くまとおれ
水
くまとおれ
俺は最近散歩をしている。狂ったようにしている。たまにできない日があるが、多い時には一日に4回ほど家を出て家の周辺をぐるぐるするとかもある俺はニートだ。昔は働いていたが、今は狂ってしまい、社会に出られない状態になっている。しかし俺はまだ22歳だから何とかなると思っている。周りにもそういわれる。散歩の目的地はもっぱら神社だ。俺は神を信仰しているわけではないが、神社にきて参拝をするというルーティンが自分の気持ちを安定させてくれる。願い事もしている。
今日もいつものように家を出て神社に来た。すると、境内に巨大なクマがいた。正確にはクマではないかもしれない。3メートルはある雄大なクマのような形をしている生物だ。毛並みはとてもきれいでつややか。神秘的な空気を感じる。
クマは俺のことをじっと見つめている。思わず俺はクマに話しかけてしまった。
「あなたは何者なのですか?」
クマは俺に双眸を向けて、話し始めた。
「私は神の使いだ、最近狂った男が日に何回もここに来ると報告を受け、見定めに来た。お前は何の目的で来ている?」
おれはクマのようなものが話すことには対して驚かなかった。それほどのオーラをこの生物からは感じる。
俺はくまにこう返した。
「あなたは神の使いですか?私はくるっていますが、この狂ったままでも生きていけるようにと願うために毎日ここに参拝しています。どうかおゆるしください。」
くまは目を細め、「お前はくるったままでもいいのか?」と尋ねた。
おれは「そうです。」と答えた。俺は続けた。
「もう俺はくるっていないふりをするのにつかれたんです。くるっているなりに自分の道を探しています」
クマはこういった。
「しかし狂った人間はなかなか道がないのではないか、我が神のもとに狂った人間は来ることはしばしばあるが、そういう人間は大抵狂いきって死んでしまう。」
「でも俺は破滅したくないです」
クマは笑った。「そうか、ならお前に一つの道を示してやろう、人間という肉体の檻から解き放ってやる」
おれはどういうことか尋ねた。
「おまえを魚にしてやろう」
「魚に、ですか」
「そうだ、お前を魚にする」
「そうですか、お願いします」俺は頭を下げながらそう言った。
クマはまた笑いながらこういう。
「お前はくるった人間の中でもさらにくるっているな、たいていの狂った人間にこういっても、承諾されたためしがない」
「俺は昔から自分が人間であることに疑問を感じていたんです。くるってしまったのも、俺がこの疑問を抱えているからだと思っています。
」
「ではお前を魚にしてやろう」くまがこういうと空からスポットライトのようなものが降り注ぎ、俺を包んだ。そして、おれは魚になった。
魚になった俺は感謝の言葉を伝えようと思ったが、口をぱくつかせることしかできなかった。
クマはこういう。
「お前は魚なのでからしゃべれなくなるのは当然のことだ」
「お前を海に帰してやろう。」
クマがそういうと俺はまた光に包まれ、気がつくと海の中にいた。
俺はまず自由に泳いでみようと思った。そして俺は透き通った海を永遠に泳ぐことになった。
くまとおれ 水 @eim1
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