第15話
僕がのんびりと与えられた執務室で、紅茶を楽しんでいると、クララが部屋と入ってきた。
「ジャック様、少しお時間をいただけますか?」
「もちろん、クララ。どうしたの?」
僕は微笑みながら応えた。クララは少し考え込んだ様子で話し始めた。
「実は、最近税収が増えてきたことで、いくつかの投資や新しいプロジェクトを検討しています。ですが、どのように優先順位をつけるべきか悩んでいます」
「なるほど、それは良いことだね。でも、何に投資するのが最も効果的かってことだね?」
リバー領に新たな政策を打ち出すことは僕がラクに生活を送る上でとても大切なことだ。しかも、最近は僕の周囲にはいつの間にか、僕を取り巻く人々が集まり、自然と意見交換が行われるようになっていた。
クララは領地の管理に関しては熱心で、一番仕事をしてくれているありがたい存在だ。
そこへエリザベートが現れた。彼女は少し興奮した様子で僕に話しかけてきた。
「ジャック様、私にもお願いがありますの。最近、信徒が増えているのですが、新しい礼拝堂を建てるための土地を提供していただけないかしら?」
ゴージャスなボディーラインがシスター服でもわかってしまう。
最近はシスター・エリザベートはアイドルとして、領内で大活躍している。
彼女が広めている自由恋愛を奨励する教えを広めるため、リバー領で布教活動を続けているのだが、若い世代に広く受け入れられている。
何よりも、年をとって相手を失った人たちにも新しい恋人を探すという婚活パーティー的なこともしているので、彼女の元には教えに共鳴する者たちが増え続けている。
信徒の数も順調に増加しているようだ。
「うーん、新しい礼拝堂か…。いいよ」
クララは、未だにエリザベートに対して疑念を向けているので、少し戸惑った表情を見せたが、すぐに冷静に応えた。
「礼拝堂を建てるための土地については、考慮する必要があります。ですが、現在、農地の拡大や市場の整備にも力を入れていますので、慎重に判断すべきです」
「うーん、だけど、まだまだ土地も建物も余っているよね? 信徒さんたちで整備をしてくれて、こちらが費用を出さないならいいんじゃない?」
「そうですわね!? 信徒たちに頼むことにします。場所?」
「仕方ありません。それでは元々学校があった場所で」
どうやらクララが渋々、土地と建物を提供して、エリザベートは思ったよりも広い土地を手に入れられたことに頷いた。
「ここまでの大きさをいただけるのでしたら、孤児院と託児所、それに学習所を作ろうと思います」
「教育関連を一手に担うの?」
「商人や、他領から流れてきた方々が信徒として、加盟してくださっております。そういうことも可能だと判断できます」
「そうなんだね。エリザベートに任せるよ」
「はっ?!」
子供の教育は誰かがしないといけないけど、それを任せられるのは僕としては何もしなくていいからラクでいいね。
教育内容は、クララに監視してもらって、問題がありそうなら、僕に聞いてもらえればいいや。
エリザベートとの話が終わったと思えば、二人の傭兵が僕のもとにやってきた。
四十代の歴戦の戦士といった風貌のハロルドと、ビキニアーマーにムキムキの体をした女性のアマンダだ。
彼らはリバー領の防衛に関して任せている。
「ジャック様、最近、この領地が発展してきていることもあり、外部からの侵略や盗賊の増加が懸念されています。防衛体制を強化する必要があるかもしれません」
ハロルドが真剣な表情で言った。アマンダも同意するように頷いている。
「確かに、防衛も重要だね。どうすればいいか考えないと」
僕は頭を抱えながら、みんなの意見を聞いていた。
「ジャック様、私の信徒たちが増えれば、彼らがこの領地の治安維持に協力できるかもしれませんわ」
エリザベートが提案したが、クララは慎重な姿勢を崩さなかった。
「それは一つの方法かもしれませんが、宗教の力をあまりに利用しすぎるのも危険です」
「なるほど、みんなの意見をまとめて、何か良い方法を考えないとね」
確かにエリザベートには教育を任せることを決めたばかりだから、警備まで負担させるのは良くないよね。
それに元々盗賊さんたちが外部の街道を警備しているだけで、街の中は二人と数名の衛兵しかいない。
「クララ、税収が増えたんだよね? なら、衛兵を募集しよう。その人柄の判断はハロルドとアマンダに頼みたいけどいいかい?」
「おう! 任せてくれ」
「ああ、任せな」
税収が増えたことで領地に少し余裕が出てきたが、それをどう使うかが重要だね。
いかに僕がラクをするのか? どの投資が最も有効か、そして領地の防衛や、宗教活動のバランスをどう取るか。
「それと税収を使って、領地のインフラを整備しよう。そして、防衛の強化も必要だから。整備には信徒たちの力も借りて、みんなで協力してこの領地を守っていこう」
僕の提案に、クララもエリザベートもハロルドとアマンダもそれぞれ頷いた。
「さあ、みんなで力を合わせて、リバー領をより良い場所にしていこう!」
こうして、僕は新しい政策を打ち出した。
僕がもっとラクに暮らすためには、リバー領を発展させればいい。
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