第129話 アヴァロンの暮らし(前編)
目が覚めると、
昨晩、エリスに案内された
白を基調とした広々とした
「うーん、朝ー……? あれ、ミュウちゃんもう起きてる?」
シャルがベッドから顔を上げる。朝日に照らされた
その向こうに見える白いベッドは、まるで雲の上で
昨夜は
建物の表面が朝日を反射し、
バスの中には、朝の通勤らしい人々の姿が見える。
その合間に、緑の木々が美しい。建物の間には公園のような場所があり、子供たちが遊ぶ姿も見える。
思っていたよりも、ここは自然豊かな場所なのだ。
中には
「へぇー、朝もすごいねぇ。それに、思ったより木とか多いんだ」
シャルも
この
タブレットのような装置で登録さえすれば、
シャワーは好みの温度で水が出て、タオルや
浴室の
そのとき、ドアが開く音がした。音もやけに静かで、まるで空気が切れるような感じ。
「おはよう! よく
エリスだ。
手には例のタブレットを持っていた。
「うん! あのね、この
「そう、良かった。朝食に行かない? 食堂では色んな料理が楽しめるわよ」
「マジ!? 行く行くー!」
エリスの案内で、
清潔感のある白い
「この世界の科学技術は、人々の幸せのために使われているの。あなたたちの知ってる
エレベーターに乗って下層階へ。
「ほら、ここが食堂よ」
大きな窓からは朝日が
窓の外には庭園が見え、木々の間を小鳥が飛び交っている。
白を基調とした内装に、所々青や緑のアクセントが効いていた。
テーブルには
テーブルの表面には
「好きな料理を注文してね。タブレットで選べるわ」
エリスに言われるまま、テーブルに置かれた小さな板を操作する。
画面に
「わぁ! 画面に料理が
シャルが目を
表示される料理の映像は、まるで目の前にあるかのように
画面をタッチすると、小さな音と共に注文が確定した、らしい。
するとほどなくして、銀色の……ロボット、だろうか。
それが料理を運んできてくれた。動きは人間のように自然で、お
「このロボットたちも、
エリスの説明を聞きながら、目の前の料理を見つめる。
見た目は
「ここの料理は
「へー! おっ、あたしのも
シャルは
……なんだろう、あれホントに。
「うまっ! これホントに……なんだっけ、てくのろじー? で作ったの!?」
「もちろん。工場で作られたものよ。そこにも多くの人が働いてるの」
パンはふんわりとして、でも適度な歯ごたえがある。
卵は黄身がとろけるように
口の中で
「おいしいでしょう? ここアヴァロンは、そういう意味では本当に住みやすい場所なの」
私は頷いた。パンと卵は、あっという間に食べ終えてしまった。
「――アヴァロンは、千年前から少しずつ変化してきたの」
エリスは食後のお茶を飲みながら、静かに語り始めた。
カップからは
「昔は
食堂の窓から見える朝の光景。庭園では赤や青、黄色の花々が
その上空をドローンが静かに飛び、時折光る点を
「
エリスの言葉に、シャルが首を
「でも……科学技術も勉強しないと使えないんじゃないの?」
「ええ。だから教育を
エリスはタブレットを操作し、街の様子を映し出す。
画面が空中に広がり、まるで窓から外を見ているかのような
映像の中では、子供から
教室には光る板が
生徒たちは熱心にメモを取りながら、時には
「教育を受けて、自分の得意分野を見つけて、それを
それを聞いて、
ギルドでは、戦えない人は使えないしクビになることもよくあった。
でもここでは、
食堂のテーブルに映る
「ねえ、そのマーリンに会いたいんだけど」
シャルが切り出す。エリスは少し目を見開く。緑色の
「マーリン様に?」
「うん。ミュウちゃんはマーリンの
シャルは言葉をぼかす。
マーリンが
と、この平和な世界に生きているエリスに直接伝えるのはなかなか厳しいものがある。
「わかったわ。じゃあ、マーリン様の研究所に案内するわね」
「えっ! あ、うん。ありがとう!?」
……お、思ったよりあっさり!?
シャルも
道行く人々は
通りの両側には木々が植えられ、小鳥のさえずりが聞こえる。
建物の谷間を
全面が光を反射する素材でできており、まるで空に
建物の周りには庭園が広がり、様々な色の花が
その花々は、
「ここが、マーリン様の研究所」
中に入ると、そこは
それらは絶え間なく光り、時折音を立てている。
計器の表面には数字や文字が流れ、時折色を変えながら
でも、それは
「あー……残念ながら、マーリン様は
エリスが装置に
まるで空気そのものが発光しているかのよう。光の
そして、そこにマーリンの姿が
その姿は実物のように立体的で、まるで本当にそこにいるかのよう。シャルが
「マーリン……!」
「これは映像メッセージ。マーリン様が残されたものよ。再生者に応じて
光の中のマーリンは、
白色の長い
『やぁ、君は
エリスも同様に
『もし君が、あの世界から
シャルが
「世界を白く……?」
『だがそれは
「は?」
『そうだな……今から三日後。再びこの建物に
マーリンがそう語ると、映像が
光の
「んー……そういうこと、みたい。映像にロックがかかってる。それにしても、世界を白くってなんのこと?」
エリスが装置を
複雑な模様が
シャルは少し気まずそうにしていた。
「えーっとね。まぁ、それはいずれ……あはは」
シャルと顔を見合わせる。
メッセージの内容が気になる……が、今見れないなら仕方ない。しばらく待つしかないだろう。
研究所の
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