幕間 出来るだけ離れないでいたいと願うのは

 美鈴が急に外泊すると言うので、不安で眠れなくなった。

 理由を聞いても教えてくれなさそうだったので、聞かなかった。

 一緒に住み始めてから、美鈴が外泊したことも、バイト先の飲み会に出たこともなかった。

 まさか、男ができたのか?

 美鈴に限ってそんなことが…無いとは言えない。

 そもそも、私が美鈴の何を知っているんだろう。

 照れた顔がめちゃくちゃかわいいとか…?

 あとは、私があげたネックレスを毎日してくれているとか。

 それからそれから…とか考えてると割と美鈴のことを知っているなと思った。

 えらいぞ、私。美鈴をよく見ている。

 美鈴について知っていることを挙げていったら、ひつじを数えるように眠れるかもしれない。無理か。

 もちろん、知らないこともある。

 今、美鈴が何を考えているのかとかね。

 なんで、急に外泊するとか言い出したんだろう。

 ベッドで寝転びながら、思い当たる節を考える。

 考えれば考えるだけわからなくなった。

 私は美鈴のことが恋愛感情の意味で大好きだから、出来るだけ離れないでいたいと願ってる。

 美鈴はそう思ってないのかもしれない。

 でも、それなら、一緒に住もうと言った時に断ったはず。

 だから、美鈴もきっと私のことが大好きに違いない。(QED。証明終了。)

 完璧な証明をしてしまったなどと、自画自賛していたら時刻は4時半を回っていた。

 結局、全然寝られていない。今日は特に予定もないからいいけど。

 どうせなら、美鈴が帰るまで起きてようか。

 始発で帰るなら、5時過ぎだろうか。始発で帰って来る保証はないけど。

 そういえば、美鈴も今日は特に予定がないと言っていた気がする。

 なら、1日中一緒にいられるということか。

 それを考えたら、ますます眠れなくなってベッドから起き上がった。

 大学を卒業するまで、どうやったら美鈴との時間を長くできるだろうか。

 一緒に住めば、一緒の時間が高校生の時までより増えると思ったら、そうはいかなかった。

 お金は全部出すって言ったのに美鈴は首を縦には振らなかった。

 美鈴はそういうところがきっちりしているから、納得できちゃったんだけど。

 だから、美鈴はバイトに時間を使ってしまい、結局私といる時間は少ない。ひとつ屋根の下で寝ている時間を除けば、高校時代よりも短いかもしれない。

「こんなの思ってたのと違うよねえ…」

 一睡もしていない早朝のテンションで口に出す。

 そうだ、お金が重要だというなら私が美鈴を雇えばいいんじゃないか。

 今世紀最高のアイデアが浮かんだと同時に、美鈴が帰ってきた。


「おかえり、美鈴。はや…いや、遅い?」

「ただいま。」

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