昔エッチをした女と久しぶりに会った。僕たちはどうしてこうなってしまったのだろう。
☆☆☆公開日☆☆☆
2023年8月13日
☆☆☆キャッチコピー☆☆☆
どうしてこうなってしまったのだろう
☆☆☆紹介文☆☆☆
少し切ない短編物語になっています。
中学生のときに成り行きでエッチをしてしまった僕という設定です。
その僕と昔エッチをした彼女をとりまく心境を見ていただけると幸いです。
☆☆☆本文☆☆☆
『ちょうど東京に来てるんだけど会えない?』
今日の朝7:00。
僕のスマホにそんなメッセージの通知が届いていた。
SNSのアイコンはどこか懐かしい、見覚えのあるのだったが、それが誰のものであるか思い出せない。
随分と前の記憶にある人なのだろうか。
今朝の僕はそんな眠たげな思いのなかで、過去の人物との接点を再び持つことになったのだった。
★★★★★★★★★★
「まさか、青葉からラインが来てるなんて思いもしなかったよ。アイコンずっと変えてないのな、中学のころから」
「まーね。私ってさ、ほら。結構サバサバしてるでしょ」
「関係あるの?」
「うーん、しょーみわかんない」
「うっわ、しょーみって言葉なっつ!!!!」
「ねー。中学時代のときなんか、教室中がしょーみで溢れてたよね。なんかそのときの芸能人の口癖だったんかな?」
「なー。いま思い返すと、なんで?ってこと多いよな」
僕は中学時代の友達だった、青葉と再会していた。
身長は少し伸びただろうか。青葉は成長が早かったせいか、そんなに身長は今と昔とでは変わっていないような気がする。
それに反して、胸はかなり大きくなっていた。
僕がそのことに驚いていることを感じ取ったのだろう。
「胸、大きくなったでしょ」
「ん、ああ」
「もう~そんなに気まずくならないでよ、胸くらいで。私たちもう大人でしょ?」
「ああ、まあ……」
「相変わらず、下ネタのことになると挙動不審になるのは変わってないね」
「あははは」
そういえばそうだった。僕は中学時代、みんながみんな性的関心が強くなっていくなかで、その流れに乗っかれないでいた生徒の一人だった。
簡単に言うと、怖かったのだ。あの一人で初めて射精をしたときのあの、絶望感。なにか自分が自分でなくなってしまったような、消失感。
しかし、そんなみんなのなかでも僕は早々に童貞を卒業した。
そうだ。目の前にいる青葉。
僕は彼女と中学時代に一回寝たことがあった。
興味本位だったのだ。
二人とも。
青葉のほうから誘ってきて、僕はそれに流されるまま。
気持ち良かったのに、気持ち悪かった。
心のなかにぽっかり穴が開いてしまったような、そんな気がした。
青葉とはそれ以来、会うのが恥ずかしくなってしまい、今に至るまで何も接点を持ってこなかった。
どうして僕は今日会おうと思ったのだろう。
青葉と。
こんな過去があるというのに。
どうして僕は青葉と会うことを望んでしまったのだろう。。。
「ねぇ、〇〇君。まだあれから一回もしてないでしょ?」
「……え??」
「セックスしてないでしょ。私以外と」
青葉はふと、そんなことを言ってきた。
どうしてだろう。
急に青葉は申し訳ない顔をして、そんなことを言うのだ。
「ど、どうして急にそんなこと」
「謝りたくって。中学のときのこと」
「え、どうして。あれは僕が……」
「……私ね。あのとき〇〇君が好きだったんだ。とても。だからね、寝たの。中学生の抑制のきかない忠実な性欲を利用して。私ってね、とっても打算的な人間なんだ。〇〇君なら、こうすれば私と寝てくれるってわかってた。ごめんね。気持ちを考えられなくって。辛い思いさせちゃった」
「ちょ、ちょっとまって!!! どうして君が謝るの?? ぼ、ぼくが。僕が君に悪いことをしたのに。あのとき、終わったときに僕は君にひどいこと言った。あの言葉ときみの顔が今でも頭から離れない。ぼくは取り返しのつかないことをしてしまった」
僕はカフェに流れるクラシックを踏みにじるような声で、青葉に自分の気持ちを吐き出した。
ほんとに自分勝手だと思う。
ほんとにみっともない男だと思う。
謝りたかった? 取返しの付かないこと?
僕は自分で自分を縛り上げて、罪を少しでも軽くしようと、そう思っていたのかもしれない。
「〇〇君。私ね、大人になるの。もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだ。妊娠2か月」
「……」
「私ね、ずっとずっと〇〇君のこと好きだったの。でもね、人生ってね、とっても残酷なの。短いの。本能が訴えかけてくるの。社会が私に訴えかけてくるの。自分の遺伝子を残せってね。結婚しろってね」
「……」
「両親が泣くの。はやく子供の顔を見せてくれって。あはは……。ほんとうにさ……。歳を重ねるとね、不思議と社会に飲み込まれていくね。はぁ……。私はどうしてこんな人間になってしまったんだろう」
「……」
「ごめんね。私ばっかりしゃべっちゃって」
青葉は少しだけ涙目になりながら、そんなことを一気に言った。
とても後悔しているような、そんな様子だった。
顔に皺が少しだができていた。
僕たちはいつのまにか歳をとっていた。
僕は大学で博士号を取得して、今年新卒入社したばかり。一方で彼女は地方で新しい家族を作って、これからの世代を育んでいく親として生きていこうとしていた。
「ねぇ……最後にこれだけ聞かせてくれいないかな」
「ん……」
僕はいまにも泣き出しそうだった。
胸がいっぱいだった。
僕は僕の面倒くさい性格と、誰にも理解されないくらいに意固地な気質で、いままで何も考えることなく生きてしまっていた。
罪と後悔ばかりが人生を刻んでいた。
「〇〇君は私のこと少しでも好きでいてくれた?」
青葉は一筋の涙を流した。
その顔はもうすでに、中学生のときの青葉ではなかった。
僕の知っている青葉ではなかった。
一人の人間の、たった一つの人生だった。
「僕は……」
★★★★★★★★★★★
「そう、そこ」
「入れるよ」
「うん……」
『カァカァカァ……』
「あっ……」
「ん……」
『ァカァカァカァ』
「気持ちいいね」
「……」
「……どうして泣いてるの」
「ううう……」
『カァカァカァカァカァカァカァカァ………』
「出ちゃったね」
「…………」
「……大好きだよ〇〇君」
★★★★★★★★
青葉が帰っていった。
最後の言葉を残して。
僕のもとから帰っていった。
「〇〇君は〇〇君らしくいてね」
「らしくって……なんだよ」
「それはさ……」
青葉は雑踏のなか、僕だけを見つめて。
「君にしか分からないんじゃないかな」
青葉ははにかみを残して、人込みのなかに吸い込まれていった。
僕はまた一人になった。
これからどうしていこう。
もう僕の思い出は消えてしまったのかもしれない。
僕はまた振り出しに戻るべきなのだろうか。
「ふぅ……」
都会の空気が僕を飲み込んでしまうまえに。
僕は踵を返し、とぼとぼと家を目指して帰っていくのだった。。。
【完】
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