10分も経たない頃、よさげな拠点を建築する場所を探していた時に、人間サイズのデカいカマキリが登場。大の虫嫌いなカグラは普段のキャラなど遥か彼方に忘却し逃げ出した。ギャップすごすぎない?


「えいっ!」


『ギャァァァ!?!?』


逃げ回るカグラはモダンが追い掛け連れ戻すと、カグラの目の前でルビーが無邪気に指を遊ばせる。すると高火力の炎魔法が発動し、炎矢がクソデカカマキリのの上半身を吹き飛ばした。こんな見た目だが、魔法威力は馬鹿げている。


「それにしても、カグラも可愛いとこあるじゃん。虫嫌いなんて。」


「う、うるさいね…別にいいでしょ、ばか…」


「ッ!!!!」


俺が少し高い馬鹿にすると、顔を真っ赤にしながら俯くカグラ。言葉遣いはすっかり素に戻っており、羞恥心に耐えられない様子。ハッキリ言ってギャップすぎて心臓がぎゅん!ってなった。


「むぅぅぅ…!!!」


「な〜んでお前が睨んでくるんだよアイリス。」


「アルは女たらし!!」


「もうお姫様抱っこしないぞ?」


「嘘ですごめんなさい。」


ついさっき惜しまれながらもお姫様抱っこを解除し自力で歩くアイリスは、こうやって脅すと一瞬で静かになる。それを見てモダンは、羨ましいくらいモテるなお前…と言ってくる。


「まぁ、あのカマキリは精々二級程度。一万匹出て来ても問題ないはずだよ。」


「い、一万…」


俺がそう口にすると、カグラは想像してしまったのか気絶する。俺の方に倒れ込んできたので仕方なくお姫様抱っこを発動する。


(ちょっと待て、これだと俺本当に女たらしじゃねえか…?)


「アイリス、これは決して女たらしとかではなく…」


「うん、カグラなら別に良いよ。私だけがアルを独占するのも良くない良くない、アルの魅力は世界中に発信しなきゃ。」


コイツはコイツでなんか怖いが、ひとまずは拠点探しだ。場所の条件はある程度広くて他の班と被らない場所がいいな、最悪、森を切り開けばなんとかなるが。


「なぁアルフレッド、ここらへんとかどうだ?」


最前列を歩くモダンが、森に入ってから30分ほど歩いてそんな事を口にする。そうして広がる景色は、木ばっかの森にしては珍しく、森のボスみたいな大木が1本生えている平原だった。


「中々良いんじゃないか?広いし周りに他の班もいなさそうだ。」


「この大木からは、なんか凄い気配を感じるけどな。」


「それは俺も思った。この木は伐採しないほうが良いだろうな。」


そうして見つけた拠点作成地に、アイリスとルビーは大はしゃぎしながら鬼ごっこを始めてしまった。俺はカグラを抱えたまま、モダンと一緒に大木へと歩み寄り、目を瞑った。


「この場所を貸してください、大木さん。」


「1週間くらいでいなくなるので、ご容赦を。」


俺とモダンは揃って、なぜか敬語になって大木へと挨拶をしてしまった。しかしこれが、俺の本能が告げた最善だった。


「よしみんな!拠点作るぞ!」


「まずは木材集めだな!カグラは置いておいて、手分けして周りの木を切って集めよう!」


俺とモダンによる指揮のもと、木材集めが開始される。カグラを大木の麓で寝かせようと地面に置こうとした瞬間目を覚まし、顔を真っ赤にして再び気絶したのは別のお話。




∇∇∇




「「できた〜!!!」」


「つ、疲れた…」


「アタシのお陰だね。」


「カマキリに襲われて気絶してたくせになぁにいってんの。」


「アンタは黙ってな女たらし!!」


5時間後。カマキリの他にも二級程度のモンスターたくさんに襲われながらも、なんとか拠点は完成した。名建築士(笑)のカグラのデザインセンスはかなり良く、富豪が森で静かに暮らすためのログアウトのような雰囲気の木材建築となった。


中は二階建てで、一階に共有スペースであるリビングやアイリスのキッチンがあり、2階には全員が寝れるくらいの広さの寝室が広がっている。布団や枕、毛布は土魔法を工夫して最大限柔らかくして作ったので最低限寝れるようにはなっているはずだ。


「拠点作るのにかなり時間掛かっちまったな。アルフレッド、このあとはどうする?」


「そうだな。体力が残っている奴は周辺の環境やモンスター、周りの班についての調査と食料確保をしよう。疲れた奴は休んでて大丈夫だぞ。」


拠点作成が終われば、あとは食料の確保と周辺の調査だ。周りにもし特級のモンスターがいたらこの拠点を放りだして逃げる必要性もでてくる。特級モンスターは、特級冒険者が足止めできるくらいの強さのモンスターだからな。


「はいはーい!アイリスちゃんはまだまだ元気だよ〜!」


「ルビー、疲れた…」


「アタシも休みたいよ。」


「俺はまだ動けるな。」


「分かった。じゃあルビーとカグラは拠点で休んでてくれ。出来るなら火起こしをしててくれたら昼飯が早く食えるぞ。アイリスは食料の確保で、モダンは俺と一緒に周辺の調査だ。」


ということで、現在時刻は1時。拠点作りでお腹減ってしょうがない我が班員たちは、アイリスに全てを託した。彼女がなんの食料を取ってくるかによって、我らの胃袋は決まる。




「この森は広い。入口からずっと北西のほうに進んできたからさらに奥に行くと、たしか山岳があるはずだ。山岳には危険なモンスターもいるし、山を越えると【レイン王国】に行ってしまう。」


「レイン王国ってたしか、帝国と仲が悪い国だよね〜?」

 

「その通り、万が一山岳の方に行けば何があるかわからない。だから拠点から出る時はみんなに一声かけるのと、アイリスと俺以外はできるだけ一人で外に出るのはやめてくれ。」


生徒の中でアイリスを倒せるのは全力を出したアレンと俺だけだ。モンスターにしても、特級のモンスターに会わない限り負けはしないだろう。ちなみに、俺がかつて戦った魔傑の王剣は対戦士においては特級の実力を持つ。


そしてこの森の名前は【バックス森林】。帝国の八分の一はこの森であり、ずっと森林を北に進むと他の国にでてしまうほど巨大な森だ。未だ調査はほぼ進んでいないため、あのイベントは起きてしまう。


(一応、警戒しておくか…)


アレンたちに降りかかる異変。それにも警戒を払いつつ、モダンと共に周辺の警戒へと乗り出すのであった。



―――――――――――――――――――――



ちなみに、現時点のアルフレッドのステータスはこんな感じ。


◆◆◆


名前 アルフレッド=シシリス

職業 シシリス侯爵家次男

レベル 78/100

身体能力 9210

魔力   11258000

スキル 《聖級四属性魔法(地水火風)》

《聖級雷魔法》《聖級氷魔法》《上級治癒魔法》《上級空間魔法》《上級重力魔法》《上級磁力魔法》《上級身体強化魔法》《上級光魔法》《上級影魔法》《上級法則魔法》《上級結界魔法》《上級帝国剣技》《上級身体強化》

ユニークスキル 【魔眼】【神器の使い手】

称号 【魔眼の申し子】【魔法の申し子】

   【最凶の悪役】【魔眼の英雄】

   【魔傑】【魔剣の所持者】









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る