第2話 骸骨と無自覚攻撃

 僕たちは目的の暗闇のダンジョンに赴いた。

 暗闇のいうだけのことはある。奥に行けば行くほど暗くなり、水の光も魔石の光も存在しない。火の魔法を頼りに歩まなければ、死ぬ。それほど、恐ろしい場所だ。

 だけど、骸骨程度なら勝てると思って、ここにいるのだから。勝てる自信はないが、勝つことで死ぬ確率は下がる。ここでのことが起きないかぎりは。

 毎回恒例のアサチの掛け声で冒険は始まる。

「みんな、行くぞー!!」

「「おー!!」」

「……っお……」

 カオミが初めて乗ったような気がした。

 掛け声とともに目的の場所・暗闇のダンジョンを入って行った。


 街灯もなければ、太陽の光もない。一面暗闇のところで、カアサによる炎の魔法が発動した。

「カアサ、火を頼む!」

 カアサは天に炎の魔法陣を展開させ、詠唱を唱える。

「呼び起こせ、紅蓮の炎神えんしんよ。私に爆炎なる力を!!」

「縮炎の灯火ユグナル・ドカラ!!」

 魔法陣から小さな炎がポッと出てきた。

 可愛らしい炎だ。だが、これは照らす専用の炎なのだ。

「よくやった!カアサ」

 アサチはカアサの頭を撫でている。

 カアサは、やめてほしいのか嫌がっているのか分からないが、なぜか照れている。

 魔物が来たらどうすればいいのだ。

 2人の様子を見て、僕はカバーできるように構えた。

 我に返った2人は、残りの2人に謝って気を戻した。

「進むぞ!俺に着いてこい!」

 アサチを先導して、進むこと数分。

 今回初めての骸骨との出会い。

 なぜ、骸骨が僕たちの前に現れたのかは分からない。なにしろ、深く潜らなければ遭遇しないのだから。

 骸骨は錆びた剣をゆっくりと回しながら、僕たちの方に近づいてくる。

 その速さで人間を倒せると思うなよ。

「骸骨を倒すぞ!!」

 アサチの掛け声よりも前に体が出ていた。

 初の骸骨退治ができる喜びが、先に出ていたからだ。

「……なっ!?……おい!!アルウ、俺より前に行くな!!」

 アサチに肩を掴まれそうになったが、その手を払いのけた途端、笑みがこぼれた。「楽しいね!」とだけ言い残して、骸骨に突進した。


 骸骨はアルウの目の前で止まった。

「カッカッカッカッ……」

 歯を打ち鳴らすだけで、襲ってこない。

「うおおおぉりゃゃゃゃ!!」

 威勢に比べると、アルウは小さな子がやるような弱い威力のパンチで骸骨に当てた。

「……」

 その攻撃を見て、口が動かなかった。

 何が起きたんだ!?理解が出来なかった。最弱パーティーは骸骨1体でも苦戦すると思っていた。だけど、見事にアルウは骸骨を倒してしまった。

 俺は近くにいた2人を見た。

 彼女も感情が失われているようだ。そんな顔をしている。

「まさか、ね」

「……」

「だよな」

 俺たちは笑いと無言でその場を終わらそうとした。だが、現実が現実だ。アルウを見ていると思い出してしまう。


 僕のパンチを当てただけなのに、なんで散っていったんだ。強い方でもないのに、ワンパンで倒せるものなのか?いや、それはないな。

 僕の頭の中は、倒したという言葉しかない。

 3人が褒めながら、近づいてくる。

「すごいじゃん!」

「……」

「すごい!」

 2人とは違って、カオミは無口だけど肩を叩いて、微笑んだ。

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最弱パーティーから追放されたので、勇者パーティーに入ることにしました。 ゴブスラ @Gobusura

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