第11話 インディペンデンス級戦闘艦です。

 12月の末となり、世間はクリスマスやらハッピーニューイヤーやらの明るい雰囲気で満ちていた。街の露店には花火や爆竹が並び始めている。新年には、これらをぶっ放すのが、ドイツ流の新年の過ごし方である。


 コハネに新年の迎え方を聞いてみると、日本人は、「除夜の鐘」を聞きながら、穏やかに新年を迎えるらしい。文化の違いというやつだな。



 さて、我々シーラインは、フランクフルト空港から飛び立って、大西洋を跨ぎアメリカへ。メンバーは、海物との戦闘及び通訳のハンナ、シーライン代表として私、そして補佐役のコハネだ。


 我々の移動は、専用のチャーター機にて行われた。ハンナの専用の重火器やフライブーツなどの機器は、旅客機では運べないだろう・・・というか、そもそもハンナの存在自体が金属探知機に引っ掛かってしまうだろう。


 私たちを出迎えたアメリカ軍兵士は一言。「」


会話は、翻訳機能を搭載したハンナを通して行われる。私が外国語に疎い代わりに、ハンナは英語、フランス語、ドイツ語、日本語、ロシア語、イタリア語等を理解して、放すことができる。



 で、私たちは空港から軍用機で直接、ノーフォーク海軍基地に連れていかれた。用意されていた、予備役の軍艦に乗り込んで、大西洋へと漕ぎ出した。


「任務は、大西洋における海物たちの殲滅あるいは、艦船の武装解除です。私たちが乗っているのは、インディペンデンス級という軍艦。トイレもバスルームも、綺麗に完備されているそうです。」


 海軍兵士が口頭で説明している内容を、即時に聞き取ったハンナがドイツ語に翻訳してくれている。そのお陰で、私もコハネもそれを理解するに至れている。


 窓の外を眺めてみれば、昼下がりの陽光を煌々と反射する大西洋の青い海が臨まれた。


「作戦期間は、約2週間だそうです。その中で、海物たちが支配する艦船を発見、捕縛、簡単な調査をするそうです。」


 なるほど。ということは我々は、2週間は海に揺られ続けるということか。コハネの船酔いが心配であったが、流石は米国の軍艦。横揺れが少なく、地上に立っているのと大して変わらない。


 一通りの説明が完了して、私たちは自室に案内された。一部屋、丸々貸し出してくれるらしい。なんという厚待遇であるか。しかしながら、ハンナとコハネという女性二人と同部屋であることは、少し気になる・・・


「マイスター、お着替えの時は、部屋の外で待っていてくださいね・・・お願いしますよ!?決して、覗いたりとか、そういうことは厳禁でお願いします。」


「はいはい。」


 人間らしい恥じらいを見せるハンナ。私は、ちょっと嬉しかった。


 


 昼食を兵士たちと共に済ませた私たちは、次に艦船の甲板に案内された。



 兵士の説明のハンナ翻訳によれば、対海物の装備は万全とのこと。今回のターゲットは海物どもが乗る「幽霊船」ということで、対艦の装備が中心となっているらしい。


 前方甲板の速射砲の射撃を試しに見せてもらったが、その射撃時の音の大きさと衝撃に驚かされたものだ。コハネは、図らずとも尻餅をついたのだ。私の鼓膜も、鋭い耳鳴りに教われたものだ。


 後方甲板にはヘリコプターが多数運用されていた。ハンナの戦闘支援や、「幽霊船」への乗船を行えるという優れもの。


「流石アメリカ様って感じだな。これが予備役の船って、マジかよ・・・」


 私が、軍艦の全貌を見渡していると、説明約だった兵士が歩み寄ってきて、私の肩を軽く叩いた。彼は、たどたどしいドイツ語でこう言った。「そう思うだろ?ブラザー。」



 なんだ、ドイツ語分かるのか。



 任務は明日の午後から。それまで私たちは、大西洋の潮風を鼻腔に感じながら、海の旅を満喫していた。食事もおいしいし、トイレも綺麗だし、寝床もそこまで手狭でないし、至れり尽くせりだった。


 

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