第14話 ダンジョン攻略


「ということで、ダンジョンに行きます。」


「なにがということでなんですか?ラグリエル先生?」

  

若い女性教師で、ダンジョン学を担当するラグリエル先生はそんな言葉と共に、俺達Sクラスを帝国周辺で最も危険なダンジョン、推奨レベル70の【竜の巣窟】に来ている。ちなみに、まだ入学してから一月も経っておらず、このダンジョン学の授業は4回目である。


「ダンジョン学は座学だけだと比較的つまらない教科です。故に実践をやることで、より早く覚えることができるのです!」


「ですが先生、このダンジョンは劣化種とはいえドラゴンしかいません。入りたての1年生にはあまりにも厳しいダンジョンではありませんか?」


「良い質問ですねルージュさん。答えは簡単です。アレン君、アルフレッド君、君たちのレベルはいくつですか?」


ルージュの質問に対して、俺とアレンにレベルを答えさせようとする先生。意図が読み取れないが、とりあえず答えよう。


「僕は64です。」

 

「76だ。」  


蜂との交戦から、もっとレベルが必要なことを実感した俺はあれからダンジョンに潜ってモンスターを狩りまくったり、時には兄様に浅草に連れて行ってもらい経験値を稼いだ。それでも70からは全然上がらなくて、未だ76だ。


だが、俺がそう答えると、クラスメイトたちはざわつく。レベル高すぎない?や俺たちと本当に同学年だよね?など様々だが、その言葉の多くが驚愕のものだった?


「彼らのように、頭一つ抜けた生徒をリーダーに四つのチームを作ります。一チーム五人でくんでもらい、このダンジョンの最奥にいるボスを最初に討伐したチームを勝ちとします。」


この人、無茶なことを言っているようで結構考えている。リーダーと共にダンジョンへ行かせることで戦闘経験を安全に積み、全員のレベルを上げる。そして最初の討伐チームを勝ちにすることで、リーダーたちのやる気も上げている。なにより、危険なダンジョンに死の危険を減らして挑める機会を、このSクラスの人たちが逃すわけがないのを理解している。


「Aチームのリーダーはルージュ=バスターさん。メンバーはリック、レイン、プロテア、シャンデラの4人。」


次々と発表されていくチームとメンバー。俺はどうやらDチームのリーダーのようで、各自発表が終わるとリーダーの元へ集まってきた。


「この5人でダンジョンに挑んでもらいます。この後5分を作戦会議の時間とし、5分後にダンジョン突入とさせてもらいますが、異論はありますか?」


誰も異議を唱えることなどしない。全員の了承を取った先生は地面から魔法で椅子を作り出し、そこに座った。


「取りあえず、改めて自己紹介でもしようか。」


「そうだな。俺はジーク=アルバート。剣士でレベルは52だ。」


俺が自己紹介を促すと、最初に名乗り出たのはクールな雰囲気を漂わせる金髪の少年。10歳にしては体格が良く、どこか兄様と似た雰囲気を感じる。背中には一本の剣を背負っていた。


「はいはーい!僕はリューズ=セルメイダ!魔法使いだけど遠距離からの狙撃が得意だよ、炎の銃でドカン!って感じの!レベルは48!よろしくね!」


次に自己紹介をしたのは緑髪の可愛らしい少女リューズ、元気な感じだが魔力量はそこそこだな。見た感じだと20000前後だろう。


「あ、あの…俺、レン。平民で、魔法剣士…レベルは、61…よろしく…」


レンはどこか暗くて長い水色の前髪で顔がよく見えないが、レベルは高く平民出身。魔法も剣も使えるオールラウンダーで、ダンジョンにおいては重宝する役回りだ。平民に対して皆が忌避感を持っていないのが、実力で選ばれたSクラスな雰囲気があってなんか好き。


「私が最後ですね!アルフレッド君は知っていると思いますが!私はエミリア=カルステンです!魔道具師なのでアイテムによる補助ができます!レベルは30ちょいですが、期待はしないでください!」


そう、同じチームにエミリアがいる。ヒロインと楽しくダンジョンにいけるのは嬉しいことだが、魔道具師というだけあってドラゴンに攻撃を食らえば即死なので気をつけたい。


「よし、自己紹介は終わったな。早速だが、俺はこのダンジョンのボスへの道はだいたいわかる。だから、ボス戦のフォーメーションだけ決めておこうと思う。」


「もうなんか、突っ込むのも難しいね!」


俺の言葉に、リューズはあはは〜!と笑った。まぁたしかに、皆が初見のダンジョンなのに一人だけ知ってるのはおかしいか。こちとら数ヶ月前に竜の巣窟はクリアしてるもんでね。


「一番レベルが高いアルフレッドと、近接専門で中衛後衛の盾になれる俺が前衛だな。」


クールさ溢れるジークは、理性的な喋りぐさでパーティーのフォーメーションを決めていく。その意見には賛成だぞ。


「となると、僕とエミリアちゃんは当然後衛だよね!僕は遠距離からの狙撃、エミリアちゃんはアイテムで援護!」


「あぁ、そうしてくれ。レンは魔法剣士だから、前衛のカバーと後衛に行った攻撃を捌いてほしい。」


「わ、わかった…」


レンはなぜか、俺がそう話しかけると目をキラキラさせて泣きそうになっていた。一体何故だろうか?

 

とりあえず、フォーメーションは決まった。冷静なジークにパーティーのやる気を底上げしてくれるリューズ、実力派のレンに補助要員のエミリア。中々良いパーティーだと思う。


「よし、そろそろ約束の5分だ。」


「いや〜早いね〜!!ちょっと緊張してきたよ〜!」


「まぁ、気楽にいこうか。」


俺たちは立ち上がり、ダンジョンの入口である大きな洞窟の前に立つ。そして、先生の合図を待った。


「それじゃあ、授業開始〜!」


パーティーで挑む初ダンジョン、その攻略の幕開けである。

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