第132話 千年前
朝日が
カーテンの
アヴァロンの夜明け前の空は、
(
展望台でのことを思い出し、思わず顔が熱くなる。
それからホテルまでずっと手を
シャルの
いつもは
長いまつげに、
(って、見すぎだよね……)
「うーん……」
シャルが目を覚ます気配。
「もう起きてたの? おはよ、ミュウちゃん」
「……うん」
シャルが
パジャマ姿の
建物の
「ここの服、どれもオシャレでいいよねぇ」
シャルが店のショーウィンドウを
ここの服は科学の力で、様々な
「いらっしゃいませ。本日は特別割引デーです。お客様の体型に合わせて、最適な商品をご提案させていただきます」
ホログラムとはいえ、その仕草は自然で
「すごい! ミュウちゃん、入ってみよう!」
シャルに手を引かれ、店内に入る。
ガラスのような素材でできた
「あ、これもミュウちゃんに似合いそう!」
シャルが取り出したのは、
それを
「あ、アクセサリーコーナーもあるみたい! 見に行こう!」
アクセサリーコーナーには、
その中でも特に目を引いたのは、
中に小さな光が
「わぁ……きれい!」
シャルが
「お客様、こちらは感情
ホログラム店員が説明を始める。その声は、やわらかくて聞き
「へぇ! じゃあ、これ買おうかな。ミュウちゃんにプレゼント!」
「え……!?」
「いいの! せっかくこの街に
シャルの満面の
「ありがとうございます。では、こちらでお包みいたします」
ホログラム店員の手元で、ネックレスが光に包まれる。
そして次の
「はい、どうぞミュウちゃん!」
シャルがそれを取り出し、
その仕草は
首元で光るネックレスが、
ホログラム店員が小さく笑う。
「
「わぁ! ほんとだ。ミュウちゃん、
シャルが
ネックレスは、より
■
「この図書館も、すごいね……!」
買い物を終えた
円柱状の
「本も全部ホログラムかと思ったけど、意外と紙の本が多いね」
シャルが
「アヴァロンが昔、
シャルが読み上げる本には、かつて
「このプログレス? ってモノが、科学発展の節目になったみたいだね。その後、
歴史を追っていくうちに、
手に取る本のほとんどが、千年前の同じような日付で出版されている。というか、だいたい100日くらいの期間に超大量の本が出版されている……?
それに、千年前のある日を境に、新しい本が一冊もない。
(なんで……?)
「ねぇ、ミュウちゃん。あそこ、なんかおかしくない?」
シャルが指差す先には、一見ただの
でもよく見ると、
周期的に光が走るその場所には、かすかに
(
司書も、別のフロアで
「ちょっと、見てみない?」
シャルの目が
近づいて
シャルが何か細工をしている間、
すると、カチッという小さな音と共に
「よっしゃ! 東方大陸で覚えた
(い、いつの間にそんなのを……?)
画面は消えているが、
「なんだろう、これ……」
シャルが適当な
『1147回目:失敗。人員保存率87%。情報のサルベージに失敗した様子。アヴァロンの
『1148回目:成功。1147回目の失敗データのサルベージにも成功。都市、図書館データなどにも
『1149回目:部分的成功。一部セキュリティに問題あり。
しかし、同エネルギーを用いて約600回分の再生が可能となる計算。ループ継続中に次なるエネルギーを探す必要がある』
意味ありげな記録の数々。
「これって何……? アヴァロンの
シャルの声が
それに、何度も
千年前から同じ日付の本ばかりあるのは、その日からずっと同じ歴史を
そう考えを
『警告。許可されていない
「やばっ!
シャルが
背後では機械音が
追ってくるものの姿は見えないが、警報音だけが
「はぁ……はぁ……」
図書館から
夕暮れ時の広場は人も少なく、警報音もここまでは届かない。
「なんとか、
シャルが大きく息を
「でも、あの記録って……」
シャルの表情が
その
「つまり、この街は……」
「うん。あたしたちの世界を
シャルの言葉に、
美しい未来都市の裏に
ふと、街角の電子
(あれ……?)
タブレットを取り出し、
すると――それが。今が千年前の日付だと気付いた。
「……
「え!?」
シャルが
「あの転移装置で、時を
街を
未来的に見えた技術は、実は千年前のもの。
そして、この街は千年もの間、同じ100日間を延々と
だけど、
「じゃあ、マーリンは……」
「……千年前のこの街を
風が
ネックレスが青白い光を放った。不安な気持ちを表す色、とかだろうか。
シャルが、空を見上げながら言う。
「この街で暮らす人たちは、本当に幸せそうだよね。ここがどんな世界なのか、
確かに、街を歩く人々の
「
シャルの言葉に
夕暮れの空に、
その光は、まるで時を刻む針のように見えた。
「ミュウちゃん、お
シャルが
「この世界がどうなるにしても、とりあえず今は
その言葉に、思わず
首元のネックレスが、ゆっくりと温かな黄色に変わっていった。
シャルと手を
建物の明かりが、一つずつ
その光は、千年前から変わらず、この街を照らし続けているのかもしれない。
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