第11話
領地が少しずつ整備され、領民たちの生活も安定し始めた。しかし、まだ解決しなければならない問題が残っている。領地内には、かつての領民でありながら盗賊として犯罪を犯し、領地を荒らしている者たちがいるそうだ。
彼らは仕事を失い、生き延びるために盗賊となった者たちであり、その存在は領地の治安を脅かす重大な問題だった。
クララも、日々の報告の中でその問題を繰り返し指摘していた。
「ジャック様、盗賊たちの被害が拡大しています。このまま放置しておくわけにはいきません」
「えっと、領地には自警団とかいないの?」
「おりません! 兵士を雇うこともできませんから!」
クララは真剣な表情で僕に訴えた。
「うーん、そうか。盗賊か…彼らも元は領民だったんだよね?」
「そうです。しかし、彼らは今や犯罪者であり、領地を荒らし続けています。このままでは領民たちの安全も脅かされることになります」
クララの言うことはもっともだが、僕は何とかして自分が直接手を汚さずに、この問題を解決する方法を考えたいと思っていた。
できるだけ楽をして、領地を守る方法はないものか…。
「そうだ、クララ。盗賊たちを捕らえて、労働力として使うってのはどうかな?」
「労働力として使う…ですか?」
クララは少し驚いた表情を浮かべた。
「そう。彼らをただ処罰するだけじゃなくて、働かせることで、領地の発展に貢献させるんだ。もちろん、彼らが領民に戻れるように更生させることも目的だよ」
「それは…確かに一つの方法かもしれません。しかし、どうやって彼らを捕らえるおつもりですか?」
クララの問いに、僕は少し考え込んだ。自分が直接捕らえるわけにはいかない。そこで、ある計画を思いついた。
「よし、盗賊たちを自ら捕まえさせる作戦を考えよう」
僕は領民たちに呼びかけ、盗賊たちに伝えたいことがあると宣言した。
「盗賊たちに告げる。お前たちが自ら出頭してくれば、命は保証し、領地の再建に協力してもらう。土地を耕し、働くことで罪を償い、再び領民としての生活に戻ることを許す。ただし、抵抗する者には容赦しない」
この言葉を聞いた領民たちは最初、驚きと疑念の声を上げた。しかし、僕は続けてこう伝えた。
「彼らもかつては我々の仲間だった。今、仕事がないからといって盗賊になった者もいるだろう。だが、もう一度やり直せるチャンスを与えたい。働くことで罪を償い、共に領地を再建するんだ」
数日後、盗賊たちの中から数名が自ら出頭してきた。彼らは不安そうな顔をしていたが、それでも僕の言葉を信じたのか、戦う意思を見せることはなかった。
クララは彼らの様子を見て、少し警戒しながらも、僕の計画に従って彼らを監視し、指示を出した。
「あなたたちには、まずこの荒れた土地を耕してもらいます」
彼らにはすぐに領地の土地を与えるのではなく、重労働ながらも開拓をやらせることにした。木材の採取をしているが、それらを伐採した後の場所は整備されることなく残ってしまっている。
「あなたたちがここで真面目に働くことで、あなたたちの罪を少しでも償うことができます。逃げることは許されませんが、真面目に働けば再び領民として迎え入れるつもりです」
クララの宣言に盗賊たちは黙って頷き、作業に取り掛かった。彼らは初めはぎこちなく、不安そうだったが、次第に黙々と働くようになった。
僕は彼らに食事と寝床を与えて、仕事をしてもらった。
正直、盗賊のスパイかなって不安もあったけど、どうやら盗賊としての生活をすることに不安を抱えていたようだ。
僕は彼らに混じって、一緒に開拓を手伝う指揮をやっている。
クララには、僕の素性は隠してもらって、彼らと同じように扱ってもらった。
少し前まで帝国兵として鍛えた体は、開拓の仕事をしてもなんとか耐えられる。
だけど、盗賊として不摂生な生活を送ったいた者の中には体調を崩す者も現れて、僕はそんな彼らの体調面を帝国で習った応急術と、衛生管理で見守ることにした。
彼らと共に働きながら、様子を眺める。
人となりを知り、彼らの身の上話を聞くことで、盗賊になった経緯を知る。
「おじさんは、農地を失ったんだね」
「ふーん、元は大工さんなんだ」
「えっ?! 兵士をしていたの?」
盗賊はそれほど多くはいない。精々が100人規模で、一つの村を作って生活をしているような感じだった。
街道を通る商人を襲い、村で農地を耕して、ひっそりと暮らしていた。
ただ、いつまでもこの生活を続けられないことは盗賊たちもわかっている。
僕は、彼らから仕入れた情報をまとめて、傭兵を雇うことにした。
「クララ、お金は高くてもいいから信頼ができて、強い傭兵を雇ってくれる?」
「構いませんが、傭兵は高いですよ」
「うん。仕方ないね」
僕の申し出に応じて、クララが雇ってくれた傭兵は二人だった。
一人は、四十代の男性で、歴戦の戦士といった風貌の男でハロルド。
もう一人は、ビキニアーマーにムキムキの体をしたアマンダという女性だった。
「お高いので二人だけですがよろしいのですか?」
「うん。ありがとう」
僕は二人をリーダーにして、領民1000人を、盗賊の村へと向かわせた。
目的はもちろん、100人の盗賊を捕獲するためだ。
そのため、数の圧力で恐怖を与え、傭兵という強者が隊長をしていることで、強さでも反抗が行えないようにした。
僕の作戦は上手くいったようだ。
100名の領民と、新たに開拓された村をゲットした。
「ジャック様、彼らは意外にも真面目に働いています。少しずつですが、更生の兆しが見えてきました」
「そうか、クララ。それならよかった。これで領地も少しは安全になったかな。ただ、彼らは一度は犯罪に手を染めてしまったから、すぐに土地を貸し与えるんじゃなくて、彼ら一人一人の罪と名前を記して管理するようにしてね」
「はい、これからも引き続き、彼らを監視しながら働かせていきます」
こうして、盗賊たちは領地の労働力として使われることになり、領地の安全は少しずつ取り戻されていった。僕は特に手を動かすことなく、領地を守ることができたことに、心の中で密かに満足していた。
これでまた一つ、ラクをして領地の問題を解決できたな、と僕はほくそ笑んだ。領民たちも、盗賊だった者たちと棲み分けができて、さらに彼らは武装して戦った経験もあるので、数名は衛兵としても起用することになった。
街とは別に村をゲットして、街の外で村を守る門番を手に入れた。
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