逢魔ヶ刻に来たる災厄

第13話 1年Sクラス


「新入生代表、アルフレッド=シシリス。」


最後にそう締めくくり、代表挨拶を終わらせ自分の席へと戻る。現在は帝国学園の栄えある入学式。試験で首席を取った俺は新入生代表挨拶をしなければならかった。


俺が自分の席へと戻ると、隣の席だったアイリスとアレンに「カッコつけすぎだよ?アル!」「流石だね、アル。」などと茶化された。 


「それでは新入生諸君、各自事前に伝えられたクラスへと向かうように。」  


長ったらしい入学式が学園長たる大賢者アラクスの手によって締められると、新入生200名は動き出した。

 

帝国学園は入学試験の点数によってクラス分けがされており、上位20名がSクラスで、そこから20名ごとにA.B.Cとなっていく。俺とアイリス、アレンにルージュと知り合いは全員Sクラスだったので、一緒にSクラスの教室へと向かう。


「いや〜それにしても、アルは制服が似合うねぇ〜」


「そうか?着せられてる感が否めないんだが。」


「アルの顔は帝国一だから、何を着ても似合うよ。僕みたいなフツメンとは大違いさ。」


「アレンだってカッコいいのに、そんな卑下しないでよ。」


「ごめんルージュ、僕を好いてくれる君がいるのに失礼なことを言ったね。」

 

「あ、アレンっ!周りに人がいるのよ…!」


「あ、やば、ごめんっ。」


ルージュとアレンは相変わらずラブラブなご様子で、互いに顔を赤らめている。俺とアイリスはニヤニヤしながらそれを見ているが、こいつら本当に10歳だよな?


(さて、知っているキャラしかいないからそこまで緊張感もないんだよな。)


アレンはそこそこ緊張してるらしいが、そんなのはお構いなしにアイリスが思い切り教室のドアを開ける。そこは高校とかの教室というより、教室サイズの大学の講義室と言ったほうがよさそうな空間が広がっていた。


そして、中にいるのは入学試験上位20人のエリートたち。その顔ぶれは原作で何度も何度も読んだものばっかりで、俺はすっごくテンションが上がってる。


「おい見ろよアレ。」


「皇女様じゃねえか…」


「それに剣聖もいるぞ。」


「英雄だ!俺ファンなんだよね…!」


「それに、首席の…」


「魔眼の英雄…なんだか、凄いメンツだな。」


教室に入ると、至るところから騒ぎが起きる。どうやら一番の原因はやはりルージュのようだが、アレンにアイリス、そして俺も少しは知名度があるようだ。


「ねぇねぇアル、なんで私たちこんな見られてるの?」


「入学試験トップランカーはこんなもんじゃないのか?」


「うぅ…平民上がりだから上級貴族たちに睨まれると緊張する…」


「大丈夫よアレン、いじめてきたらソイツの家潰すから。」


「怖いよルージュ?」


狂愛ってレベルでアレンへの愛情が重いルージュが怖いよちょっと。原作だともう少しツンツンしてた気がするんだけど。


まぁそんなくだらない会話をしながら、教室の一番うしろの列に座る。


「アイリス、お前があぁなったら斬り伏せるからな。」


「なんか今日当たり強いね?心配しなくとも公然でセクハラするほど性欲馬鹿じゃないよ?」


「いかにも私が性欲馬鹿みたいな言い方しないでくれる?」


「違うの?」


「違うし!!」


アイリスは強い。ルージュ相手に普通に性欲馬鹿って言えるのは中々居ないよ。まぁアイリスじゃなきゃ即刻処刑もんだけどな。


「お、全員揃ってるな。」


そんな時、教室のドアが開き一人の男性が入ってくる。サラサラの黒髪でセンターパート、そして可愛い系ではないカッコいい系の極致みたいなイケメンだ。彼は手にファイルを持ち、腰には刀を差している。  


彼が入ってきた瞬間、全員の口は閉じ一斉に静かになる。高い教養を受けてきた貴族たちばかりだから当然だが、ここが普通の小学校であればこうはいかないだろう。


「まずは自己紹介だな。俺はエル=スミス。剣術と軍事座学の担当だ。今年はお前等一年Sクラスの担任になった。よろしくな。」


さらって自己紹介をするエルス。先生らしからぬラフな態度に生徒たちからは初対面で好印象だ。俺も原作で知っているが、エルスはかなり良いキャラだ。特に生徒を庇ってドラゴンに立ち向かうシーンは激アツだった。そのビジュも相まってかなりの人気キャラだったな…


「そんじゃ出席番号1番から自己紹介をしようか。アイリス、お前からだ。」


「ん?私から?」


指名されたアイリスはダルそうにしながらもゆっくりと立ち上がった。


「はいどうも〜アイリスです〜、剣術が得意ですよろしく〜」


ものすごく適当な挨拶だが、彼女の知名度はかなり高いので大抵の人物は知っているだろうから充分だろう。


そんな感じで淡々と自己紹介は進んでいった。ルージュが挨拶をするときだけ周りがざわついたが、おおよそ綺麗に進んだほうだろう。


そうして1時間近くが経った後、エルは教室の扉を開け最後にこう言った。


「今日はおしまいだ。雑談やらなんやらしていて構わないが、明日からは授業が始まる。しっかりと準備しておけよ。」


どうやら今日はこれだけで終わりのようだ。なんだか拍子抜けだが、初日だからこんなものだと考えて勝手に納得する。


そうして俺は立ち上がり、教室を後にしようとする。すると、突然知らない声をかけられる。


「アルフレッド君?だよね。」


「そうだけど…だれだっけ…?」


俺の左腕を掴み歩みを止めたのは、俺と同じく珍しい黒髪をポニーテールにした美少女。その瞳はキラキラ輝いていて、なんだかすごく興奮している様子だ。


「やっぱり本物だ!!大ファンなんです本物のアルフレッド君だカッコいいなぁ!!!!」


「え、ちょ、おま、やめ…!?」


俺が振り返り、その瞳に視線を合わせると彼女は俺の左腕をブンブン振る。ちょっと待って普通に痛いし怖いんだけど何この人。


「ちょっとアンタ離してよ?私のアルだよ?」


「アイリスお前のものでもないがひとまずは助かった、ありがとう。」


「あぁ私ったらまた暴走しちゃった…ごめんなさい!!」


そう言って頭を下げるポニーテールの少女。だがその時、俺は認識した。なぜか原作と髪型が全然違うしテンションがおかしすぎて分からなかったが、その顔をよく見て理解した。


「私はエミリア!、エミリア=カルステン!よろしくね!アルフレッド君!!」


屈託のない笑みで俺を歓迎する彼女の名前はエミリア=カルステン。その名は、黄昏のアルカナ3人のヒロインのうち一人の名前であり、原作でアルフレッドに殺される少女の名前だ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る