第2話 いつも通りの殴り合い

〜水瀬視点〜


〜公園〜


どうしてこうなっちゃったんだろう。

今、私の周りには体格の良い男子達が複数人立っている。

私はいつも通り家に帰ってただけなのに…!


「はやく食べちまおうぜ、ポリ公が来るぞ。」

「いや、いたぶってからの方が良い。その方が従順になる。」


私をどうするか話し合っている。

この隙に逃げないと!


「おっと、お姉ちゃん、逃げんなよ。」

「ぐほッ」


お腹を蹴られた。胃の中身が飛び出そうになったけど堪えた。なにも考えられない。


「おいおいはやくヤッちまおうぜ、コイツ逃げそうだぞ。」

「じゃあ、ヤるか、噂どおりのいい身体つきじゃねぇか。オマケに美人ときたもんだ。」


ヤダ、こんな人たちに襲われるなんて。



「……助け…て。」


「あ?なんか言ったか姉ちゃん?」


「……お願い…誰か助けて…!」

「ああ、任せろ。」


突然、目の前にいた男が横に吹っ飛んだ。



〜優視点〜


あぶねー、なんとか間に合った。

水瀬が落とし物してて助かったぜ。

にしても、

「痛ってー!ドロップキックなんてするもんじゃねぇわ!」

「石神、水瀬を頼む!」

「分かった!優、お前はどうする!」

「コイツらを片付ける。」


他校の不良どもが各々、構えを取った。

俺も臨戦態勢に入る。


「さて、先に名乗っておこうか。藤宮彼岸流ふじみやひがんりゅう六段、 藤宮優とうのみやすぐるだ!」


鉄パイプを持った男が殴りかかってきた。

鉄パイプを上手うわてで受け、鉄パイプを引き寄せて、相手の手首を取る。

相手の腕は伸び切っているので、手首を極めて、鉄パイプを落とす。

すぐさま相手の内に入り、手刀で首を打つ。


「1人目。」


「うおぉぉぉぉお!」

ナイフを持った男が突いてきた。

ナイフは内で受け、外側まで流すと、相手の脇腹に隙ができる。

次に脇腹を拳で突き、フックの要領でさらに横から突く。

「ゲホッ」

相手が前のめりになった瞬間に顔へ膝蹴りをお見舞いする。


「2人目。」


「このやろぉぉぉ!!」

「死ねぇぇぇぇ!」


最後の2人が同時に殴りかかって来た。

まず1人目の拳を避け、前に重心が移動する時に、相手の斜め前に流れるように入り、中段に廻し蹴り。1人目を後ろによろめかした瞬間、2人目の拳が、俺の目の前を通過。

次に2人目の胸を軽く、だが、衝撃はあるように、2人目の殴ってきた勢いを利用し、膝で打つ。

1人目と2人目の立ち位置の俺からの距離同じ位になった時…


藤宮彼岸流格闘術弐型

【双天穿ち】


両方の顎を打ち抜くように、前へ強く踏み込み、顎を掌底で捉える。

まともに喰らえば一発で脳震盪だ。


「ふぅ、お終い。」


〜水瀬視点〜


目の前で何が起きているのか、全く分からなかった。

優君が最初に突っ込んできて、そこからまだ一分も経っていない。

ただ、目の前で繰り出される鮮やかな技に見惚れていた。


「やっぱ優は凄まじいな、ありゃ化け物だろ。大丈夫か?水瀬サン。あんな奴らに囲まれたんだ、怖かったろう。」

「う、うん。ありがとう!でも、もう大丈夫。優君たちが来てくれたから!え、えーと、優君のお友達さん?」

「石神 健人だ、どうした水瀬サン?」

「石神君、…優君て何者?」

「俺にもわからん。ただ、以前、古武術をやっているとか言っていたわ。」

「そうなんだ、でも、あのレベルまで成長するのにどれだけの時間が掛かっんだろう。」


〜優視点〜


「大丈夫だった!?水瀬!」

俺は水瀬に駆け寄った。

「うん、もう大丈夫だよ!ありがとう!助けてくれて。」

「大したことじゃないさ、友人が助けを求めていたら助けるのは当然だろ。」

「それでも!助けてくれてありがとう。」


「あのー、お二人さん、二人の世界に入るのは良いが、俺の目の届かない所でしてくれないか。」

俺と水瀬はハッとして目を逸らした。

水瀬は恥ずかしくなってしまったのか、

「ご、ごめん。迷惑だったよね。今日はありがとう!また明日!」

と、言って走っていってしまった。


「で、優くぅーん。」

「は、はい。」

なにやら嫌な予感がする…。

「水瀬サンとは仲が最初から良さげだったよねぇ〜、しかも、下の名前呼び!」

「お前と水瀬サンに何があった、詳しく聞かせろや。」


………今日、帰るのは遅くなりそうだ。




〜その夜〜


〜水瀬視点〜


私は寝る準備が整うと、真っ先にベッドに飛び込んだ。


「はぁ~、今日は疲れたなぁ。あんな事件も起こったし。」


にしても、優君、かっこよかったなぁ。


顔が赤くなっていることに気づいた私は、自分自身で恥ずかしくなってしまい、枕に顔を潜り込ませ、しばらくの間バタバタしていた。




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