第3話 いつも通り、どこか非日常な一日

「やべぇ!2日連続で遅刻しちまう!」

昨日、他校の不良どもと戦った俺は、石神に2時間ほど尋問されてから、家に帰ったため、寝る準備が全て終わったのは、十二時を回ったころだった。

「さすがに2日連続遅刻は許されないぞ!まずい、まずいですよ!先輩!」


問題の石神は、なんと昨日は快眠だったようで、既に教室にいるのだそう。

控え目に言ってふざけている。

絶対にあいつを殴り飛ばしたる。


とか、考えながら走っていると、曲がり角から見知った声が聞こえてきた。


「やっばーい!遅刻遅刻!」

やはり水瀬であった。

昨日はさすがに疲れたのだろう、寝坊してても何も疑問ではない。


「よう、水瀬、清々しい朝だな!」

水瀬は少し驚いたようだが、

「おはよう!優君!また寝坊?」

「そんなところだ!そっちも寝坊だろ?」

「うん、昨日はちょっと疲れちゃってねー。」

「無理もない、なんだったら今日は、休んでも良かったんじゃないか?」

「そっちこそ、昨日は疲れたんじゃないの?」

「ああいうのには慣れているからな、元気ピンピンだよぉ!」

「五◯悟やめてwww」


こんな下らない雑談をしながら走っていると、校門が見えてきた。

いつも通りの教頭だった。


「ハッハッハッハッ、どこに行こうと言うのかね、鬼ごっこは終わりだ。小僧から石を取り戻せ。ハッハッハッ。」


全然いつも通りじゃなかった、なんだあれ、

ム◯カじゃないか!

朝からいい年したオッサンがコスプレすんな!

あ!ム◯カが校門を閉じようとしている!


「水瀬!ム◯カに対して有効なのはなんだと思う?」

「そりゃあ決まってるでしょ。」

「じゃあ、やろうか。」

「おっけー」


俺たちは教頭もといム◯カの前に立ち、

手を握り合って、叫んだ。


「「バ◯ス!!!!」」


ム◯カは膝から崩れ落ち、

「目がぁぁ!目がぁぁ!」と目を押さえて痛がりだした。

「ヨシ!今だ!」

「うん!」

俺たちはそのまま校門を走り抜け、教室へ向かった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜教室〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「あっぶねぇ、間に合ったぁー。」

「ね、ほんと危なかった。」


キーンコーンカーンコーン


俺たちが教室に着いたと同時にチャイムが鳴った。チャイムの合図で担任が教室に入ってきた。

「はーい、ホームルームを始めるよー。まだ席についてないやつは席につけー。」

「あと、後ろにいるパ◯ーとシー◯、もうバ◯スしたろ、さっさと手を離して席に座れ。」


俺たちはふと目を合わせて、互いの手を見た。


       「「あ」」


なんと俺たち、手を繋いだまま教室に入っていたのである!

男子からは嫉妬の目線を、女子からは好奇の目線を受けながら、互いに顔を赤くして自分たちの席へと座ったのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜昼休み〜〜〜〜〜〜〜〜〜


昼休み、水瀬が昨日のお礼がしたいと言って、

屋上に連れてこられていた。


「あの優君、これ、あげる。」

水瀬がなんと弁当を作って来てくれたようだ。

「マジで?食べて良いの?」

「うん!昨日のお礼だよ!」

「ほんとにありがとう!めっちゃ嬉しい!」


ん?水瀬がなにやらモジモジしている。


「あ、あの、優君、もし良かったらなんだけど、感想とかも聞かせてもらいたいな…なんて。」

「なんだそんなことか、もちろん、感想を言わせてもらおうかな。」

「じゃあ、いただきます。」


水瀬の弁当を一口食べてみる。最初は卵焼きだ。

卵焼きとはシンプルながら技量が求められる料理であり、焼き加減、味、食感の3つがバランス良くなっていれば、最高の卵焼きとなる。


水瀬の作った卵焼きは、甘めの味付けであり、食感はふわふわ、焼き加減も丁度いい、とても美味しい卵焼きとなっていた。


「水瀬、これ、めちゃくちゃ美味しいよ!」

「良かったぁ、優君が気に入ってくれて!私、料理を前々から練習してたんだけど、どうしても自信が持てなくて。」

「これはもっと自信持って良いレベルだよ、こんな美味しい卵焼き、初めて食べた!」

水瀬はとてもうれしそうだ。


その後も、水瀬の弁当を食べ続け、完食したのだが、どれも絶品で美味しかった。


「優君がそこまで喜んでくれるならこれからも作ってきちゃおうかなぁ。」

「マジで?大丈夫なのか?」

「うん、優君のためなら作ってきてあげるよ。それに、いつも購買でなにかを買ってお腹満たしてるでしょ。身体に悪いよ。」

「うーん、分かった、水瀬がそこまで言うならお願いしちゃおうかな。」

「やった!じゃあ、明日も作ってくるから、昼休みは屋上で一緒に食べようね!」


とても嬉しいお誘いだ。喜んで受けるとしよう。だが、気になっていることが一つある。

「ああ、分かった。……で、屋上に入ってくるドアの前で、覗き見している変態さんは誰だろうなぁ。」


「なんでバレるんだよ、意味わかんねー。」

「やっぱり石神か、いつから見てた?」

「え?最初からに決まってるじゃないか。」


石神をとりあえずエビ固めしながら、

「じゃあ、お弁当ありがとう!とても美味しかった!」

「う、うん、ありがとう!じゃあまた明日ここで食べよう!優君の親御さんに負けないような料理を作ってあげるからね!」 


水瀬が屋上から出ていった。




「………親、か。」

「優、弁当を作ってもらえるようになってよかったな!( ̄ー ̄)bグッ!」

「うるせぇ、お前はちょい黙ってろ。」

「ああ、わかったからそれ以上は関節極めないで、死んじゃうからぁぁぁぁ!」


今日もいつも通り、石神の悲鳴が校舎内に響くのだった。

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