第126話 残された希望
地平線に見えるアランシア王国まで、
色を失った道を行くたびに、世界の異常さを思い知らされる。
立ち並ぶ白い木々は、まるで
でも、それは永遠に
「すごいねえ。こんな
シャルが時折、明るく話しかけてくる。
でも、その声は不自然に
「ね――ねぇゴルドー、アランシアってあとどれくらい?」
シャルの声に、ゴルドーはゆっくりと顔を上げる。
「ああ……村からアランシアまでは……馬車もないから、3日はかかるだろうな」
時折、
風に
すれ
ただ風の音だけが
「そろそろ日が暮れる……よね、多分。あのあたりで野営しない?」
シャルが指差した先には、白い木々が不気味な
いつもなら
「ああ、そうだな……」
ゴルドーの返事は相変わらずぼんやりとしていて、
明らかに
シャルが集めてきた
でも、不思議なことにちゃんと燃えた。
「はい、お
シャルが荷物から取り出した食料も、すべて白くなっていた。
村から
でも味は変わっていない。ただ、白パンじゃないのに白いパンを食べるのは、変な気分になる。
「……
「
声に
「そんな……ゴルドーが悪いわけじゃないよ」
「これじゃ、何のためにお前たちに病を治してもらったのかわからないな……」
シャルが立ち上がり、ゴルドーの
「責任感じすぎ! それにあたしたちだって、結局
……やっぱり、
声の裏に
ゴルドーはずっと村の人を治すためにヒーラーを探してきた。
シャルも、助けられる人はできるだけ全員助けて旅をしてきた。
そんな
言葉には表せないほどの無力感が、
「――あのっ」
「村の人たちは、
「え?」
「死んだわけじゃない。消えただけ。だから、
…………。重い
でも、これは伝えたかった。心臓が早
確証も何もないけど、きっと……なんとかなる。
これまでだって、そうシャルに教わってきたんだから。
「……そうだな。そうかもしれん」
ゴルドーは小さく息をつく。
「元気づけてくれてありがと、ミュウちゃん!」
シャルに頭を
星も月もない、真っ白な夜空の下。
「アランシアに着いたら、きっと何かわかるよ」
シャルが
白い世界に、
■
色を失った世界の果てに、アランシアの結界が見えてきた。
その内側には、
「見えてきた……!」
シャルの声が、
三日間の白い世界の旅は、知らないうちに
結界の
「あ……! あれは!」
「聖女ミュウ様!? シャル様!?」
衛兵たちが
「開門! すぐに開門を!」
結界に、人
そこを
青い空、緑の木々、赤い
その光景に、
「聖女様がいらっしゃいました!」
「シャル様も! よくぞご無事で……!」
「王都に知らせを!」
衛兵たちの声が重なり、伝令が馬で王都へと走り出す。
結界の外では、まだ白い世界が広がっている。
その境界線の不気味さに、
「ねえミュウちゃん、走ろ?」
「!?」
シャルが
テンションが上がっているのか、とにかく急いで向かうべきだと思っているのかどっちだろう……!?
とにかく、
王都の入り口に着くと、そこにはすでに大勢の人々が集まっていた。
色とりどりの民衆の群れ。
「聖女様! シャル様!」
「生きていたんですね! 本当によかった……!」
「お二人がいればきっと、この世界も……!」
シャルは
(こ、これは……予想外)
思わぬ
通りを進むにつれ、
まるで、お祭りのような熱気が王都を
……助かったとはいえ、みんな不安だったんだろう。
でも、
「あ、
シャルが指差す先には、白銀の馬車。王家の
「聖女ミュウ様、シャル様。ルシアン王がお待ちです」
「ミュウちゃん、行こっか」
「……
「
シャルが
その手が、少し
馬車に乗り
窓の外では、まだ人々が手を
(ルシアンなら、何か知ってるのかな)
白銀の馬車は、王城へと向かっていく。
それから案内された王城の
高い
いつ見ても若い王は、金色の
「おおお、ミュウ、シャル! 無事で何よりだ……!」
「グッ……! す、すまない。感
「何言ってんの一体」
側近が
ゴルドーも……なんか気まずそうに目をそらしていた。
「はぁ……改めて、ようこそアランシアへ。よくぞ生き残っていてくれた」
王は姿勢を正し、深々とお
「おっと、ゴルドーもいたのか! すまなかった、つい
ゴルドーは一歩前に出て、
その黒い
白い大理石の柱を背景に、より一層その黒さが
「陛下。
ゴルドーの声は、いつもの冷静さを
それは先ほどまでの
「外の世界は、すべて白く染め上げられた。アランシアの結界の外まで、生命の気配は
「ああ、その件は知っている……。では、まずは書庫へ
「書庫?」
ルシアン王は側近たちに目配せをし、
城内の長い
この国にあるという大図書館に比べればかなり小さいのだろう。
が、それでも並の図書館くらいの蔵書量に見えた。
「実を言うとこの光景は、
王はそう告げると、一冊の古い日記を取り出した。
表紙は年月を経て
「これは初代王の日記。
「……ああ」
ゴルドーが身を乗り出す。その
「この国の結界は、初代王が作り出し
ルシアン王は日記をめくりながら、ゆっくりと語り始める。
側近が、ランプの
「その
「
「まさに、あの
この国だけ。アランシアだけ。
その言葉が重く心に
「『王は、我々と別れる最後の時まで、国を
ルシアン王は日記の一節を読み上げる。声が書庫に
古い木の
「『アヴァロンはすでに
シャルが小さく息を飲む。
その言葉に
「初代王は、
ルシアン王は日記を閉じ、
その
「それに、
「黄金郷……アヴァロンのことか」
ゴルドーが静かに問いかける。
「それが
「わかった。我々の調査内容を後ほど共有しよう」
「ああ、よろしく
ルシアンの言葉に、書庫が静まり返る。本の
ランプの
その
「その国、アヴァロンは千年前に
「ん? ……言われてみれば、なんか変だね?」
シャルが首を
「
ルシアン王は窓の外を見つめた。
そこには、結界に守られた
外の白い世界とは対照的な、生命に満ちた
「これらは一体、何を意味しているのだ……?」
残念だけど、考察はインテリの
初代王の日記を囲み、ゴルドーとルシアンが
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