第4話 ダンジョンに行こう!


魔法陣を展開、25もの超魔法理論を組み合わせて座標位置を特定。特定した座標に同様な魔法陣を配置し、そちらにも魔力を込める。


そして、自分の足元にも魔法陣を展開。座標先の魔法陣と完全に同様の魔力量を込める。これにて魔法陣の性質を完全一致させることで、転移の条件を満たす。


「【短距離転移ウィル・テレポート】」


刹那。景色が一変、先程までの自室にいたはずなのが現在は屋敷の外、シシリス侯爵家の保有する金済都市シシリスの街中の景色となった。周りには走り回る子供や、営業をかける商人で溢れている。


「よしっ!!!成功だッ!!!」


これこそが中級空間魔法の一つ、短距離転移。100メートル以内を自在に転移することができる魔法であり、これでようやく屋敷を抜け出せた。これを成功させるまでに、魔導書を手に入れてから2週間もの間練習を重ねたのだ。もう嬉しくてしょうがない。


(やっと屋敷を出れた!!これでダンジョンにいける!!)


今の服装は貴族らしい絢爛な服ではなく、革と金属で作られた軽鎧。腰には鋼鉄で作られた両刃剣が差されており、いかにも冒険者という服装だ。身長がまだ小さいから浮いているが、それは御愛嬌。


それもこれも、俺が転移を習得したかったのはダンジョンに挑むため。この世界においてレベルは正義、レベル差が10あれば勝ち目はほぼ無いと言われる世界なのだ。そして、レベルを効率的に上げるにはモンスターを倒すのが手っ取り早い。だから、モンスターがたくさん出てきてお金も稼げるダンジョンに来たかった。


金済都市シシリスは、帝国北部に存在する領土だ。シシリス周辺のダンジョンというと、候補は3つほどある。


1つ目は亡霊の霊園。主にアンデッドモンスターが出現するダンジョンで、出現モンスターのレベルは大体10から20と初心者向けだ。そのかわり、炎属性か聖属性が使えないとアンデッドを殺せないため、攻略不可能となる。


2つ目は巨人の洞窟。主にゴーレムが出現するダンジョンで、出現モンスターのレベルは30以上と難易度は高め。物理攻撃があまり効かないが魔法はよく通るので相性はいい。


3つ目は蒼晶の森林。鳥型や昆虫型、獣型など様々なモンスターが出現する森のダンジョン。出現モンスターのレベルは10から50と幅広く、奥に行けば行くほど難易度が上がり、最深部はランクの高い冒険者も注意が必要なレベルだ。


「ま、行き先はもう決まってるけど。」


俺が今回向かうのは亡霊の霊園。序盤のダンジョンなのに、ボスのレアドロップが原作の中でも屈指のチートアイテムなのだ。今回は、それを狙いに行く。


だが、レアドロップというだけあってドロップ率は驚異の0.01%、対して強くないのが幸いたが、それでも途方もない時間がかかるだろう。


「今は朝の6時、きっと夜遅くまで帰らないと厳しいお叱りが待ってるだろうし、夕方までには帰りたいところだな。」


魔力量?心配しなくていいとも。すでに桁にして6桁を突破してる。一日魔法を使い続けても余るくらいだからね。


「ようし、いっくぞ〜。」


シシリスから30キロほど離れた場所にあるダンジョンだからな、ちょっと遠い。だからついに習得した100メートルを一瞬で移動できる短距離転移を乱打して霊園に向かいましょ。



∇∇∇




「短距離転移クソ楽…」


あれから数分もせずに、目の前に広がる不気味すぎる霊園に到着した。なぜかわからないけど、霊園はドームのような形で覆われており、中はアンデッドが出るだけあって真っ暗だ。


それにしても、短距離転移君優秀すぎない?本来なら歩いてかなり時間掛かる距離を魔力を1000も消費しないで数分でついちゃったよ?もうこれないとやってけないわ…


ちなみに、上級の空間魔法も載ってたけど流石に超魔法理論が150くらいいるって言われたら今すぐ習得するのは無理だわ。改めて原作のアルフレッドのチート加減を感じる。


「ようし、こっからは集中集中。」


霊園の扉を開け、いざダンジョンへ。中に入るとそこはいかにも霊園と呼ぶべき光景で、そこら中にお墓と花があり、暗さが不気味さを増していた。


そして、前方に広がるのはアンデッドの大群。ゾンビにスケルトンにグール、化け物共が10とか20とかそんな桁ではない数で群れていた。もちろん、その敵意は生者である俺に向くわけで…


『『『『『カタカタカタカタ』』』』』

『『『『『ぐおぉぉぉぉ…』』』』』


「【筋力増加ストレングスアップ

 【速度増加スピードアップ

 【器用増加デクスアップ

 【炎付与フレイムエンチャント】」


大量のアンデットがこちらに向けて走り出すのに合わせて、大量の強化魔法を発動。それに加えて鋼鉄の剣に炎を付与し構える。


アンデットの大群の中でも、群を抜いて大きい赤色のゾンビが他のアンデットを押し退けて我先にと俺に飛びついてきた。


「遅い遅い、あのスパルタクソジジイに比べたらナメクジだなァッ!!」 


『ぐおぉぉぉぉ…!!』


全身から腐敗臭漂うゾンビは俺に突進してくるが、その速度は遅い。奴の腕が振り上がった瞬間にはもう剣を振り抜いており、炎剣が赤ゾンビの胴体を真っ二つに裂いた。


(2週間のスパルタ特訓で身体能力は1200まで上昇、強化魔法を使えば5200まで引き上げられる。)


ソレに加えて、全てを見切る魔眼で相手の行動は筒抜けだし、魔眼でスパルタクソジジイことスーザンの動きをコピーしているため、歴戦の剣士のような動きができる。


「でも、俺は魔法使いなんだよね。」


赤ゾンビが死ぬと、他のゾンビたちは理性を失い一斉に飛びかかってくる。俺は冷静に剣を振り上げ、周囲に50もの魔法陣を展開する。


(炎霊魔法陣に超魔法理論を3つ、連動させて威力増加。)


「【炎槍フレイムスピア】」


剣を振り下ろすと、大量の魔法陣から一斉に炎の槍が発射される。一発放たれた直後にもう一発が放たれ、まさに炎槍のマシンガンとなる。


そして、それが起こすは地獄絵図。一発の炎槍が地面にぶつかるたびに爆発を引き起こし、数体のアンデットを倒せるのに、数百発の炎槍が放たれることで、小爆発の連続である。耳が壊れそうだ。


「あちゃ〜、これは、やりすぎたかな?」


一分が経つ頃には、霊園は墓と花以外の全てを壊していた。墓と花は破壊不能オブジェクトなのだろう、これだけやって傷一つ付いていない。


そして残るのは、300個越えの紫色の小さな玉。これこそがモンスターを倒した時に落ちる魔力を持った石、魔石である。今倒したアンデットは一番下のランクである4級のモンスターなため、魔石は小さいが、さらに上のモンスターになるともっと大きな魔石を落とす。


「ま、雑魚相手はもういいかな。レベルも上がんないだろうし。」


黄昏のアルカナにおいて、レベルはかなり重要な要素。正直言って、簡単には上がらない。故にダンジョンボス以外に俺の目的はいないのだ。それに、自分より下のレベルを倒しても経験値はほぼ入らない。


狙うはボス一択。道中のアンデットは全て炎魔法で払い除け、俺はボス部屋に向かうことにした。




∇∇∇



「結構広いな…」


ダンジョンとは、出入り口と中で空間ごと異なる。簡単に言えば、外から見た広さと実際の広さが違うという話だ。


亡霊の霊園に入ってから大体1時間くらいだろうか、原作知識を頼りにひたすらボス部屋へ向かっていたが思いの外モンスターの量も多く、それに広すぎたために結構な時間がかかった。


だが、今目の前にあるのは他の墓地と比べてもかなり広い墓地。外側からは黒い靄が掛かっており中は視認できないが、仰々しい黒い扉があることから、この先がどういう場所なのかは想像がつく。


「やっとボス部屋だよまったく、いくらなんでも遠すぎない?」


原作知識も完璧ではないため、何度か迷子になったせいでもある。だがそれは置いておこう。


残り魔力は120000ほど、1時間モンスターを狩り尽くしたことによりレベルは3ほど上がっているため身体能力数値も伸びている。やはり実戦でのレベルアップは能力値の上昇が高いな。


「そんじゃ、初ボス戦、行きますか。」


軽い足取りで黒い扉を開け、中に入る。そこはたくさんの墓と美しい花たちに囲まれた場所であり、真ん中には2メートルほどの背丈で、どこか煌めいてる鎧と剣を持ったスケルトンがいた。


『カタカタカタカタ…』


「はッ!?」


俺はそこで、思考が停止した。本来の亡霊の霊園のボスは、スケルトンジェネラルと呼ばれる黒い鎧と剣を持つ1メートルちょいのモンスターだ。レベルは30ほどで、そこまで強くもない。


だが、目の前にいるこの歴戦の戦士のような雰囲気を醸し出す大きなスケルトンは明らかに違う。そして俺は知っている。


奴は、いわゆる【レアボス】と呼ばれる類だということを。


「ッッ!?、マジか!?」


次の瞬間、座り込んでいた奴は俺の目の前に接近しており、その剣は振り抜かれていた。


ほぼ脊髄反射で鋼鉄剣を引き抜き、首を狙って振られた剣を受け止める。だが、パワーと体格が違いすぎる。強引に押し込まれ右方向に10メートル以上吹き飛ばされた。


(【魔傑の王剣ディアブロ】!!レベル60の通称『戦士殺し』!!)


アンデット系モンスターのイレギュラー、超低確率でしか出現しない最悪のモンスターが今、現れた。


「っは、レベル差は40以上、戦闘経験も技量もボロ負け。」


魔傑の剣士はカタカタと音を鳴らしながら、再びこちらを向く。そして次の瞬間、深く腰を落とし下段に剣を構えた状態で目の前に現れた。


「丁度いいハンデって奴だなァッ!!!!!」


『ッ!!』


切り上げられる王剣、それに合わせて魔眼の光が一層強くなる。俺の脳天を切り開くはずだった王剣は、虚空を切り裂いた。


「負け犬戦法ヒットアンドアウェイでお相手させていただきますぅ!!!!」


魔眼による見切りと、風魔法と炎魔法を組み合わせた爆発的な加速で全力回避。そして生まれる僅かな隙を、狙い刺す。


「弾幕の嵐をどうぞォォッ!!!!」


思い切り踏みきり10メートル近く空中を飛び上がる、そして奴に向けて鋼鉄剣を向けると無数の魔法陣が出現する。


魔法陣から放たれるのは地水火風雷氷の六属性砲撃。100にも迫る大量のレーザー光線が魔傑の剣士に向けて放たれる。


「あらよっと余所見はいけませんよ奥さんッッッ!!!!」


レーザー光線たちは、目にも留まらぬ速度の剣撃によって悉く撃ち落とされる。だがそれだけで、十分すぎるほどの隙は生まれる。レーザー光線の光や爆音によって姿をくらますことで、奴の背後に回り込む。


鋼鉄剣に付与されるのは空間魔法。剣は白と紫が混ざったような不思議な色を発し、今か今かと放たれるのを待ち望んでいる。


「【空間断撃ディメンションオーバー】ッッッ!!!!」


『ッッ!?』


中断から振り抜かれる紫の剣戟、それは本来ならばレベル差によってかすり傷にしかならないはずが、魔傑の剣士の背中を横一文字に大きく切り裂き、大ダメージを与えた。


(普通の斬撃じゃレベル差でダメージが通らない。ならば、切り裂くべきは敵ではなく敵のいる空間!!)


自らが存在する空間を切り裂かれれば、防御は不可能。その分、とてつもない集中力と魔力を消費するが、短距離転移を御した今の俺ならば容易い術式だ。


『ッッ!!!』


「っとあぶねぇなぁ!?!?」


その瞬間、ダメージに臆することなく回転斬りを繰り出した魔傑の剣士。だがそれは、風と炎の組み合わせによる加速で回避。さらに攻撃は止めない。


「あはははは!!!!楽しいなぁ骨っころォォ!!!!」


再び空中に飛び上がった俺は鋼鉄剣を掲げ、現時点での最大魔法行使数である300まで魔法陣を展開。その色は全て、【紫】である。


「空間破壊光線のお出ましだァ!!存分に味わえよォォ!!!」


刹那。全ての魔法陣から放たれる空間を壊す光線。防御も迎撃も不可能と判断した魔傑の剣士は、全力の回避を選択した。


だが、そんなのは一番読みやすい行動である。


「そりゃ、逃げるよなァァァ!!!!」


『ッッッ!!??』


俺の魔眼ですら不意打ちだと見切れない速度の走りで光線から逃げ回る魔傑の剣士。だがいきなり光線は止み、奴は動きを止める。


その瞬間、奴の全身は物凄い勢いで地面へと叩きつけられ、縫い付けられる。まるで、上から圧力をかけられているみたいに。


(まだ初級しか使えないが汎用性最高だな重力魔法!!)


「相性が悪かったな戦士殺し!!俺は戦士じゃねえんだよォォ!!!」


『ッッッッ!!!!???』


身体強化を再度発動、鋼鉄剣には空間破壊の魔法を付与し炎風によって距離をかき消す。剣は既に、振り上げられている。


戦士殺しは地面に縫い付けられ動けぬまま、その目の前まで振り上げられる剣。勝敗は喫したようなものだ。


「【空間断撃ディメンションオーバー】ァァァッッッ!!!!!」


振り落とされる空壊の一閃。それは、本来傷をつけることのできない魔傑の胴体を、肩から真っ二つに切り裂くのだった。


籠められた異常なまでの魔力が爆発し、周囲に突風と土煙が舞い起こる。だが、勝負は終わった。


【魔傑の王剣を討伐しました

 レベルが上昇します

 スキル《吸魔》を習得しました

 スキル《魔剣使い》を習得しました】




「俺が戦士だったら、絶対負けてたよ。」


魔傑の王剣ディアブロの肉体は黒い灰へとなりこの世から消え失せる。そして、墓地の最奥に煌びやかな装飾がされた宝箱が出現する。


(思わぬ誤算どころか、最高の報酬が手に入っちまったな。)


俺はゆっくりと歩き、宝箱を開ける。そこにあったのは、刀身は白く、鍔は蒼く、柄も白い俺より大きな【大剣】だった。


◆◆◆


【前奏:魔傑の荒剣プレリュード・サンブレイク


魔天の英傑が残した最後の剣。喰らうは神、奪うは天、荒れる世界を切り開く。その剣、未だ前奏の段。


◆◆◆




―――――――――――――――――――――




名前 アルフレッド=シシリス

職業 シシリス侯爵家次男

レベル 35/100

身体能力 4210

魔力   721500

スキル 《上級炎魔法》《上級水魔法》《上級風魔法》《上級土魔法》《上級雷魔法》《上級氷魔法》《上級治癒魔法》《中級空間魔法》《初級空間魔法》《上級帝国剣技》《上級強化魔法》《吸魔》《魔剣使い》

ユニークスキル 【魔眼】【神器の使い手】

称号 【魔眼の申し子】【魔法の申し子】

   【魔傑】【魔剣の所持者】


◆◆◆


な〜んかどんどん壊れていきますねぇ?ちなみに原作のアルフレッドはこんなもんじゃありません。もっと理不尽チート設定なんですよ























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